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追放少女とあわあわぶくぶく

「おねえちゃん……!」


凪咲が崩れ落ちた瞬間、ミナは叫んだ。


迫り来る魔物たち。

どこまでも広がる絶望。


ミナの細い体では、到底勝てない数だった。

それでも、彼女は動いた。


凪咲の腕にしがみつき、必死に引きずる。


(おねえちゃん……守るって、きめたから……!)


涙が滲む。

声が震える。


だけど、逃げなかった。


後ろから魔物たちの咆哮が響く。

ミナは振り返り、体を大きく膨らませた。

柔らかなスライムの身体を盾にして、凪咲を覆い隠す。


牙が食い込んだ。

爪が突き刺さった。

それでも、ミナは凪咲だけは傷つけさせなかった。


(でも、もう……だめだ)


小さな身体は限界を迎えていた。

耐え切れず、ふにゃりと潰れそうになる。


その時。

ミナはふと思い出した。


触れれば、そのものになれる。


それは、スライムとして持って生まれた性。

人間の形を取るために、凪咲の体に触れたときに学んだ感覚。


なら。

血に、なれるだろうか?


おねえちゃんの血になって。

おねえちゃんの命を、つなげることができるだろうか?


ミナは、凪咲の傷口に触れた。

まだわずかに、体温があった。


(おねえちゃんを、すくいたい。)


言葉にはならなかった。

だけど、強い、強い願いがそこにあった。


ミナの身体が、ぼんやりと輝き始めた。

ふにゃりとした形が、液体へと変わっていく。

全身が融けて、溶けて、流れ込んでいく。

凪咲の中へ。


凪咲の命を、もう一度動かすために。


(だいじょうぶだよ、おねえちゃん)


(だいじょうぶだからね)


最後に心の中でそっと呟いた。


あわあわと、泡が弾けるように。

ぶくぶくと、小さな音を立てて。


ミナは、静かに消えていく。

最後の瞬間、黒い瘴気がミナから吹き出し、周りのモンスターを包み込んだ。

ミナの中に残ったワイトの残滓、それが外敵たちまとわりつく。


モンスター達は外傷はないまま、魂を抜かれたように倒れていく。

そうして最後に。


生きている存在は凪咲だけとなった。

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