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エピローグ

現在、ピッコマ様にて『公爵さまは女がお嫌い!』のWEBTOONが始まっております!

皆様どうぞよろしくお願いします!

https://piccoma.com/web/product/151469


 さすがに結婚式を二度は……ということで、王宮の広い庭園で少し豪勢なお茶会で手を打つことになった。といってもエリックのご所望は結婚式だったので、ティアナは桃色の華やかなドレスに身を包み、またヴァレッドも結婚式の時のような詰め襟の軍服に身を包んでいた。二人の身を包む布が実際の結婚式よりも豪華だったのは、きっとそれらをすべてエリックが用意したからだろう。

「ティアナ、綺麗だね。ヴァレッドもきまってるよ」

「ありがとうございます!」

「……どうも」

 椅子に座ったまま、居丈高に二人を褒めるエリック。その言葉にティアナは弾けるような顔で笑い、ヴァレッドは素っ気なく返した。

 そんな一組の夫婦の後ろに、もう一組着飾っている男女がいた。

「嫌です! なんで私が、こんな――!」

「良いじゃないですか。貴女、前に『別に私も舞踏会に興味ないわけではないんですのよ?』とか言ってたじゃないですか」

「なっ!」

「いつもティアナ様がお誘いしているから、当然嫌いなのだと思っていましたけど……」

「貴方! なんでそんな事を大勢の前で――!」

 オレンジ色のドレスを身にまとったカロルは、当然のように隣に立つレオポールに気炎を上げている。顔が真っ赤なのは、自分の今までひた隠しにしていた気持ちをみんなの前でさらされてしまったからだろう。

 ティアナは脊髄反射の勢いでカロルに飛びついた。

「そうなのですね! ああいう社交場、私もカロルは嫌いなのだと思っていましたわ! 今度から一緒に参加しましょうね! 私、前々から一緒に参加したいと思っていましたの!」

 ティアナの勢いにカロルはしばらく「あの」「その」と言葉を探していたが、やがてどこか諦めたように「はい」と視線をそらした。その顔がまんざらでもなさそうなのは、やはりレオポールの言う通りの気持ちが彼女にあったからだろう。

 そして、レオポールがここでその話を出したのは、きっとカロルのためだったのだろう。

「それにしても、カロルは本当にスタイルが良いのね! 身長も高いし、本当に綺麗! そのドレスもすごく似合っているわ!」

「あ、ありがとうございます」

 照れた顔を必死に無表情で隠しながら、カロルは視線をそらしている。

 お茶会に参加したのは、ヴァレッドの両親と、なんとか歩けるまでに回復したヒルデとそれを支えるハルト。ジルベールもその場にいたし、ジスも参加していた。国王が主催するお茶会で彼らの参加は異例だが、今回はヴァレッドたちが連れてきた人間はみな客人として扱われていた。

「でも良かったよ。君が僕の友人を続ける気でいてくれて」

 つい先日、ヴァレッドが報告書を再提出したことを指しているのだろう、エリックは朗らかに笑う。

「君が再提出してくれなかったら、君の秘密を隠していたアンドニとダナを引き合いに出すところだったよ」

 彼は笑顔のままでそう言うが、『引き合い』とはつまり、アンドニとダナの二人をヴァレッドの出生の秘密を黙っていた罪により罰するということである。そうなってしまったら、もうヴァレッドだって報告書を再提出せざるを得なくなっていただろう。それをヴァレッドがどんなに望んでいなくても、だ。

「物騒なことを言うな、エリック」

「物騒なことをさせないでくれて、ありがとう」

 完璧な笑顔を浮かべるエリックの奥で、アンドニとダナが冷や汗を流しているのが見える。ヴァレッドは自身の両親に視線を向けた後、足を組み替えるエリックを見下ろした。

「エリック、あんまり両親をいじめないでやってくれ」

「いじめ? おかしいな。僕は生まれてこの方、誰のこともいじめたことはないけれど?」

「誰のこともって……。ここぞとばかりに嘘をつくな」

 ヴァレッドがピシャリとそう言うと、エリックはまるで年相応の青年のように頬を膨らませた。そこにはいつも彼がまとっている王の威厳なんてものはなにもない。

 これが本来の彼の姿なんだろうな、と、ティアナはエリックの表情を見ながら頬を緩めた。

「そんな事を言うのなら、こっちにだって考えがあるぞ。――おいで、ティアナ」

 どうして自分が呼ばれたのかわからないティアナは「へ?」と間抜けな声を出す。

 突然のことに棒立ちになっているティアナの手を、エリックは掬うようにして取った。

「幼いときのヴァレッドの話、聞きたくないかい?」

「わ! 聞きたいですわ!」

「ちょっと待て! エリック!」

 そこで初めてヴァレッドが焦ったような声を出した。

 エリックはまるでいたずらっ子のような表情で、ティアナの手を引き会場の隅に向かった。

「ティアナ、耳を貸して」

「はい!」

 わくわくを隠しきれない表情でティアナがそうなずくと、エリックは耳に顔を近づけた。しかしそこから放たれた言葉はティアナの予想しないものだった。

「私の親友を幸せにしてくれてありがとう」

 ティアナは大きく目を見開いて、エリックを見る。

「結婚おめでとう」

 その後、すぐさま駆けつけたヴァレッドが二人を引き離す。エリックはまるで『さっきのことはナイショだよ?』と言わんばかりに無言で唇に人差し指を当てている。

「ありがとうございます!」

「ティアナ!? 何聞いたんだ?」

「秘密ですわ」

 ティアナの言葉にヴァレッドの顔が青くなる。

 それと相反するように庭園は笑いが満ちた。

「ヴァレッド様」

「……どうした?」

「一緒に幸せになりましょうね?」

「そうだな」

 その言葉に照れはなかった。ただただ、優しい笑みだけが彼女に向けられている。

「ティアナ、……愛してる」

「私も、ヴァレッド様のことを愛していますわ」

 二人の顔はどちらかともなく近づいて、まるで永遠の愛を誓うようなキスを交わした。



これにて完結いたしました~!

皆様、お付き合いくださってありがとうございます^^

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― 新着の感想 ―
同じく連載再開を待ち望んでいたので、再開していて完結していた事にびっくりして、初めからまた読み返していました。 何度読んでもイイですね。可愛い2人が幸せになってくれて嬉しいです。ありがとうございました…
[一言] ずっと連載再開を待ち望んでいました。感無量です。 これからも応援しています。
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