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追放少女と契約

凪咲は、目の前で震えるスライムをじっと見つめた。

狼たちの牙に晒され、満身創痍のはずなのに、それでも必死に生きようとする小さな存在。


「君はどうしてこんなところに?」


問いかけると、スライムはぴょこりと跳ね、つぶらな瞳を輝かせた。


「にんげんになりたくて、ひとと会いたくて、ここにきたの」


その声はか細いが、凛とした意志がこもっていた。

この小さな命は、ただ夢を叶えるために――人間になりたくて、こんな危険な場所に来たのだ。

喋れるのもその努力の結果なのだろうか。

しかしスライムが人間になれるのだろうか。

師匠が語ってくれたおとぎ話にそんな話が合った記憶もあるけれど……。


思考を巡らせる凪咲はふと、スライムの身体に走る幾筋もの浅い斬り痕に目をやった。

モンスターの爪で斬られても、潰れず、命を落とさなかった。

そう、スライムは斬撃に強い。多少の攻撃では、びくともしない。

直感的にひらめいたことを口にしてみた。


「君、私と一緒に来ない?」


凪咲は、静かに刀を鞘に収めた。

自分でもこの提案には驚いている。

だが今はこの発想がとても甘く感じられた。


「私は、剣を振るうのが怖い。仲間を傷つけるのが怖くて、誰とも組めなかった」


「でもあなたなら」


スライムの瞳が、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。


「わたし、なかまになれるの?」


「あなたが人間になりたいなら、きっと人間と共にいた方がいいんじゃない?」


そう告げた瞬間、スライムは弾けるように跳ねた。

喜びを体いっぱいに表現している。


「なる!なかまになる!」


凪咲は微笑み、刀の柄に手を置いたまま、そっと左手を差し出した。

スライムはぬるりと身体を伸ばし、その手のひらに触れた。


――契約成立。

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