旅立ちの日
首都から徒歩で七日ほどかかる農村でジーンはうまれ、15歳まですくすくと育ってきた。
彼のうまれは、類をみないほど特別であった。祖父は世界を救った伝説の勇者グレイン。父親もフルゴール王国で将軍にまで登りつめた英傑である。
そんなジーンだからこそーー当然といえば当然であるがーー自身も偉大な人物になりたいと願った。男なら一度は誰しも思うことだ。
ジーンの場合は人一倍その気持ちが強かった。
「俺は、じーちゃんや親父に負けないオトコになってやる!」
幼さがまだ残る顔立ち、若干低い身長が気になるくらいであとは人並みの体格。黒髪はざっくりと切りそろえられており、はっきり言えば平凡。
服装にしても、祖母が縫ったつぎはぎのある綿の半袖シャツとタイトなパンツ。腰にはくすんだ色のの布を巻いている。繰り返すが、そこら辺にいる田舎の少年といっても差し支えない程度。
しかし、そんなことは本人は気にもしない。気持ちだけでは誰にも負けない。
「ーー行ってきます!」
春。晴天の日。
着替えやら荷物を革のバッグに詰め込む。それを背負うと、駆け足で家を飛び出したのだった。
そんな少年を前に、グレイン翁と祖母、そして母親はついにひとつの真実を伝えられなかった。ただ見送ることしかできなかったのだ。
何度も口から出そうで、しかしそのたびにのみ込んでしまった。
「おまえは、弱いんだよ」とーー。




