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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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87/276

84日目 秘密の告白

●84日目(グリウス歴863年7月26日)


朝日が昇る前の暗闇(くらやみ)の中、

俺達は出発する為に橋の入り口に集まりつつあった。

大地の牙は以前と違って全員が大小様々なバックパックを背負っていた。

大盾持ちのザナッシュとシーフレンジャーのクロムは

小型のバックパックを背負い、

大型の戦鎚(せんつい)持ちのマークと魔法使いのバリントン、

テトリアは中型のバックパック、

リーダーのピエールが大型のバックパックを背負っている。

「前は皆さん、バックパックなんか背負っていましたっけ?」

ちょっとした違和感(いわかん)から質問してみた。

「前にも言ったと思うが、アルスに生き返らせてもらったが、代償(だいしょう)としてそのメンバーは大幅なレベルダウンを()らってな。以前ほどの戦力には、まだ程遠い状況なんだ。だからと言って冒険者としてのランクが下がったわけじゃないからどうしても苦境(くきょう)に立たされてしまう事が多いんだ。そこで、以前の力を取り戻すまで、当面は報酬(ほうしゅう)の大半をアイテムにつぎ込んで戦力を補おうって寸法(すんぽう)だ。」

「また、死ぬのはごめんですからね。」

「そうそう、それに今度もアルスくんがいるとは限りませんしね。」

「そうなんだ。一体そんなに何が入っているんですか?」

いくらアイテムに頼ると言ってもポーション類は消費期限があるから

普通は買いだめなんてできない。

以前商人のカーターさんが持っていたマジックバッグは

劣化(れっか)を少し遅らせることができる物だった。

そんなバッグがあっても完全には劣化を防げるわけじゃない。

そう考えるとポーションは精々(せいぜい)一人1本か2本がいい所だろう。

中には異空間収納のようなバッグもあるが、

高価なわりにそれ程多く物が入る訳ではない。

そう考えると一体何が入っているのか気になりだした。

「アルスくんが考えているような大層(たいそう)な物ではないですよ。」

そうそう、生き返らせた3人は俺の事をこの間から「殿」付けで呼んでいた。

冒険者仲間からそう呼ばれると周りが変に思うからやめてくれといって、

ようやく「君」付けに変えてもらったのだ。

「でもそんなに荷物が多いと気になるじゃないですか。」

「普通の冒険者から見たら確かに種類は多いかな。一番多いのは食料だな。アルスと一緒に冒険して食事の重要性に気付いたんだ。今までは冒険中は干し肉やパン、水がほとんどだったが、しっかりとした食事は精神的にも体力的にも重要だって気づいた。そうなると調理器具も必要だし、食器も必要だな。それと魔法の道具だ。戦闘用から日用品まで色々と持つ事にした。戦闘用の魔法の道具は、スクロールが多いな。主に補助魔法を揃えてある。日用品の魔法の道具は発火の棒や一定時間で水が満たされる革袋とか、まあ、色々だな。街で(そろ)えられるものはある程度揃えたな。ポーションは各自1本ベルトポーチに入れてある。それとトラップもあるぞ。そんな大掛かりなものはないが、それでもかなり重宝(ちょうほう)している。」

「へー。トラップかあ。どんなのがあるんです?」

「そうだな。鈴のついたロープとか虎挟(とらばさ)み(ベアトラップ)や

()(びし)(ウォーターカルトロップ)なんかが重宝しているな。」

撒き菱ってあの忍者が使っているようなやつか?

「ウォーターカルトロップって、どんなものなんですか?」

「ああ、これは(ひし)という水辺の植物の種子(しゅし)なんだが、まあ見た方が早いな。」

そう言って、腰に下げてある筒状(つつじょう)の物から一つ取り出した。

それは(とげ)の頂点を線で結ぶと

ちょうど三角(すい)の形になるような物だった。

これを置くと必ず一か所の棘が上になる形である。

やはり、昔忍者が使っていた物と同じようなものみたいだ。

この世界にもあるんだな。

「これが意外と安価でな。まあ、使い捨てだから高価だったら誰も買わんがな。撤退するときや野営の時なんかに使っているものだ。」

「面白いですね。」

「だろ。それに実はこれは非常食にもなるという話だ。」

「これ、食べられるんですか?」

「美味くはないぞ。この実の中に白い部分があって、それが食べられるらしい。でも、そんな状況は勘弁してほしい所だがな。」

そんな話をしていると、アンジェとマリアがやってきた。

「遅くなり、申し訳ない。」

アンジェが皆に向かって言った。

「いや、俺達も今来たところだ。気にするな。」

ピエールが答える。

「全員揃った所で、最終確認だ。俺達大地の牙はこのまま北方の村から調査していく。アルスとアンジェ、マリア組みは直接タイス市の調査だ。問題ないな。」

全員が頷く。

「では、出発だ。」

橋を渡り、大地の牙はすぐに北へ進路を向けた。

俺達はこのまま東方へ向かう。

この頃には太陽が昇り始め、周囲が徐々(じょじょ)に明るくなってきた。

一応、道のような細道はあるので、普通の速度で歩いて行けるようだ。

交易で使われる道のようで、(わだち)の後も見られる。

ただ問題なのは、地図がないということだ。

この道を行けば、タイス市に着けるという話だが、

逆に言えばこの道を外れると分からなくなる可能性がある。

「それじゃあ、俺達はテレポートで進んでいこうと思うんだけど、問題ないよね。」

念の為、2人に確認する。

「私達はそれで大丈夫よ。」

「道が分からないから、道が見える所まで細かくテレポートすることになるから、ちょっと回数は多めになるから、気分が悪くなったら言ってね。それじゃあ、2人共俺に掴まってくれる?」

すると2人は俺の腕にそれぞれしがみ付いてきた。

「・・・なんか、連行(れんこう)されてるみたいなんだけど。誰も見てないし、いっか。」

するとマリアが後ろに回り、抱き着く格好(かっこう)になった。

ただ、身長差があるから腰に手が回るのではなく、おんぶをするような感じで肩の上から腕を前に回す格好になる。

「アルスくんも両手が(ふさ)がっていると不便でしょ。これなら大丈夫じゃないかしら。」

さっきより密着度が大きくなったようだが、まあ、問題はないと思う。

「ちょっと、マリア。くっ付きすぎじゃないかな。」

「そんなことないわよ。アンジェだって腕に(から)みつきすぎじゃないかしら。」

これが街中だったら嬉しい事この上ないとは思うんだが、

今は2人共(よろい)を着ている。

正直、美味しい感触は得られなかった。

というより、あまり強くくっ付くと鎧が当たって少し痛いのだけど。

それに人の頭の上で言い合いしないで欲しい。

そんな2人を無視するように

「それじゃあ、テレポートするよ。」

「テレポート!」

テレポートで移動しながらの索敵もだいぶ慣れてきた感じだ。

周囲の状況把握(はあく)も早くなったと思う。

初めはだだっ広い平原が続いていると思ったが、

すぐに丘陵(きゅうりょう)地帯へと変わる。

道も丘の間を()う形で続いているのでここから先は

テレポートで行くのは難しそうだった。

「2人共一旦離れてくれる?」

頭の上での言い合いは終わっているのだが、

2人共強く抱き着くものだから鎧があたる部分が少し痛い。

「ここから先は、歩きますよ。」

「・・・・」

「・・・・」

「あのー。」

「あっ、ごめん。」

「ごめんなさい。」

ようやく解放(かいほう)されて体が軽くなった気分だ。

「この先は道がくねっていて、先が見えないから、テレポートで行くには道を外れちゃいそうだし歩きますよ。」

「ええ。」

「わかった。」

索敵を維持しつつ、歩き始める。

「そういえば、2人共荷物は少ないんですね。」

「言ってなかったかしら、私はアルスくん程じゃないけど、空間収納を使えるのよ。大した量は入らないけどね。」

「じゃあ、2人の荷物はその中に?」

「そうね。ただ、アンジェの持っているベルトポーチはレアものでね。私の空間収納程じゃないけど、結構入るのよ。これは内緒ね。」

そういってマリアはウインクして見せる。

「そうそう、マリアさんも俺の事アンジェさんみたいに呼び捨てでいいですよ。」

「じゃあ、私の事もマリアさんじゃなくって、マリアって呼んで。」

「・・・わかったよ。・・・マリア。」

「ありがと。アーくん。」

「いや、それ呼び捨てじゃないし。」

「えー。ダメ?」

可愛く小首を(かし)げて、目をウルウルさせている。

「あー、もう好きに呼んでください。」

「じゃあ、これからはアーくんって呼ぶね。」

「じ、じゃあ、わ、私もアーくんって呼んでいいか。」

アンジェまで・・・。

「好きにして下さい。」

なんだこのラブコメみたいなやり取りは。

「!!」

「しっ。前方から10体の反応がある。こっちに近づいてくる。」

索敵のマップ化をして、鑑定をする。

「ホブゴブリンが10体だ。」

「どうする?ア、アーくん?」

いや、言いにくいならアルスでいいのに。

「様子を見ましょう。丘の上に身を(ひそ)めてやり過ごしましょう。」

そういって、少し小高い丘へと外れる。

寝そべれば、草や丘の高さで向こうからは発見されにくいはずだ。

「リリーも顔を出すなよ。」

小声でリリーに注意する。リリーも大人しく俺の真似して地面に()せている。

リリーは伏せなくても見つからないと思うんだが。

すると、丘のくねった道からホブゴブリンが姿を現した。

ホブゴブリンは全員があり得ないほど完全武装している。

(かぶと)こそ(かぶ)っていないが、プレートメイルを着込んで、

武装も槍持ちが3体、斧持ちが3体、剣持ちが2体、メイス持ちが2体。

どう考えてもただのホブゴブリンではないと感じさせる。

「ホブゴブリンって普通あんな感じなのか?」

両脇(りょうわき)で身を潜めているアンジェとマリアに小声で話しかける。

道から30mは離れているので、多少の小声程度ならバレる事はないはずだ。

「あれは、普通じゃないわね。よく見て。鎧が全て統一されているわ。」

マリアが指摘する。

「そう言われれば、鎧の規格(きかく)が統一されているな。どこかで盗んできたのか?」

「いいえ、違うわ。あれは着せられているのよ。あんなきっちりした鎧を着たホブゴブリンなんていないわ。」

「どうする?ア、アーくん?」

もう突っ込みませんよ。アンジェ。

「何匹か捕まえて、情報を()かせよう。ただ、あまり派手な攻撃は()けてほしい。それと1匹たりとも逃がさないように気をつけよう。まず、俺が初手でスタンクラウドを放つから、2人は麻痺(まひ)しなかった奴らを魔法で攻撃してくれる?俺もその後、攻撃に移るから。」

「OKよ。」

「了解した。」

ホブゴブリンが十分近づくのを待つ。

すると、ホブゴブリン達はいきなり立ち止まった。

バレたか?いや、そんな感じではなさそうだ。

ホブゴブリン達は何やら地面を探っているようだ。

しまった。足跡(あしあと)か。俺達の存在に気付いたかもしれない。

「行くよ。」

小声で合図を送る。

「スタンクラウド!」

ホブゴブリン達が地面を見ている中の5体が突然倒れた。

「マリアは右を。」

アンジェがマリアに言う。

「アイスジャベリン!」

「ファイアランス!」

火と氷の槍が一番右にいたホブゴブリンと

一番左にいたホブゴブリンに突き刺さる。

火の槍が突き刺さったホブゴブリンは

突き刺さった部分から炎を上げて燃え始めた。

氷の槍が突き刺さったホブゴブリンは突き刺さった部分から凍り始めた。

その様子を見ていた最後のホブゴブリンは突然起こった状況に恐れをなして

メイスをその場に落として来た道へ引き返そうと

後ろに振り向いて走り始めた。

「逃がさないよ。」

「ウインドスラッシュ!」

次の瞬間、逃げ出そうとしたホブゴブリンは胴を真っ二つに切られて倒れた。

「倒した奴らを調べてくれる?俺は麻痺させた奴らを調べるから。」

5体のホブゴブリンを調べるとその内の1体の懐に羊皮紙が1枚入っていた。

何か書いてあるが、字が分からず読めなかった。

取り敢えず、こいつがこのホブゴブリンのリーダーと見て間違いないだろう。

という事で、魔法の効果が切れる前に、

他の4体のホブゴブリンは(とど)めを()していく。

リーダーと(おぼ)しきホブゴブリンをロープで(しば)り上げておく。

戻ってきたアンジェとマリアに羊皮紙を見てもらった。

「これは妖魔族語かしら。」

「妖魔族語?」

「ゴブリンやオーク等の魔物の中で人間に近い種族は言語を持っている事は分かっているわ。ただ種族ごとに若干(じゃっかん)の違いがあって人間族みたいに共通語というものが存在しないのよ。ただ、基本は同じ言葉だから妖魔同士ならある程度理解し合えるみたいね。ただ、文字となるとそれなりの知識が必要だから、このホブゴブリンが字を読めるのだったら他より高位の生まれなのかもね。」

「マリアは妖魔族語、分かる?」

「分からないわ。エルフやドワーフなら分かったかもね。」

「そうか。なら、魔法で読むか。」

「リードマジック!」


「なるほど、大した情報ではなかったよ。ただの指示書だね。この丘陵地帯の巡回(じゅんかい)について書かれているだけだった。ただ、この指示を出したのは帝国軍に間違いないようだけどね。」

「帝国が妖魔族語を?」

「さあ、その辺りは分からないけど、これは一応(もら)っておこう。」

「アルス、見てくれ。」

アンジェが指さした方には先程の戦闘で

最初に倒したホブゴブリンのいた場所だ。

ただ、その場所にはホブゴブリンは無く、

その代わりに魔石が1つ転がっていた。

「こいつらもか。」

「どういう事?」

マリアは怪訝(けげん)な顔で()いてくる。

「実は帝国が差し向けてくる魔物たちは全てこうなんだ。まるでダンジョンモンスターだろ。」

「ふーん。」

それを聞いたマリアは何かを考えているようだった。

「アンジェ、悪いけど魔石を回収しておいてくれないか。」

「了解した。」

アンジェは魔石を回収に行った。

「さて、尋問を開始しようか。」

「キュア!」

すると体が自由になったせいかホブゴブリンは突然暴れだした。

しかし、ロープできつく縛られているので

ゴロゴロと動くことしかできない。

「大人しくしろ。」

喉元(のどもと)にナイフを突きつけてやる。

それでも暴れようとしたが、自分でナイフの方へ動いた為、

自分で喉元を傷つける事になってしまった。

その時点で、ホブゴブリンは大人しくなった。

「俺の言葉が分かるか?」

「グルルルル・・・」

喉を鳴らして威嚇(いかく)してくる。

「俺の言葉が分かるか?」

「グギャ、ギャギャッギャ」

何を言っているかさっぱりわからん。

「シェア・ランゲージ!」

ホブゴブリンに手を当て魔法を発動させる。

「俺の言葉が分かるか?」

「オレヲ、カイホウシロ。」

「お前は状況を理解しているのか?」

「グググ・・・ナニガキキタイ。」

「お前達は帝国の兵か?」

「オレタチハ、シャックス(・・・・)サマノ、シモベダ。」

「シャックスとはなんだ?」

「ワレラガ、カミ。」

「お前達は、・・・」

そこまで言いかけて、気づく。

いつも間にか何者かが索敵エリアに侵入してきていた。

それも俺達がいたのとは別の丘の上だ。

「アンジェ、マリア気をつけろ。」

次の瞬間、2つの炎の槍が飛んできた。

「マジックシールド!」

(かろ)うじて飛んできた炎の槍を防いだ。

「ダークエルフだと・・・」

マップに出ていたのはダークエルフ、それも1人だった。

そして、先程飛んできたもう一つの炎の槍は

ホブゴブリンに突き刺さっていた。

「チッ。」

思わず舌打ちする。

ホブゴブリンに気を取られてしまい、

気づいた時にはダークエルフは(すで)に撤退していた。

そして、あり得ない速さで索敵外へと逃げていってしまった。

「アーくん、大丈夫?」

マリアが近寄(ちかよ)ってきた。

「えっ、ああ、大丈夫。マリアもアンジェも大丈夫だった?」

「私達は何ともないわ。」

「それにしても、なんて速さだ。あっという間に索敵圏外へ逃げてしまったよ。」

「フードを被っていてよく見えなかったけど。」

「索敵でダークエルフとなってたよ。」

「ダークエルフか。エルフ族が本気をだせば、速さで(かな)う種族はそれほど多くない。エルフ族の秘術(ひじゅつ)か何かだと聞いた事がある。」

「どうりで、ヘイストを掛けたにしては速すぎると思ったよ。」

エルフ族にそんな秘術があるのか。

ヒュリアも本気を出せばもっと強いのかな?

「それにしても、情報を聞きそびれてしまいましたわね。」

「仕方ないさ。どのみちホブゴブリンじゃ、知っている事も少なさそうだし。それより、魔石を回収したらすぐに出発しよう。」

バレているとは思うが、ここでの戦闘を隠すために、

ホブゴブリンの血を水で洗い流し、カモフラージュした。

歩きながら、先程の戦闘について考えてみる。

あのダークエルフは最初から俺とホブゴブリンを狙っていた。

他に何か情報を持っていたのだろうか。

そんなことを考えている内に昼時になり、

そして丘陵地帯の外れに出たようだった。

「丘陵地帯を出る前に昼ごはんにしようか。」

今日は、魚のステーキバーガーにした。

魚のステーキにスライスしたチーズをのせて、

葉物(はもの)野菜と一緒にパンに(はさ)んだものだ。

食べながら予定を組み立てる。

丘陵地帯を抜けると、またしばらくは平原になる。

そしてその先には森があり、多分森の中を行くか、

森に沿()って道が続いていると思われる。

ふと森の方を見ていると、森の奥に尖塔(せんとう)天辺(てっぺん)のようなのが

チラリと見えた気がした。

「ウイザードアイ!」

魔法の目を上空に飛ばす。

木が邪魔(じゃま)で見えなかったが、どうやら森の奥に街があるようだ。

「街を見つけたよ。森の先だ。」

アンジェとマリアにそう伝える。


休憩を終えて再び進むことにした。

先程の事もあり、少し油断しすぎていた。

まずは、発見の魔法から、

「ディテクト・インビジブル!」

「ディテクト・エビル!」

「ディテクト・エネミー!」

「ディテクト・マジック!」

「ディテクト・トラップ!」

そして念の為、守りの魔法もかける。

「マジックシールド!」

「ミサイルプロテクション!」


「それじゃ、行くよ。しっかり(つか)まってて。」

アンジェとマリアは先程とは逆になっていた。

リリーは相変わらず服の中に潜り込んでいる。

まあ、いっか。

「テレポート!」

慎重(しんちょう)に道を見失わないようにテレポートで進んでいく。

一気に森までテレポートしても良かったが、MP消費が心配だったので、

小刻(こきざ)みに(おこな)って魔力の回復をさせつつ、

という方法にならざるを得なかった。

途中回復が追い付かず、小休止した事もあり、

予想以上に時間がかかってしまった。道は森の中に伸びている。

森の(ふち)に着いてから、周りに印象に残りやすい場所を探す事にした。森の入り口から少し南へ行ったところに、

池なのか沼なのか分からないが、小さな水のたまり場を見つけた。

「ここなら、大丈夫だな。」

「アーくん、こんな所に来てどうするの?」

「さっきの事もあるから、野営は厳しそうかなって。それで、今夜は、俺の隠れ家に行って休んで、またここに戻ってこられるように、場所を意識しやすい所を探していたんだ。ちょっと時間をちょうだい。周囲の警戒をよろしく。」

沼の(ほとり)に立って、周囲の景色を意識づける。

なるべく細かい所まで。そして、砦からの位置も頭の中に叩き込む。

何度か目を(つむ)り、また、周囲を見渡す。

そんな事を30分ほどしていた。

「よし。大丈夫だな。」

「アンジェ、マリア、お待たせ。」

森の中は(すで)に薄暗くなり始めている。

「さっきも言ったけど、ここで野営は危険と思う。だから、これから、俺の隠れ家でゆっくり休む事にしよう。」

2人は、一体何を言っているのかというような顔をしている。

「ゲート!」

魔法を発動させると、目の前に少し大きめの門が現れた。

「行こう。」

そういうとリリーは真っ先に門の中へ入っていった。

アンジェとマリアはお互い顔を見合わせたが、

意を決したようにアルスの後に続いて入っていった。


門の先は、エルフ王国の海の中にある塔の中だった。

「2人が初めてのお客様だね。」

俺は2人に向かって言った。

「ようこそ。我が家へ。」

2人は突然変わった景色に目を白黒させていたが、

最初に口を開いたのはマリアだった。

「今のがゲートの魔法・・・。アーくんは、失われたと言われたゲートの魔法を使えるのね。」

「うん。まあね。そんな事より、こっちだよ。」

そう言って、2階に案内する。

「まだ、何も(そろ)えてないから本当に何もないけど、ゆっくりはできるから。それでここが食堂。」

だだっ広い空間には何もなかった。

「そして、3階がリビングだよ。さあ、こっち来て。」

そう言って3階に案内する。ただ、そこにも何もなかった。

「ちょっと待ってて。寝室に置いてあるテーブルと椅子を持ってくるから。」

走って4階に上がり、そこに取り敢えず置いておいた

円形のテーブルと椅子4つを運び出す。

「このテーブルと椅子はこの間買ってきた物だから安心して使ってね。それでこの上の階は寝室なんだ。でも寝室にはこの間買ったベッドと椅子とタンスしかないんだ。」

そう説明したが、2人は呆気(あっけ)に取られているようだ。

「お茶でも()れるから(すわ)ってて。」

2人に椅子に座るよう促す。2人は素直に椅子に座った。


お茶を飲みながら(くつろ)いでいるとマリアが()いてきた。

「あの、アーくん?ここ、どこ?」

「あれっ?さっき言わなかったっけ?」

「言ってない(わ)。」

2人が声を(そろ)えて言った。

「そうだっけ。ここはエルフ国の近海にある海の中の塔だよ。エルフの国の人の多くがこの塔の存在を知っていたけど今まで中に入れたエルフはいなかったそうなんだ。それで、俺もチャレンジしてみたらアッサリと入れたからエルフの王様にお願いしてこの塔の所有権を魔物の卵と交換したんだよ。今は俺の魔法で鍵をかけているから事実上、俺以外は自由に入れないようになっている。」

「あいかわらず、規格外だわ。」

マリアは大きく溜息(ためいき)をついた。

アンジェに(いた)っては状況の理解が出来ていないようであった。

「それで、ゲートの魔法で出入りできる事も確認済みだったし、こっちの方が安心して休めると思ったんだけど、もしかして、嫌だった?」

「そんなわけ(こと)ない。」

また、2人揃って答える。

ほんと、この2人は気が合うんだなあとつくづく思う。

「ただ、さっきも言った通り、まだ何も家具もなければ、何もないから、それだけは勘弁(かんべん)してね。」

「いいのよ。森の中で尚且(なおか)つ敵中で野営するより何十倍もマシだわ。」


その後、俺が食事の準備をしている間、

2人の希望で、簡単な掃除をしてくれる事になった。

所々に()ちた木材の破片(はへん)や、(ほこり)などがあったのを

2人は綺麗(きれい)にしてくれた。

そして、食事のあと、自然とパーティの話になった。


「俺が迷っているのは、俺とパーティを組むことによって2人に危険が及ぶと思ってるからなんだ。その危険は多分、人が(あらが)えないような大きな危険だと思ってる。そんな危険に2人を巻き込んでいいものだろうかと考えてるんだ。実は俺には秘密があるんだけど、2人を信じて俺は秘密を打ち明けようと思う。実は、俺はこの世界の人間じゃないんだ。」

「・・・・」

「・・・・」

「??・・・驚かないの?」

「えっと、アーくんには申し訳ないけど、みんな知ってるわよ。」

「えっ?知ってるって、どういう事?俺は誰にもそんな事言った事ないけど。」

「あのね。アーくん。アーくんみたいな人間ってそもそも存在しないのよ。この世界で生まれ育った人間はアーくんみたいな強い能力を持つ事はないのよ。」

「でも、前に本で読んだ英雄の資料には結構強いように書かれていたよ。」

「それは、そもそもその人達がアーくんみたいな存在と一緒か華美(かび)に書かれただけなのよ。」

「もし、アーくんみたいな人間が現れたとするとその人間は他の世界から来た特殊な人間か、もしくは人間に成りすました魔族しか考えられないわ。そして、アーくんは魔族じゃない事は調べがついている。そうすると残るのはアーくんが他の世界から来た者ということになるの。そして、それは、各国の王様もそのごく一部の上層部、冒険者ギルドの上層部、Bランク以上の冒険者であれば皆知っている事だわ。アーくんは不思議に思わなかったかしら、なんで、権力者が付かず離れず接してきたか、そして邪険にされる事なく多大な報酬も与えられたか。それは、この世界の歴史から私達が学んだ事なのよ。ここでは、アーくんのような人をとりあえず渡界人(とかいびと)と呼ぶわね。渡界人を孤独(こどく)にする事なかれ。渡界人を裏切る事なかれ。力の強い渡界人ほど恩義(おんぎ)を重んじ、自由を愛する者達と知れ。他にもあるけど、そんな言い伝えが残っているのよ。過去、そういった事を(ないがし)ろにした結果滅んだ国や地域もあるし、もしかしたら帝国の皇帝は、そういった事になってしまった渡界人かもしれないって国王やギルドなどは考えているわ。」

「つまり、みんな知らないふりをしていたのか。」

「もちろん、知らない人間の方が多いわよ。この国で知っているのは、国王とその側近、ランゴバルド辺境伯、ギルドの首脳部、そして私達と大地の牙くらいだわ。エルフやドワーフがどこまで知っているかは分からないけど、まあ、エルフなら感づいているかもだけど。」

「じゃあ、俺とパーティを組もうと言ったのは、その言い伝えの為なのか?同情されたのか。」

「それは違うわ。そんな事でアーくんと一緒にいるとしたら、それはアーくんに対して裏切りと同じことだと思うの。私達は、アーくんと大地の牙達とダンジョンに潜った時からずっと考えていたわ。だけど、アーくんに近づきすぎると、かえってアーくんを傷つける事もあるかもしれない。だけど、日が経つにつれて、アーくんの存在は私達にとって、どんどん大きくなっていったの。けれど、言い伝えや教訓、伝承からアーくんとはつかず離れずでいた方がいいとも思っていたわ。あえてリスクを取るなんて危険すぎるもの。だけどね。」

そこまでマリアが言った時に突然アンジェが立ち上がって叫んだ。

「私は、ア、アーくんが好きだ。初めて会った時から。だから、一緒に冒険がしたい。ずっと一緒にいたい。」

そこまで言ってアンジェはみるみる顔が赤く染め上がっていく。

そして、椅子(いす)に座り直し、そのままテーブルに顔を(うず)めてしまった。

あまりの事に呆気(あっけ)に取られていた2人だったが、

先に口を開いたのはマリアだった。

「そうよ。私もアンジェもアーくんの事が好きになってしまったのよ。この気持ちは(おさ)えられない。だから2人でアーくんとパーティを組もうと決めたのよ。あー、もー、アンジェのせいで2人して告白なんてあり得ないわ。」

そう言いながらも、マリアも耳が赤くなっているのが分かった。

「ぷっ、フフフ、アハハ・・・」

アンジェは()()したまま動かず、

マリアはそっぽを向いている。

「ご、ごめん、2人共ありがとう。こんな気持ちなんだか久しぶりすぎて、・・・すごく嬉しいよ。こんな俺で良ければ、一緒に冒険させてくれないか。」

その言葉を聞いて、アンジェがガバッと起き上がり、アルスに抱き着く。

「ありがとうアーくん。これからずっと一緒にいられる。」

その顔は(うれ)し泣きをしていた。

「ちょっとアンジェ、そんな鎧着て抱き着いたらアーくんが痛いでしょ。離れなさいよ。」

そう言って、マリアも負けじと俺に抱き着いてきた。

「ちょっと、2人共、痛いから、ちょっと、聞いてる?」


それから少し落ち着いてから、俺は再度(たず)ねる事にした。

「2人には、はっきり訊いておきたい事があるんだ。俺はどうやら使命を与えられているらしいんだ。だけど、その記憶はこの世界に来る途中で、多分異界の神と言われているシャックスという奴の仕業(しわざ)らしいんだ。聖女のユミコによるとそのシャックス神の野望を打ち(くだ)くのが俺の使命らしいんだ。ただ、人が神に(かな)(はず)もないし、神も直接人に危害を加える事は出来ないらしい。いや正確に言うと出来てもそれは神にとって多大な代償(だいしょう)を支払う事になるらしい。お互い手が出せない以上、俺の役目はシャックス神の信仰を壊す事にあるとユミコが言っていた。今シャックス神は帝国の皇帝を利用し、自身の力を蓄えているそうだ。だから、俺と一緒にいるという事はそれだけ危険な目に合う可能性が高いんだ。命を落とす危険だって、」

そこまで言って、マリアが俺の口に人差し指をあてた。

「もう、そんな事はどうでもいいのよ。私もアンジェもアーくんと一緒にいたい。それだけなんだから。」

「わかった。もう言わないよ。随分遅くなっちゃったし、今日はもう休もうか。」

「そうね。じゃあ、いきましょ。」

「行くって?」

「寝室に決まってるじゃない。4階なんでしょ。」

「ああ、そうだね。行こうか。」

4階へ上がり、部屋には大きなベッドが1つある。

上がってきたマリアがアンジェに魔法をかける。

「クリーン!」

そして自分にも掛ける。

「アーくんにもかけてあげるわ。こっち来て。」

「この魔法は何?」

「これは生活魔法って言って属性のない独自魔法って言った方がいいかしら。

クリーンって言って体の汚れや着衣(ちゃくい)の汚れをある程度、落としてくれる便利魔法よ。」

「そんなのがあるんだ。知らなかったよ。」

生活魔法なんてスキルあったかな?

マリアがクリーンの魔法をかけると不思議と体が綺麗になった気がする。

体のべた付きも髪のゴワゴワも無くなっている。

これは憶える必要がありそうだ。

「ありがとう、マリア。じゃあ、2人はそのベッド使ってくれていいよ。俺は下で寝てるから。」

「何言ってるのよ。こんなに大きなベッドなら3人でも十分に寝られるでしょ。」

「大きさ的にはそうだけど。でも女の人と一緒に寝るなんて。」

「何言ってるのよ。今後一緒に冒険するんでしょ。そしたらこんな事、いつもの事になるんだから、はやく鎧、脱いじゃって。」

「ええー」

っていうか、アンジェはなんで服も脱いでるの?

うわぁ、マリアまで。

「ちょっと、心の準備が。ちょっとアンジェさん、勝手に人の服脱がしにかからないで、ああー。」

「服のまま寝たら、服がしわくちゃになるでしょ。」

その後、結局3人で寝る羽目になった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今まで火を付けたりする生活魔法何度も使ってたのに、生活魔法知らないことになってるのは何故?
[一言] ハーレム化すること自体は別に構わないですけども(飛び抜けた有能さと甲斐性を見せた上でのことですし)、 二人そろってショタ趣味のやべー行き遅れ女コンビだった、の構図じゃないですかぁーーウワァァ…
[一言] キーワードにハーレムなかったから安心して読んでたんだけどやっぱテンプレなのね残念。 なろうは作者が自由に書いた小説を読者が読む読まないを決めるだけなので完結まで頑張って下さい。
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