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現在、ピッコマ様にて『公爵さまは女がお嫌い!』のWEBTOONが始まっております!
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「これは、おめでとうございます、と言えばいいんですかね」
「うるさい。黙ってろ」
ティアナとの初めての夜を終えたその日の昼、ヴァレッドはレオポールにそうからかわれていた。口調こそ揶揄ってはいるもの、レオポールの目元には安堵が滲んでおり、雰囲気からも彼がヴァレッドたちを祝福しているのは明らかだった。一方のヴァレッドもそれをわかっているのだろう。口調は乱暴だがレオポールを突き放したような感じではなく、ただ照れているだけのようだった。
「まさか、『離縁を切り出してくる』といったその夜に結ばれるだなんて、さすがの私も思いません――」
「だから、黙ってろと言っただろうが」
恥ずかしさが天元突破し、ヴァレッドは椅子から立ち上がった。
背中を向けると、レオポールの生暖かい視線が背中をじっとりと撫でてくる。
「それで、どうするんですか?」
「どうするもなにも――」
「ティアナ様とのことではなく、腕輪の方ですよ。ティアナ様とのことはご勝手になさってください。究極的にはやはりお二人のことですし、貞操を奪ってしまったのなら、貴方が責任を持つべきですしね。……それに、もう離せないでしょう?」
「そう、だな」
何故か少しだけ負けたような気分になりながら、ヴァレッドは頷いた。レオポールはそんなヴァレッドの答えに満足したのだろう、口元に笑みをたたえたまま眼鏡を押し上げる。
「なので、今はお仕事の話です。とりあえず、今のところ作戦は順調に動いていますが、このまま続けてもよろしいのですか?」
「あぁ、そうだな。人員がもっと必要なようなら言ってくれ。俺からエリックに相談してみよう」
咳払い一つで仕事の顔に戻った二人は、今後のことを話す。
「わかりました。なんにしてもエリックの生誕祭までは待機だということですね」
「そうだな」
正直に言えば、作戦は順調だった。
後は相手が餌に食いついてくれるのを待つだけである。
しかし、それが間に合うかどうか。リミットまで、残り一週間である。
「それなら、私もお時間いただいてよろしいですか?」
「別に構わないが、なにをするんだ?」
そう聞いたのは彼が休暇をもらおうとするだなんて珍しいと思ったからだ。ヘラヘラとしていながらも、彼は仕事をサボったりはしない。
レオポールは少し考えた後、口を開いた。
「前に、貴方が勧めてきたんでしょう? デートですよ」
「は?」
「デートです」
..◆◇◆
「レオポール様にデートに誘われた!?」
「いや、まぁ、はい……」
その会話はティアナの部屋でかわされた。鏡台の前に座るティアナはカロルに髪を梳かしてもらっていた。鏡にはカロルの少しうつむいた顔が映っている。しかし、その顔は陰鬱というよりは困惑が張り付いていた。
「前にも誘われてたと言っていたわよね? それとは違うの?」
「違うんですが、一緒、みたいな話でもあって……」
「どういうこと?」
「いやまぁ、なんというか。レオポール様が言うには、前に誘ったときも最初は冗談にするつもりはなかったらしく……」
ティアナは首を傾げる。
そんな彼女の疑問に答えるようにカロルがたどたどしく口を開く。
「あの、実は、私に婚約者がいると思っていたみたいで。いやまぁ、いるにはいるんですがね。ただ、レオポール様は、モレル伯爵を本当の婚約者だと思っていたらいいんです。だから、その、直前で思いとどまって『冗談』と」
「まぁ! そうでしたの。それはレオポール様には申し訳ないことをしたわね」
「いや、このことでティアナ様が申し訳なくなることは絶対にないです!」
モレル伯爵との婚約話を勧めたのはティアナの父親だ。ティアナが申し訳なさげに眉尻を下げると、カロルはそう言ってぶんぶんと首を振った。
「それであの、ご相談があるんですが……」
「相談? もしかして、私、カロルにお願いしていただけるの!?」
「なんで、そんなに嬉しそうなんですか?」
「だって、カロルにお願いしてもらえる機会なんてそんなにないんだもの。いつも私ばっかり頼っているから申し訳なくって」
ティアナは自信満々の顔で、胸元に手を当てた。
「だから、何でも頼ってちょうだい! 私にできることしかできないけれど、精一杯やらせてもらうわ!」
「そんな、たいしたことではないのですが……」と前置きをして、カロルは口を開く。
「デートに行く服装、どのようなものがいいか、ご相談に乗っていただいても構いませんか?」
「服装、ですか?」
「殿方に誘われるなんて、初めての経験で。その、レオポール様に恥をかかせるわけにもいききませんから……」
しどろもどろになっているカロルに、ティアナは弾けるような笑みを浮かべる。
そして振り返り、カロルの手をぎゅっと両手で握った。
「もちろんですわ! ぜひ手伝わせてくださいませ!」
「ありがとうございます。一人で決めるのが不安だったので、助かりました」
ティアナの言葉を聞き、カロルもほっと胸をなでおろしたような表情になる。初めて見るような彼女の表情に、ティアナは更に嬉しくなって、手のひらに力を込めた。
「デート、楽しみですわね!」
「まぁ、そう、ですね……」
「レオポール様は物知りですから、色々連れて行ってくださるかもね!」
ティアナはそう自分のことのように喜んだあと、ふと、なにかに思い至ったかのように顔を上げた。
「そういえば、そうやって何度もカロルのことを誘おうとするだなんて、レオポール様、カロルのことお好きなのかしら?」
その言葉にカロルは、かぁああぁと頬を赤く染め、口を真一文字に結んだ。
「そんなの私がわかるわけないじゃないですか……」
カロルはどこか納得がいかないような表情で唇を尖らせた。




