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現在、ピッコマ様にて『公爵さまは女がお嫌い!』のWEBTOONが始まっております!
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搾り取られた、というのがもしかしたら適切な表現かもしれないな、と、ティアナは高い天井を見ながら呆然と思った。いや、正確に言えば、注がれたのだが、体力的には絞られたというほかなく、もう身体どころか指までも動かすのが億劫だった。儀式をするのに服を脱ぐ必要があると知ったときは、羞恥で死にそうになりながらも、ヴァレッドにされて嫌なことはないといった手前、精一杯恥ずかしいのを我慢した。しかしその後取ることになった体勢には恥ずかしさで死んでしまいそうだったし、あの儀式で使う硬いものがヴァレッドの一部だということにも驚きで目が回ってしまった。しかもそれが自分の体の中に収まるという事実も。
儀式の終盤に至っては、正直もうなにも覚えていない。何もかもに必死だったし、変な声も出してしまっていたような気がする。ヴァレッドにすがるように抱きついた時は流石に怒られるかと思ったが、そんなことはなく、彼はとても嬉しそうに頬に唇を落としてくれた。
(なんかもう、すごかった、ですわ……)
感想としてはそれが一番適切だった。最初から最後まで不快なことは一切されなかったが、恥ずかしいことはいっぱいされて、もう色んな意味で死んでしまいそうだった。
それでも、ティアナは儀式をしてよかったと思っていた。
なぜなら、ヴァレッドと裸で抱き合った時、これ以上なく幸せだったのだ。身体の境目がなくなって、二つだった体温が一つになる感覚。あれは今までの人生の中でなかった感覚て、得難いものだった。
ティアナは隣のヴァレッドを見つめる。ヴァレッドの方もティアナと同じで一糸まとわぬ姿だった。彼はまだ瞳を閉じたまま安らかな寝息を立てている。
いつもより重たい腕を持ち上げて、彼の前髪を払うと、その端正な顔立ちが僅かに歪んだ。
「んんっ」
ヴァレッドの重たいまぶたが上がる。そうして、まどろんだ目でティアナを見つめた。彼は太い腕でティアナをギュッと自分の方へ抱き寄せた。自分よりも高い体温に抱きとめられ、ティアナは頬を熱くした。眼の前にある胸板に頬を寄せると、ヴァレッドがまた「んー……」とまったりとした声を出した。
「……ティアナ?」
つむじにヴァレッドの声が落ちてきて、彼が覚醒したことを知る。
ティアナはそのままの体勢でヴァレッドを見上げた。
「おはようございます。ヴァレッド様」
「なんかすごくいい夢を見た気がする」
「どんな夢ですか?」
「そうだな。君を――」
そこでヴァレッドは固まった。自分とティアナの状況を見比べてぐっと息を呑む。そして、ティアナの身体に回してない方の手で顔を覆った。
「……夢じゃなかった」
「ヴァレッド様?」
「いや、なんでもない。……それよりも、少し離れないか?」
ピッタリと身体が重なっている状況が恥ずかしかったのだろう。ヴァレッドはそう提案してくるが、ティアナが離れた瞬間「やっぱりこっちに来てくれ。……それはそれで目に毒だ」ともう一度身体を抱き寄せられた。
「その、身体の調子はどうだ?」
「え?」
「昨日は、その、無理をさせただろう? 疲れてないか?」
「疲れて――ないことはないですが。なんというか、これは、幸せな疲れ方ですね」
「……そうか」
ヴァレッドの表情もどこか嬉しそうに見える。
「それに、これで子供ができたとおもったら、疲れも吹っ飛びます!」
「子供?」
「子供が、できたのですよね?」
子供を作る儀式をしたのだから、子供ができるのは当然だ。ティアナはそう思っていた。今はまだなにも実感はないが、自分の腹の中には新しい命が宿っているのだと信じて疑っていなかった。
だから、ヴァレッドが放った言葉はティアナにとって驚くべきものだった。
「子供は、そうだな。できているかもしれないな」
「かもしれない?」
「これをしても、必ずできるとは限らないんだ。人によって出来やすい出来にくいというものもあると聞くし、半年や一年以上できないという人もいるらしい」
「そ、そうなのですか!?」
そう驚きながらもティアナは彼の両親のことを思い出していた。アンドニとダナは長い間子供ができなくて悩んでいたらしい。子供を作ろうとしていたということは、当然二人も昨晩の二人と同じ儀式をしていたのだろう。しかし、結局二人の間に子供はできなかった。
そういうことを考えると、今この段階で子供ができていると思うのは性急すぎるかもしれない。むしろできていない確率のほうが高いのではないだろうか。
「そう、なのですね」
がっかりという訳では無いが、少し気落ちしたような声が出た。しかしそれも一瞬だけのもので、彼女はすぐさま顔を跳ね上げると、ぐっと胸元で拳を握りしめた。
「それならば、たくさん儀式をして確率をあげなければなりませんね!」
「たくさんしてって……」
「ヴァレッド様はお嫌ですか?」
「嫌ではないが、そういうのは女性が先導するものじゃないんじゃないのか?」
「そうなのですか?」
「いや、他の夫婦のことは分からないが、おそらく」
「そう、なのですね。でも、私はヴァレッド様との子供がほしいですし」
「そうか」
「それに、昨晩はなんというか幸せでしたし……」
「…………そうか」
ヴァレッドの顔はにわかに赤い。ティアナも昨夜のことを思い出せば羞恥で死んでしまいそうになるが、あれをしなければ子供ができないというのならば、羞恥は乗り越えるべきだろう。それに行為自体が嫌だったわけでは決してない。
「でも、あの、ヴァレッド様、一つお願い……というか、聞きたいことがあるのですが……」
「なんだ?」
「もうちょっと恥ずかしくない儀式の方法はないのでしょうか? あの、私、その、あれはさすがに恥ずかしくて……」
「それは、その……悪い」
その言葉が謝罪ではなく『他に方法がない』という意味だという事をティアナが知ったのはそれから数日後のことだった。




