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少しずつ、ほんの少しずつ、私の行動範囲が増えていった
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私はまた長い眠りに就いた。
今度はカラスになっていた。
寝たら何かになる事を私はようやく理解した。
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飛んで見る光景は見慣れたものだった。
電柱や木に止まり休むのは新鮮だった。
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ある日飛んでいるとあの子の家を見つけた。
あの子は昼間からカーテンを開けて眠っていた。
その日からあの子の家の近くを徘徊するようになった。
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ある日あの子の両親が子犬を飼ってきた。
柴犬だった。
子犬は家の中を尻尾を振って駆け回り、3人の笑い声が聞こえてきた。
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ある日子犬が家の扉から出て庭で駆け回っていた。
あの子も子犬を追って庭で駆け回っていた。
楽しそうな声と楽しそうな鳴き声が聞こえた。
あの子は子犬を捕まえると強く抱きしめて優しく頭を撫でていた。
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少しずつ、ほんの少しずつ、私の行動範囲が増えていった。
私は部屋から出れるようになり、家の中を歩き回れるようになり、マルちゃん(わんちゃん)の力を借りて、庭に出れるようになった。
次は外か!と自分を奮い立たせてみたが、いや無理よ…という言葉が語尾につくほど速く出た。




