90日目 ユミコの依頼
●90日目(グリウス歴863年8月2日)
「アルス様、昨日の話の続きなのでが。」
朝食を全員で取っている時にユミコはアルスに話しかけてきた。
「昨日の?」
「ええ、移動の魔法でゲートというもので移動が可能という話です。もし良ければ、ここにも設置されてはいかがと思いまして。」
「ホントに。それは凄く有難いな。いいのか。」
「もちろんです。それでアルス様が喜んでいただけるなら、ぜひ用意させて頂きます。どのような部屋がよろしいのでしょうか。」
「そうだね。できれば、人がほとんど出入りする事が無くって、なるべく物がない部屋かな。大きさは、まあ昨日使わせてもらった寝室くらいの大きさくらいあれば問題ないかな。」
「それでしたら、良い部屋があります。お食事後、お連れ致しますね。」
食事後、ユミコに連れられて、ユミコが使っている執務室に入っていった。
執務室の壁を昨日の隠し部屋と同様にある箇所に触れると
扉がスライドして開いた。
「この国には隠し部屋がそこら中にあるみたいだね。」
「私もビックリです。まだ見つけていない部屋があると思われます。この先の部屋は私とポーリン以外は知りませんので人が入り込むこともないでしょう。それに私達もこの部屋を使う予定もございませんので、ちょうど良いかと思います。」
部屋の中に入ると、中は全く何もない部屋だった。
大きさは横幅4~5m程で奥行きは7~8mと長方形の部屋だった。
「いかがですか?」
「いいね。ここなら、ゲートを設置しやすいかもしれないね。じゃあ、少し細工させてもらうよ。」
そう言って、部屋の四隅に魔石を置く。
魔石を置くことは別に必須ではないけど、
こうすると他の部屋との区別がつきやすいというだけの話だ。
そして、天井の壁にコンティニュアルライトの魔法をかける。
持ってきたランタンで照らされていた真っ暗だった部屋は
ランタンなしでも明るくなった。
そして借りた塗料で壁に文字を書いておく。
もちろん、他人が読めないように日本語で『法国のアルスの部屋』と。
そしてこの部屋のイメージを頭の中に植え付ける。
これでここにゲートの魔法で来ることができるだろう。
部屋を後にし、皆の所へ戻りながらユミコに訊ねた。
「相談事はこれで全部?」
「申し訳ありません。あと一つございます。皆さんの所でお話ししましょう。」
部屋に戻ると、皆が待っていた。
「転移先の設定はできたの?」
「ああ、ばっちりだ。」
訊いてきたアンジェは心なしか嬉しそうだ。
アンジェはテレポートに不慣れだったっけ。
再び席に座ると、ユミコが話し始めた。
「ご存じのとおり、今、法国では十三連合国からの難民を受け入れています。難民の技能や過去の経歴から各農村や漁村にも難民を新たに受け入れるように指示を出しております。」
「もしかして、その移民者がトラブルを起こしているとか?」
「いいえ、今各地では人員不足が甚だしく、受け入れは順調に進んでおります。特に家族持ちを優先して送っておりますので移民の方も生活を安定させるために頑張っているようです。また、近々、農村部の青年を集めて、移民の方で結婚適齢期の女性の希望者と大規模なお見合い会を行う予定もあります。」
「随分、思い切った事をするね。お見合いなんて上手くいくのかい。」
「女性一人で生活するのは、この世界では厳しいですからね。特に身寄りのなくなった方は結婚は重要です。」
「まあ、そうだろうけど。」
「もちろん、誰でもという訳ではないですが、当面は各村長の推薦と多少の参加料を徴収するつもりです。」
「それと今回の相談とどういう関係が?」
「移民が増え始めた事で、特に農村部では田畑の開墾が始まっています。今までは持ち主のいなくなった田畑を分譲していましたが、まだまだ人数も増えると予想されるので分譲だけでは生活できるだけの田畑が足りなくなってきているのです。そして、今回、北部にある村のあちこちから、魔物の討伐要請が来ているのです。」
「魔物の討伐?ゴブリンとかが入り込んでいるのか?」
「いいえ、ゴブリンなどであれば、ジュノー王国から来ている冒険者やこちらの兵士達で何とか出来るのですが、今回問題になっている魔物は、ワイバーンなのです。開墾の為に馬や牛を使っているのですが、それを目当てに被害が多数寄せられているのです。馬や牛が減れば、開墾もできなくなり、食料不足に陥ってしまうでしょう。今こちらに派遣されているジュノー王国の冒険者は
Eランクの方がほとんどです。ワイバーン相手では太刀打ちできないですし、こちらの兵士も前線にいる兵士に比べて練度も強さも足りません。前線から兵を戻すことも考えましたが、それではジュノー王国に頼り切りとなってしまい、それは避けたいのです。」
「つまり、そのワイバーンを何とかすればいいんだな。」
「アルス様のお手を煩わせて申し訳ないのですが、アルス様以外に頼れる方はいないので。」
「ワイバーンはどのくらいの規模いるんだ?」
「調査の結果、5体くらいではないかと予想しております。」
「5体くらいなら問題ないだろう。それで、そのワイバーンはどこに現れてるんだ?」
「北部の山岳地帯にいると思われます。」
法国の北部はジュノー王国側の河川沿いに妖魔の森の一部があり、
その東側から湿地帯にかけて山岳部となっている。
湿地帯の先にはベルガド帝国となっているが、
湿地帯を抜けるのは冒険者でも難しいとされている。
山岳地帯は急勾配の山が多く、人が通行できる個所は
限られた場所しかないとの事だ。
山岳の更に奥は前人未到のエリアとなっているが、
妖魔の森が広がっていると推測されている。
以前帝国の人間がエルフ領とドワーフ領に入ったルートは、
十三連合国から法国に侵入し、十三連合国と法国の間の河川沿いに北上して
山岳地帯の麓を進み、妖魔の森へと入っていったと考えられている。
少数であってもベルガド帝国から山岳地帯に入って法国に侵入するルートは
空を飛んで行かない限り不可能に近いという事らしい。
ここで取れる戦法は、家畜を囮にしてワイバーンが襲ってくるまで
ひたすら待って襲って来た所を返り討ちにする方法が1つ。
そしてもう一つは、こちらから飛んで行って攻めるの2つしか
方法はなさそうだ。
囮戦法では時間も根気も必要そうだ。
俺一人なら飛んで行って殲滅した方が早そうだ。
「わかった。今回のワイバーン退治を引き受けよう。」
「ありがとうございます。これで難民の受け入れを遅らせずに済みます。」
「まあ、このワイバーンは前回の帝国の侵攻できた残党だと思うし、取りこぼしたのが俺なら多少の責任があると言えなくもない。それで、今回の退治は俺一人でやるつもりだ。」
「ええ?わたし達は?」
アンジェとマリアは不満そうな顔をしている。
「アンジェとマリアは、書状を砦まで届けに行ってもらいたい。馬を借りれば半日で砦までいけるはずだ。そうすれば、明日には戻ってこられるでしょ。その間にこっちも片付けておくから。」
「・・・わかったわ。」
全然納得していないようだけど、山岳に攻め込むにしても
自由に飛行できない2人には難しい仕事だ。
2人に飛行魔法をかける事も出来るのだが、
訓練なしに飛行できるとも思えないし、墜落なんて洒落にもならない。
今回ばかりは連れていけないと判断した。
マリアはそれが分かっているのか渋々了承してくれたようだ。
「アンジェ、アーくんの頼みよ。わたし達にできる事をするって約束でしょ。」
「そうだけど。」
「はっきり言ってわたし達では今回は足手まといにしかならないもの。」
「うん。わかった。」
マリアがアンジェを説得してくれて助かった。
「それじゃあ、書状は預けるからね。頼んだよ。」
そう言って、異空間収納から書状を取り出し、マリアに渡す。
「本当に一人で大丈夫なの?」
アンジェは心配そうに訊ねてきた。
「大丈夫だよ。今回、ユミコから防具を譲り受けたし、ワイバーンなら戦闘経験があるからね。心配いらないよ。それよりも2人も十分気をつけるんだよ。特に盗賊なんかがいる可能性もあるからね。女性2人だと狙われやすいんだから。」
「それこそ、心配無用よ。Bランク冒険者は伊達じゃないって。」
アンジェもマリアもニコリと笑って見せた。うん、そうでなくっちゃ。
「食料とかポーションとか足りてる?」
法国から馬を2頭貸し出されて、
アンジェとマリアは馬の状態を確認している。
「ええ、食料は念の為3日分。ポーションもあるわ。半日で着けるんだから大丈夫よ。」
「急いで戻ってきたい気持ちは分かるけど、夜は危険だから、必ず砦で一泊して朝になってからこっちに戻ってくるんだよ。」
「もう、大丈夫よ。アーくんこそ、ワイバーンに後れを取るような事はしないでよ。」
「それじゃあ、気をつけて。」
「行ってくるわ。」
「行ってきます。」
2人は馬を走らせて出発した。
こちらもそろそろ出発するか。山岳地帯まで砦と距離はそれ程、変わらない。
テレポートだと2、3時間で着けるだろう。
「アルス様、気をつけて行ってらっしゃいませ。」
見送りに来たユミコとポーリンが祈るような仕草で言った。
「ああ、任せてくれ。それじゃあ、また後で。」
2人に手を振り、答える。
「フライ!」
「テレポート!」
連続テレポートで山岳地帯を目指す。
上空から見ると数十軒の家屋がある村やその周辺に
数軒の家屋がある集落が点在しているのがわかる。
法国は一部妖魔の森と隣接しているとはいえ、
河川に遮られている関係上、魔物の侵入は極稀である。
その森の近くには兵士の警備施設もあり、村や集落に魔物はほとんどない。
その為、ジュノー王国に比べると広範囲に
家屋が点在していても問題ないようだ。
ジュノー王国ではダンジョンもあり、妖魔の森もあり、魔物の被害は多い。
なるべく密集して暮らさないと自衛すらままならないのと比べると
長閑な光景に感じざるを得ない。
そうして、数時間後には山の麓近くまで到着した。
上空から見ると東に小さい村が見てとれる。
もしかしたら何か情報が得られるかもしれない。
一度立ち寄って話を聞いた方が良さそうだな。
そう決めて、村の方へ滑空して近づいていく。
村の入り口に降り立つと近くで畑仕事をしていた男がこちらに気付いた。
「すみませーん。少しお話いいですかあ。」
大きな声で男の方へ呼びかける。
男は鍬を持って、こちらに近づいてくる。こちらもゆっくりと近づく。
「おめえさ、誰だね。」
「私は聖女様に依頼された冒険者です。ワイバーンが暴れているという事で村長に話を聞きに来ました。」
「おお、そうかい。おまえさ、一人かいな。」
「はい、そうです。」
「なら、おめえさは、随分とお強いのだろうさね。村長だったかね。案内するから、ついて来てくんなせな。」
そういって、村の方へと歩き出した。
そして一軒の家の前まで来た。案内してきた男はドアを叩きながら
「村長、客人がきたぞ。」
すると、ドアが開き、高齢の男が出てきた。
「客人とな。はて、どなたじゃったかな。」
「私は聖女様から依頼された冒険者です。ワイバーン退治に来たので、そのお話を伺いに来ました。」
「おお、そうじゃったか。」
「ほんじゃ、おらは仕事に戻るべな。」
案内した男は畑仕事に戻って行った。
「ワイバーンじゃったな。あれは先日、北の山からやってきて、うちの村の牛をかっさらっていったのじゃ。」
「どの方角か分かりますか?」
「おお、分かりますぞ。あの一番高い山の右隣の山の方へ飛んで行ったのじゃ。牛は巣に持ち帰ったんじゃろうな。」
「なるほど、あの山ですね。他に被害はありましたか。」
「この村はそれだけじゃが、もっと東にある村では結構やられたと行商の人間が言っておったのう。」
「そうですか。ありがとう。」
「もう、行きなさるか。気をつけてな。」
ワイバーンのねぐらの方向は確認できた。そこを重点的に探そう。
「フライ!」
「プロテクションフロムファイア!」
「プロテクションシールド!」
「アースシールド!」
防御魔法をかけてから飛翔する。
「テレポート!」
山の頂上付近の上空に一気に移動する。
索敵にはまだ反応はない。
だが、山2つほど超えたあたりの上空に
ワイバーンと思しき黒い影が見てとれた。
今、上空に飛んでいるのは2体みえる。
できれば、ワイバーンへ攻撃できる射程ギリギリに転移したいが
空中でのテレポートは距離感が掴みにくく、誤差が非常に大きい。
下手を打ってワイバーンの目の前なんて避けたい所だ。
その為、飛行しながらワイバーンの方へと向かった。
当然の事だが、射程に入る前にワイバーンに気付かれてしまったようだ。
2体の内、1体がこちらに向かって来た。
もう1体はまだ、上空を旋回したままこちらに来ようとはしていない。
1体ずつやれるなら、助かる。
ワイバーンが射程に入る前に空中で停止する。
ワイバーンはそのまま真っ直ぐにこちらに向かってくる。
ワイバーンは直進速度は速いが、体躯が大きいせいで旋回自体は早くはない。十分引き付ければ躱される事は無いだろう。
索敵で距離を測りつつ、タイミングを待つ。
距離が200m切った所で魔法を発動させる。
「ダブルスペル・ウインドスラッシュ!」
2本の風の刃がワイバーンに向かって迸る。
ワイバーンはその攻撃に対して
大きな体躯を捻らせて躱そうとする。
1本は風の刃は胴体部分に掠りながらも胴体を切り刻んだ。
そしてもう1本の風の刃は首から羽の部分にかけて直撃し墜落していく。
その叫び声を聞いて、巣のある場所と思われるところで
旋回していたワイバーンも叫び声を上げ始めた。
どうやら、仲間を呼んでいるようだ。
墜落していったワイバーンは死んではいないだろうが、
もう飛べないので、今は放置しておく。
先に数を減らしたいので、仲間を呼んでいるワイバーンへ向かって行った。
その向かう途中で、地上からワイバーンが2体上空に上がってきた。
上がってきたワイバーンと仲間を呼んでいたワイバーンが合流して
こちらに向かって来た。
「ヘイスト!」
「能力強化-全」
「ダブルスペル・マス・オブ・レイ・アロー!」
突き出した手のひらから、40本の光の矢が
3体のワイバーン目がけて飛んで行った。
光の矢はワイバーンに手傷を負わせたが、致命傷となるほどでもなかった。
だが、咄嗟に受けた攻撃により、3体のワイバーンは
バラバラに旋回を始めてしまった。
その内の1体は旋回しすぎてこちらに腹部を晒す状態になってしまった。
その無防備な腹部めがけて魔法を放つ。
「ダブルスペル・ファイアランス!」
2本の炎の塊が腹部に突き刺さる。
突き刺さった炎が体中に拡がり、ワイバーンを炎に包み込んだ。
そのワイバーンは身悶えしながら墜落していく。
残りの2体の内1体は最初の攻撃を下降して避けていたが、
そのままスピードを落とさずに下方からこちらに食らいつこうとしていた。
しかし、ヘイストと能力強化で速度を上げているおかげで躱すことができた。躱されたワイバーンはそのまま上昇していく。
更に横に旋回していたもう1体のワイバーンが襲い掛かってきた。
だが、タイミング的に遅く、連携した攻撃にはならなかった。
ワイバーンを下に躱し魔法を叩きつける。
「マス・オブ・レイ・アロー!」
20本の光の矢がワイバーンの背中に全弾突き刺さる。
ワイバーンは雄叫びを上げながら落ちていった。
上空へ行ったワイバーンが旋回して急降下を始めようとしていた。
「ダブルスペル・マインドブラスト!」
魔法を受けたワイバーンは突然意識を失い、そのまま墜落していく。
死んだワイバーンは、やはり魔石に変化した。
最初に墜落したワイバーンも出血死で死んでいた。
魔石を回収し、ワイバーンのねぐらを確認する。
ねぐらと言っても巣らしきものを作る訳でもなくただの寝床に他ならない。
そこは、動物の骨が散乱していているだけだった。
「5体とか言ってたけど4体しかいなかったな。」
念の為、寝床を詳しく調べ直す。
よく見るとワイバーンが寝ていたと思われる場所が5か所あった。
「やはり、もう1体いるみたいだ。もしかしたら狩りに出ているだけかもしれないな。」
どうしたものか。
クエスト的にはもう1体もちゃんと駆逐する必要があるとは思うけど。
そう思いながら、索敵を見る。
飛んでいる時は気づかなかったし、一見岩山に見えるので
モンスターや動物などいないと思っていたが、
この周辺にはモンスターの反応が結構あるのだ。
しかもかなり近距離にいると索敵が示している。
だが、周りを見渡しても、ここは岩壁になっていて
モンスターがいる気配すらない。
「ディテクト・インビジビリティ!」
姿を消している者もいない。
「ディテクト・エビル!」
悪意ある者も近くにはいない。
もしかしたらゴースト系の魔物でもいるのかと思ったが、
日の明るいこの時間にゴーストがいるとも思えなかった。
基本ゴースト等のアンデッドは日の光を嫌う。
洞窟や崖があれば
その陰に潜んでいる事もあるだろうが、
周囲を見渡しても岩壁と空しか見えない。
もしかしたら、この下に何かあるのか?
索敵に出ているモンスターを識別してみる。
「スライム、リビングオブスターチュー、ゾンビ、スケルトン、ゴブリン、コボルド、グール・・・うわっ、ワイトまでいるのか。他には・・・ジャイアントラット、ピットバイパー、随分色んなモンスターがいるみたいだ。」
数もそうだけど、点在している大きさから随分広い感じがする。
地上にはそれらしき場所はないから、やはり地下に何かあるのだろう。
「ワイバーンが来るまで、入り口でも探すかな。」
「フライ!」
低空でゆっくりと周囲を見て回る。
「こんな場所、人が来れるような場所じゃないんだけどなぁ。」
どう見ても歩いて登ってこられる場所ではない。
それこそ、ロッククライミングでもしなければ来られないだろう。
もしくは、俺みたいに飛んでくる以外は。
彼此、1時間近く探していた。
多少腰掛けられる場所を見つけたのでそこに座りながら、
かなり遅くなった昼食を取る。
索敵を見ながら周囲を飛び回った結果、
この山の下に何かがあるのは確かだった。
ただ、山の中心部の方は索敵範囲外で
モンスターがいるのかいないのかすら分からないが、
モンスターの位置から階層が分かれている事もなんとなく判った。
しかし、入り口は全く見つけられなかった。
もちろん、魔法的に隠されている事も考慮して、
あらゆる発見系の魔法は使用していた。
「ちょっと、お手上げかも・・・。それよりもワイバーンはまだかな?」
最後の1体と思われるワイバーンは、まだ巣に戻った様子はない。
「これは帰ってみんなに相談だな。となると、後はワイバーンだけなんだけど。しかたない。巣に戻るか。」
フライの魔法をかけ直して、ワイバーンの巣まで戻った。
「何も変化なしっと。」
周りを見回しても先程と何も変わった事はなかった。
それからボーっとすること1時間。ワイバーンの影すら見えない。
「よし。帰ろう。任務完了。ワイバーン5匹なんていなかったんだ。きっとそうだ。」
正直、暇すぎて飽きてきたところだ。
安全な所なら、昼寝でもしていられるが、
まさかワイバーンの巣で昼寝なんて自殺行為以外、何ものでもない。
「ゲート!」
当然目的地はフォーテルムーン法国の首都の隠し部屋。
無事、ゲートが開き、中に入った。
ゲートを抜けた先は、無事フォーテルムーン法国の首都の隠し部屋だった。
「よし。無事に戻ってこられた。」
隠し扉からユミコの執務室に入った。
「キャッ!?」
扉を開けるなり、悲鳴が聞こえた。
中に入っていくと、ユミコが執務用の机の所で変な格好をして固まっていた。
「コ、コホン。アルス様でしたか。お帰りなさいませ。」
「・・・」
「・・・」
「コホン。だって、ビックリするじゃないですか。普通、驚きますよね。」
「いや、そりゃあそうだけど。ここ以外出口ないし。それにユミコがくれた場所じゃないか。」
「そうだ。今度、呼び鈴をつけましょう。アルス様。出られる時は、必ずベルを鳴らして下さいませ。」
「それは構わないけど。報告いいかい。」
「えっ、ええ。失礼しました。どうぞ、そちらにお掛け下さい。」
そしてベルを鳴らすと、隣の部屋から執事の格好をした男が出てきた。
「ユミコ様、御用でしょうか。」
入ってきた執事はこちらを見て一瞬ぎょっとしたが、
何もなかったようにお辞儀した。
こいつ、できるな。
「お客様です。お茶の用意を。それとポーリンとルフィンを呼んでちょうだい。」
「畏まりました。」
執事は再びお辞儀をして出て行った。
「あれは?」
「どう?いいでしょう。私専用の執事です。他にも小間使いの者とメイドもいるのですよ。」
「まるで、どこかのお嬢様だな。」
「えへへへ。」
いや、別に褒めてるわけじゃないんだけど。
シスターポーリンとルフィン枢機卿が来るまで、
お茶を飲みながら、フォーテルムーン法国の近況について話していた。
そして、3人が揃った所で、ワイバーンの巣の報告をした。
「5匹ではなく、4匹でしたか。」
「しばらく待ったが、来る気配すらなさそうだったから、諦めた。」
「まあ、いないものは退治しようがないですからね。仕方ないでしょう。」
ルフィンは納得した様に答えた。
「それよりもお疲れではございませんか。よろしければ、食事までお部屋でお寛ぎなさいますか。」
ポーリンは、気遣ったように提案してきた。
「そうだね。そうさせてもらうよ。」
「それでしたら、既に部屋を用意させてあります。私がご案内いたしましょう。」
そう言って、ポーリンの後を付いて行って部屋まで行った。
「入浴の準備もさせております。準簿ができましたら、お声を掛けさせて頂きます。それでは、ごゆっくりと。」
そう言って、ポーリンは出て行った。
部屋に入ってソファーに腰かける。
特にする事も無いので異空間収納に仕舞っているアイテム類を確認しようと
メニュー画面を開いた。
すると、レベルが1つ上がっているのが分かった。
レベルが上がるのは随分久しぶりな気がする。
早速、スキルを取っていく。
今回は、まず剣術のレベルをMAXにした。
剣を振り回すだけの戦いなら敵なしといった所だ。
次に取ったのは状態自動回復をレベルMAXまで。
これは1つの状態異常を1秒で回復させるパッシブスキルというやつだ。
状態異常は、怖いので優先させた。
次は体術をLv5.武器を持てない場合の緊急措置として取得しておく。
更にテイムLv6、召喚魔法Lv6、騎乗、調理、操縦、隠密行動、潜伏を
それぞれLv3まで上げた。
テイムに関しては、テイムできる数が全部で5匹までとなった。
召喚魔法はLv6にすることで召喚時間が24時間まで増えた。
そして動物以外にも中ランクの魔物を召喚できるようになったのだが
何が召喚できるかはまだ良く分からない。
今度試す必要がありそうだ。
騎乗などはLv3だと、優秀なベテランレベルの技術のようだ。
そして最後に剣術がレベルMAXになった事により出てきたスキルで
二刀流というやつだ。
これだけは絶対に取りたいスキル、ベスト10の内の一つだと思ってる。
二刀流はロマンだ。決して中二病じゃないんだ。
残りスキルポイントは2804となった。
どうやら、スキルをMAXまで上げると
派生するスキルが出てくるようなのだ。
後々の事を考えて少しだけ残しておくことにした。
能力値も各能力が200を超えて、魔力なんか500を超えてしまった。
もう人間のレベルを超えている。
能力値が100あれば人間の中では限界値に近いらしい。
そして俺の力は221。
だからと言って見た目が筋肉モリモリという事もなく
多分普通の体格だ。
子供にしては筋肉が着いているとは思うが。
前に本で見たが、この世界の能力値は筋力と体の中の魔力によって
決まっているらしい。
つまり、この世界では見た目に騙されると
痛い目に合うというのが定説のようだ。
という事で、レベルアップでスキルが増えた。




