85日目 偵察任務
●85日目(グリウス歴863年7月27日)
ガバッ。
目を覚ますとベッドの上だった。
下の階からいい匂いがしてくる。
そうだ、昨日はアンジェとマリアの2人の間で寝かされ、
しかも2人共下着姿だったし、やたらくっ付いてくるしで
なかなか寝付けなかったが、いつの間にか眠ってしまったようだ。
自分の服を着て、下へ降りていく。
「おはよう、アーくん。」
「やっと起きてきたのね。」
いい匂いの正体は朝食の匂いだった。
「丁度できたところだから、食べましょう。」
そう言われて、席に着く。
「いただきます。」
「どうぞ。」
「これは、2人で作ったの?」
「ううん。ほとんどアンジェが作ったのよ。私は手伝っただけ。」
スープを口に運びながら訊いた。
「美味しい。」
「そう?あり合わせだから大したものじゃないけど。そう言ってくれて嬉しい。」
「こう見えても、アンジェは料理が得意なのよ。」
「そうなんだ。マリアの方が得意なのかと思ってた。」
「私は苦手なのよ。でもお掃除や片付けは得意よ。逆にアンジェは苦手なのよね。」
「もう、マリアってば。」
「そっか。やっぱり2人はいいコンビなんだね。」
「あるすも、りょうり、じょうずだよねー」
「ありがとう。リリー。」
リリーも今日はスープを飲んでいる。
他愛もない話をしながら食事を済ませた。
「それじゃあ、出発の準備をして出かけようか。」
それぞれが鎧を装備したり、アイテムを確認したりして、
準備万端となった。
1階のプールエリアに行く。
ここは他の階と比べて天井が高いので、
ゲートを出すにはちょうど良い感じになっている。
精神を集中して昨日の水辺の景色を思い浮かべる。
意識が景色と同化する感覚ができた時に魔法を発動させる。
「ゲート!」
目の前にできた門を潜りぬける。
すると、昨日いた場所にちゃんと出られた。アンジェとマリアも出てきた。
リリーは相変わらず服の中に潜り込んでいる。
「本当に脱帽ですわ。」
マリアは感嘆を込めて言った。
「ここからは気を引き締めて行こう。」
2人は頷いた。
街までは、目測で1kmほど離れていると思う。
索敵にも街の状況は捉えられていない。
この沼の周りには散策路のような道が沼の周囲に沿って続いている。
平和な時期にはここは、人々の憩いの場だったのかもしれない。
周囲の警戒をしながら、街の方へ進む。
十三連合国内でもこの辺りは魔物が出る事はほとんどなかったエリアだ。
十三連合国内で魔物が出るのは、南方の海岸沿いに海の魔物がでるのと
北方の湿地帯あたりだけだ。
この湿地帯は西に旧バルシー神聖法国、東にベルガド帝国、
南方に十三連合国となっていて、
またその北方は山岳地帯となっており、
魔物はその山岳地帯から流れ込んでくるのがほとんどだ。
湿地帯にはリザードマンの集落をはじめ、湿地特有の魔物も多く存在する。
道という道もない事から、人間がこのエリアを通過するのは
非常に困難極まりないと言える。
そう言う事もあって今まで帝国と法国の行き来は、
必ず十三連合国を通過しなければならなかった。
現状、十三連合国が滅んだ今、事実上の国境は
法国と十三連合国の間にある河川となっている。
この河川も湿地帯を通過し、山岳地帯へと伸びている。
その中でもタイス市は十三連合国と法国を繋ぐ
流通拠点として栄えていたのだった。
ただ、十三連合国の流通は帝国に依存している部分も多く、
法国との流通は多くはない。
それ故、流通拠点であるにも関わらず、規模としてはそれほど大きくはない。
そんなタイス市だから、城壁などのようなものもなく、
木々を抜けるとすぐに民家が立ち並んでいるエリアに入る事ができた。
索敵を行いながら、街中に入っていく。
「索敵で見る限りは、街の中心にモンスターが多いようだね。」
一旦、安全そうな建物の中に入って、索敵を行っている。
索敵内にいるのは、モンスターばかりで、人間は一人もいないようだ。
「こっち方面には、人はいないようだね。」
「聞いた話では街の人達は全盛期では5万人くらいはいたようですけど、どこへ行ってしまったんでしょうね。」
「この様子だと街に残っている人はいないんじゃないかな。食料や飲料の問題もあるだろうし。」
「帝国はこの街に入ってきたのはルート的に北東方面だと思う。もし、逃げるとしたら西側か南側になるけど実際は、法国のある西側にはそれほど多くの人が来たわけじゃない。帝国が法国方面に進出するのが予想出来ていたんじゃないかな。そうなると、わざわざ戦地に逃げるのは危険だからという理由で南に逃げたのかもしれないね。」
「どうするの?アーくん。南の方に行ってみる?」
「いや、もう少し情報が欲しいな。2人はこの辺りの家を調べて欲しい。リリーは姿を消して魔物が近づいて来るのを見つけたら2人に知らせてくれ。なるべく戦闘は避けて、隠れてくれると助かる。もし万が一危険な状況になったら、リリーは念話で俺に教えてくれ。1時間くらいで戻ってくる。いいかい。」
「まかせてー。」
リリーは元気に答えた。
アンジェとマリアも素直に了解した。
実の所、昨日の夜、分かったのだが、
リリーのレベルがいつの間にか5レベルになっていたのだ。
それにより、魔法の効果が上がったのと、
新しく念話というスキルを取得していた。
この念話は俺とリリーの間だけで使えるもので、
鑑定によると距離の制限はないらしい。
ただ、不安なのは今まで使った事が無いという所か。
俺のステータスにも対リリー限定の念話というスキルが
テイムスキルの派生として獲得していたのがわかった。
多分、先の戦闘で俺はレベルが上がらなかったが、
リリーはそれで上がったからだと考えている。
つまり、リリーのレベルが上がり、念話のスキルを獲得した事によって、
俺の方も自動的にスキルが使えるようになったと予想している。
「俺は、タイス市の役所のような場所に行って、この周辺の地図や街の様子を確認してくる。」
「アーくん。気をつけてね。」
2人に大丈夫と手を振って建物から外へ出る。
索敵でこの周辺には魔物はいない事は分かっている。
ひとまず目指すは、この街で一番高い建物だ。
「ミサイルプロテクション!」
「マジックシールド!」
「プロテクションフロムエネミー!」
「フライ!」
「インビジビリティ!」
姿を消して、飛行していく。
索敵に注意しながら、なるべく魔物のいない場所を飛んで行く。
途中、インプの集団がいたので、そこは大きく迂回する。
街の中心に近くなっても、やはり人の気配は全くない。
索敵にも人の反応はない。
街の中の様子は荒んでいた。
扉や窓は壊され、色々な物が道端に放り投げられている。
更に匂いも獣臭や排泄物、血の匂いなども混ざり合い、
思わず飛行高度を上げてしまうほどだった。
街の中心には一際大きな3階建ての建物があった。
魔物がいない事を確認して屋根の上に一旦降りる。
屋上から侵入しようと思ったが、屋上には出入口は無さそうだった。
その為、建物の外周に沿って飛んでみる。
すると1か所、窓が開け離れている箇所を見つけた。
索敵で近くに魔物がいない事を確認して中に滑り込む。
索敵上では、この建物の中に魔物が少なからずいるのが分かった。
入った部屋は3階の1室だ。
この部屋は小さい部屋でキッチンのような感じになっている。
ただ、部屋の大きさからすると前世で言う
給湯室のような意味合いの部屋だと思われた。
部屋の中は皿やコップなどがあったようだが、今は部屋中に散乱し、
ガラスや陶器類はほとんど割られている状態だった。
この世界ではガラスや陶器は高級品で
一般市場には出回る事は少ないものである。
パッと見、ここには重要な物もなさそうなので、廊下付近に移動する。
物音がしないように飛んでいった。
「ディテクト・インビジブル!」
索敵阻害の魔物や姿を消している魔物がいるかもしれないので
念の為、魔法をかけておく。
ここが給湯室の役割をしているのならば近くに
お偉方の部屋がある可能性が高い。
そっと、廊下に出る。魔物は下の階にいるようで
この階には今の所いないようだ。
正面の扉のない部屋を見ようとしたが、途中でトイレと判明した。
よって、ここはスルーする。
廊下の先は片方が行き止まりで片方は途中で廊下が分岐しているようだ。
先に行き止まりの部屋に向かう。
この部屋も扉が壊されており、中にすぐに入れた。
ここも荒らされているが応接間といった感じだ。
ボロボロにされたソファーや椅子があり、
花瓶や絵画なども壊されていた。
目ぼしいものは無さそうなので、もう一つの部屋に入る。
ここは誰かの執務室と言った感じで
奥に一際立派な机と椅子、書類棚があった。
この部屋も先の部屋と同様に荒らされていたが
重要な物があるかもしれない。
鑑定を利用してチャッチャと目的の物を探してしまおう。
「鑑定、行政書類。」
うわっ、失敗。ほとんどの書類が行政書類だった。アホか俺は。
もっと絞って鑑定しないと。
「鑑定、地図が載っているもの。」
2つほど見つかった。それらをサッと取り上げる。
1つはどこかの農地の地図だった。ハズレ。
もう一つは珍しく本である。中を見ると徴税に関する資料のようだ。
サッと中身を確認すると各村毎にページが分かれて
その村の位置を記した簡易な絵とその村の名前や
徴税された金品の一覧であった。
村に人が籠っている可能性は低いが
何かの役に立つ可能性もあるので異空間収納に仕舞っておく。
「鑑定、日報が記載されたもの。」
机の近くにある羊皮紙の束が薄く光った。
今度はそれを見てみる。そこにあったのは主に何かの進捗を報告するものや業務の予定表などであった。
どうやら、ここが市長室で間違いないようだ。
机の近くに来たので、そのまま机の中も確認していく。
ざっと確認したが大したものは入っていなかったが、
鍵がかかっていて1か所開かない引き出しがあった。
「ノック!」
カチッと音がして鍵が開いた。
そっと引き出しを開けると中に鍵の束が入っていた。
折角見つけたカギだが、数も多いので1個1個鍵を試すよりも
魔法で開ける方が早いと思い、鍵はそのままにしておいた。
この部屋のはもう一つ机がある。多分、秘書や従者などの机かも知れない。
そちらも調べてみるが、特に重要な物は見つけられなかった。
この部屋を出て別の部屋を見に行く事にする。
部屋を出ようとした時に2階から3階に上がってくる魔物がいる事が
索敵で分かった。
先程、魔法を使った事で透明化の魔法が切れている。
魔物が上がってくる前に再度魔法をかける。
「インビジビリティ!」
姿が消えたのと同時に上がってきたのは1匹のインプだった。
インプは全身、赤褐色で羽の生えた悪魔という姿だ。
比較的魔法耐性に優れ、逆に力や体力は劣る。
常に飛行して移動しているので足音などもない。
そして主な攻撃方法は魔法だ。
低レベルな魔法だが魔力値の低いものなど簡単に魔法の餌食にされてしまう。
そのインプは俺とは反対の方にフワフワと飛んで行った。
索敵のマップ化でそのインプはこの階の一番大きな部屋に入っていった。
分岐した廊下の先の一つが大きな部屋でもう一つの分岐先の部屋は
それよりも小さい部屋だが、市長室と比べるとそれよりは
かなり大きい部屋になっている。
焦る気持ちを抑えて、先程入ってきた給湯室のような所まで
引き返し、様子を見る。
索敵で追っているが、止まることなく部屋をクルリと一回りして
そのまま部屋を出てきた。そしてそのまま階段を降りて行った。
もちろん、飛んでだが。
ただの徘徊か。インプがいなくなったと所で
先程のインプが入った大きな部屋に行った。
ここにはたくさんの机や椅子が並べられて、
ここで多くの者が事務に携わっていただろうと思わせた。
同じように鑑定で調査をする。時間はかかったものの、
タイス領の地図を手に入れる事ができた。
ただ残念な事にこの地図には地形や道などしか記載されていなかった。
更にこの部屋を探索すると、部屋の中に小部屋がある事がすぐに判った。
その小部屋の前に行くと、見るからに頑丈そうな扉と壁。
大切な物が保管されていると思わせるものだった。
少し危険な感じがしたので、念の為、罠がないか魔法をかけてみる事にした。
「ディテクト・トラップ!」
やはり扉に罠が仕掛けてあるのが判った。トラップの種類は2つ。
1つは決められた手順以外で開いた場合、アラートが鳴る魔法のトラップだ。
もう一つは同じく正しい手順以外で開こうとすると
大量の何かのガスが発生するものだと判った。
魔法のトラップはたぶん簡単に魔法で解除可能のはず。
しかし、この物理的な罠は魔法での解除は難しいだろう。
扉を分解して破壊する魔法もあるが、
下手をすると両方の罠が発動する恐れもある。
残念だが、偵察が任務である以上、戦闘は極力避けたい。
しかもこの破壊魔法は物質を分子レベルに壊して破壊するというもので
音がするのかどの範囲でかかるのか、まだ試していない事もあり
危険を冒してまで使用する事はないと自制した。
そうしていると、またしても魔物が上がってくるのを索敵で判明した。
今度はゴブリンが5体だ。大した敵ではないが、見つかるのも面倒だ。
この部屋の窓には高価なガラスが填め込まれているが、
その内の1つは壊されていて完全にガラスがない状態になっていた。
他の窓も壊されているが、中途半端に壊されているので
出入りするには更に壊す必要があった。
ゴブリン達が来る前に脱出した方が無難と判断したので
窓に向かって飛んで行く。
ゴブリン達はやはり大きな部屋に向かってきていたが
問題なく窓から脱出する事に成功した。
出た所から左方向にハーピーの群れが集まりつつあるのが見えた。
これも見つかると厄介なので、早急に2人と合流する為に
迂回しつつ離れて行った。
「リリー、そっちは大丈夫か?これから戻る。2人に伝えてくれ。」
「こっちはひまー。2人につたえるー。」
「アーくん、おかえり。」
「ただいま。」
民家の一室に入り、椅子に腰かける。
「街の中心に行ったけど、人の生き残りはいないようだね。予想だけど、この街には魔物が500から600くらいいるんじゃないかな。それと、収穫はこの領地の地図を手に入れたけど、役に立つかどうか微妙だね。」
索敵で見た範囲で街の大きさを考えるとそのくらいは居そうな感じだ。
「こっちは、近くの家にあった家族宛ての書置きをみつけたよ。」
アンジェがそう言って1枚の小さな黒板のような物を出した。
そこにはその家族の父親宛で南に避難すると書かれてあった。
「南と言っても、地図には村などは書かれてないし、どこにどんな村があるか分からないな。」
「とりあえず、街の南側に回ってみる?」
「そうだね。街の外周付近を行けば魔物も多くないし、やり過ごすのも問題ないだろう。」
街の中心と異なり、街の外周付近は、農家の家だったり、
貧民とまではいかないものの、裕福でない者達が住んでいる
こじんまりとした家が多くあった。
ただスラムのような貧民街ではないので元々は荒んでいるようには
感じられなかった。
今は魔物に荒らされており色々な物が壊されていた。
小1時間ほど南の方へと行った。
途中、ゴブリンの小集団が近づいてきたりした為、
民家を利用して隠れながら進んだりとしたため、
思ったより時間がかかってしまった。
「ちょっと、ストップ。」
索敵に人間の反応があった。数は2つ。
そしてその周りにはゴブリンが15体うろついているのが分かった。
「人を見つけた。この先、500m付近に2人。その周りにはゴブリンが15匹いる。どうやら、1軒の大きめの家のなかのようだ。まだ、襲われているようには思えないから警戒しつつ進んでみよう。」
「了解したわ。」
「オッケーだ。」
「わかったー。」
まだ距離があるけれど、索敵には魔物が中心地の方に
所々にいるのが分かるので、警戒は必要だった。
ゴブリン達を視認できる場所の民家の中に入った。
窓から様子を覗うとゴブリン達は何やら探しているような行動をしている。
見つけてはいないが、いるのは感じ取っているのかもしれない。
人が隠れていると思われる家の中に9体のゴブリン、
外には3体ずつ離れてウロウロしている。
この6体は見張り役と言った所か。
「2人でゴブリン3体瞬殺できる?」
アンジェとマリアに確認する。
「多分大丈夫よ。わたしが眠りの魔法で眠らせる。もし眠らなかったゴブリンがいたら、アンジェの攻撃魔法で倒せば大丈夫よ。」
それなら、大丈夫そうだ。
「中にいるゴブリンには気づかれたくない。俺はもう一グループの方を無力化してくる。攻撃タイミングはリリーを通して教えるから、頼んだよ。」
アンジェとマリアは近くにいるゴブリン、
俺が少し離れているゴブリンを担当する。
「フライ!」
「インビジビリティ!」
いざという時に対処できるようになるべく近づいていく。
近くに家屋がないので木陰に身を潜める。
アンジェとマリアも準備できたようだ。
リリーに念話を送る。
「攻撃開始。」
「ハイデンスペル・スリープ!」
抵抗されないように魔法の効果を最大限に引き上げた眠りの魔法は、
3体のゴブリンを眠らせた。
マリアの方も3体のゴブリンを眠らせる事ができたようだ。
普通の魔法使いならば、魔力の強さにもよるが
ゴブリン程度なら10体くらい眠らせる事ができる魔法だ。
ただ時折、抵抗に成功する者もいるし、
魔法抵抗を持った変異種もいるので油断はできない。
ただ、ここにいるゴブリンはどれも普通のゴブリンだったようだ。
俺はすぐに、ゴブリンの息の根を止める為に走り出す。
魔法を放った段階で透明化の魔法は切れているので身を低くして走った。
持っているダガーでゴブリンの首を切り裂いていく。
3体のゴブリンの処理が終わって向こうを見ると、
マリアとアンジェが手を振っていた。向こうも終わったようだ。
アンジェとマリアに合流して、家の入り口まで慎重に行く。
中では、ゴブリンの声と物を壊す音が聞こえてくる。
こちらには気づいていないようだ。
家の中ではゴブリンはバラバラに行動している。
それというのもこの家はこの付近では一番大きく、
2階建てで部屋も20個ほどあるような大きさだった。
家の外にいる近くの魔物の反応は100m以上離れているが
大声を出されると呼び寄せる可能性もある。
できるだけ速やかに制圧したい。
入り口から入ると中は少し広いロビーになっていた。
そこから2階に上がる階段と左右にそれぞれ1つの扉がある。
扉は開け放たれている。
索敵の反応では2階に2体、左右それぞれに2体ずついるのが分かる。
アンジェとマリアに小声で話しかける。
「そっちに2体、こっちに2体、上に2体いる。そっちの2体を頼む。俺はこっちの2体を制圧する。その後ここに戻って2階の2体を始末しよう。」
アンジェとマリアは頷いて右の扉に向かった。
念の為リリーにも右に行ってもらう。
俺は左の扉に向かった。扉の先は廊下になっていて、
突き当りに扉と右に折れた廊下がある。
突き当りまでいくと、1体のゴブリンがこちらに向かってくる。
ナイスなタイミングだ。廊下の角で奇襲する事にした。
そっと、ショートソードを抜く。
身を低くして、待ち構える。
ゴブリンは警戒もなしに廊下の角を曲がろうとした。
そこでゴブリンの喉元にショートソードを突き刺す。
ゴブリンは自身に何が起きたか理解する間もなく敢え無く絶命する。
もう1体のゴブリンは奥にいるが、まだ気づかれてはいないようだ。
そのままショートソードを携えて奥に向かう。
途中いくつか部屋があったが、今は無視する。
奥にいるゴブリンはキッチンだったと思われる場所にいた。
そっと中を覗くと、ゴブリンは棚の中に仕舞われていた物を
引っ張り出して物色していた。
「スリープ!」
ゴブリンはあえなく眠ってしまった。
このゴブリンも止めを刺して、ロビーに戻った。
索敵でアンジェとマリアの方も片が付いたのが分かった。
流石Bランク冒険者。隠密行動にも長けているようだ。
合流後、2階のゴブリンも難なく片付けた。
「アーくん。人のいる気配は無さそうだけど?」
索敵には反応がある。確認するとどうやら地下にいるようだ。
「地下にいるみたいだ。地下の入り口を探そう。」
ざっと見て回ったが地下の入り口が見つからない。
「隠し扉かもしれませんね。」
アンジェが言った。
「そうなると、わたし達はシーフ技能は持ってないからアーくん頼りね。
わたしはさっきのゴブリンの魔石を回収してきますわね。」
魔法で隠された扉なら魔法で見つけるのは簡単だ。
物理的に隠されていると探すのが難しい。
特に索敵のマップ化で下の階を見ているが、階段らしきものがないのである。
すると考えられるのは、落とし穴とか梯子の可能性もある。
別の場所に入り口が有るかもしれないが今回はないと思う。
「部屋の位置を考えると階段の下あたりが怪しいかも。」
階段下というか裏になるのか、ここには特に何もないように見える。
「ディテクト・マジック!」
特に魔力反応は見られない。
「ディテクト・トラップ!」
特に罠も無いようだ。
「何もないね。よし、こうなったら仕方ない。ちょっと強引だけど。」
ワンドを取り出し、ワンドの先を床にあてる。
「ノック!」
何も起こらない。少し場所をずらして、再び魔法を発動させる。
「ノック!」
それを、片っ端からかける事、8回目。
床の一部がゆっくりと上に持ち上がり開いた。
「ふー。あった。」
「アーくん?そんな魔法の使い方、始めてみましたわよ。」
戻ってきていたマリアとアンジェの2人の目は羨望というより
呆れたような表情に見えた。
「えっ?そう?」
「そうも何も、そんなにたくさんの魔法を無駄打ちできる人、見た事ないですわよ。」
マリアが言わんとする事が何となく分かった。
普通MP回復には一晩眠る必要がある。
俺はMP自動回復なんてチートな能力があるからこそできる方法だ。
「まあ、開いたんだからいいじゃない。」
アンジェは一応フォローしてくれた。
「それよりも、下に降りてみよう。」
蓋のような扉の中を見ると、中に梯子が架けられてあった。
中は真っ暗で良く見えない。
「ライト!」
ワンドの先にライトの魔法で明かりをつける。
下の部屋は石造りでかなり頑丈そうに見える。
降りるとそこは小部屋のようで、奥に扉が閉まっている。
どうやらこの奥に人がいるようだ。
扉には鍵がかかっておらず、普通に開いた。
「だれ?」
中は先程降りた部屋より少し大きく、樽や木箱の他、
槍なども立て掛けられてあった。
そして奥には寄り添うように見た目15、6才の女性と
7、8才くらいの男の子が抱き合って地べたに座ってた。
「お、おねえちゃん。」
男の子が女性の方に向かって声を掛ける。
「あなた達はだれ?」
女性は声を少し震わせながらも気丈に声を出す。
「大丈夫よ。わたし達は悪い人じゃないわ。あなた達を助けに来たのよ。」
マリアが優しく声を掛ける。
「本当?助けてくれるの?」
そう言うや否や、女性の方は泣き出してしまった。
男の子の方もつられて泣き出した。
その間に入ってきた扉を閉めて、魔物が入ってこないようにした。
少し落ち着いた時に話を聞き出す事にした。
「ねえ?あなた達2人だけなの?」
こういう時は、マリアが一番適しているように思う。
人懐っこい声や表情は彼女の魅力の一つだ。
話を要約すると、彼女たちはこの家の娘と息子で姉弟との事だ。
最初は両親ともにここに一緒に避難したが、
父親は街の状況を調べるために出て行ったが帰ってこなかったらしい。
そして母親とこの姉弟3人で隠れていたが、
そろそろ食料も尽きてきた事で、母親は意を決して
外に食料を取りに出て行ったらしい。
そして母親も帰ってこなかったとの事だ。
ずっと窓もないこの部屋にいたので母親が出て行って
どのくらい経ったか正確ではないが、3日くらい前の事のようだ。
そしてこの部屋にはもうほとんど食料は残ってないようだった。
水については、姉の方が生活魔法を憶えていて
クリエイトウォーターという魔法で水は何とかなっていたらしい。
姉の名はケイト、弟はロルトというようだ。
「とりあえず、おなか空いただろ。俺達と一緒に食事にしよう。」
昼もとうに過ぎていたのでここで食事にする事にした。
ここで火を使うには駄目そうなので、肉はさみパンや果物、スープの残り、
これは少し冷めているが、味的には問題ない。
それを全員に渡した。
「さあ、召し上がれ。」
「いただきましょう。」
マリアが食べるように促す。
アンジェとマリアが食事を口に運ぶのを見て、ケイトとロルトも食べ始めた。
「おいしい。」
「そうね。おいしいね。」
「2人ともゆっくり食べなさいね。」
マリアは優しく2人に言う。
食事が済んだ所で、改めて隠れるに至った経緯を聞いた。
「その日は、お父様もお母様もこの場所に食料を移したり忙しそうにしてました。数日前から街では帝国が攻めてくると噂になっていました。中には、一時的に街を離れる人や食料を確保しようとする人達で街は騒然としてました。お父様はこの地区の顔役として街を離れるわけにはいかなかったので、万が一の時の為にこの隠し部屋に隠れられるように準備していたんだと思います。そして午後になるかならないかという時に街の鐘がけたたましく鳴り響いたんです。外では帝国が攻めてきたと言っている人がいました。わたし達は地下室に行って身を潜めていました。お父様も後から地下室に来ました。その時、帝国が攻めてきたから静かにしていなさいと言われました。2、3日してお父様は外の様子を見てくると出て行きました。ですけどお父様は帰ってきませんでした。お母様と3人で戻ってくるのを待っていました。その後、また2、3日してお母様も様子を確認して食料を探してくると言って出て行きました。でもお母様も戻ってこなくて。あたし達は2人でずっとここにいたんです。外に出るのも怖くて・・・。」
「そうなのね。でももう大丈夫よ。一緒に安全な所にいきましょうね。」
「そうだ。もう一つ聞きたいのだけど、逃げた街の人達はどこへ向かったか分かるかい?」
姉弟は顔を見合わせたがお互い首を横に振った。
「街を逃げた人たちがどこに行ったか分かりません。友達とも会える状況では無くなってしまったので話すらできませんでした。」
申し訳なさそうにケイトは言った。
「そう。いや、良いんだ。悪かったね。」
2人の親は多分魔物に殺されてしまったと思う。
この2人はシスターポーリンの下に連れて行くのが良いだろう。
「それじゃあ、脱出方法についてだけど、ゲートで一旦、沼の畔に出て、その後法国に戻る事にしようと思うんだけど、どうかな。」
「それなんですけど、子供2人を連れての脱出だとかなりゆっくり行かなければならないと思うわ。特にこの2人はもう何日もここに閉じこもったままだったから、体力的にも厳しいのではないかしら。」
そう言われればそうだ。何日もこんな狭い中で生きてきたんだ
体力的に難しいかもしれない。
「どこか馬車でもあれば良いのに。」
アンジェも同じように考えていたらしい。
「馬車か・・・」
馬車ならもしかしたら壊されていないものが街の中にあるかもしれない。
だけど、馬は?
馬は悉く魔物に喰われているだろう。
野生の馬なんていないだろうし、いたとしても扱えなければ意味はない。
いや、待てよ。
そう言えば、実取得のスキルの中に使えそうなものがあったような気がする。
「メニューウインドウオープン。」
周りに聞こえないよう小さい声で囁く。
目の前にメニュー画面が現れた。このスキルの中に使えそうな物・・・
「あった。召喚魔法。」
えーと、なになに。召喚により生物を一定時間呼び出す。
召喚する生物は召喚魔法レベルに依存する。
「ふむふむ。」
召喚される生物は召喚者の意のままに行動させることができる。
召喚時間は最大5時間。
レベル1で償還できる生物は・・・。
「なんだ。あるじゃないか。」
「アーくん?どうしたの?」
全員がこちらを見ている。
「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしてたんだ。脱出する準備をするから、みんなはここで少し休んでてよ。」
「それはいいけど。どうするの?」
「後でのお楽しみって事で。リリーは置いていくから、何か問題があったらリリーを通して連絡してくれ。」
「わかったわ。」
「じゃあ、ちょっと行ってくる。」
隠し部屋から出て家から出る。
「フライ!」
「インビジビリティ!」
馬車は意外とすぐに見つかった。街の宿屋に置かれていた馬車が数台あった。馬はいないが、目的は馬車だけなので問題ない。
一応、予備も含めて程度の良さそうな物を見繕って3台貰っておいた。
当然異空間収納に入れた。
それにしても人のいない街とは、こんなに薄気味悪いものなのか
というくらい不気味だ。
こんな所はさっさと出て行くに限るな。そう思わせる雰囲気が漂っている。
目的も果たしたし、戻る事にした。
「戻ったよ。」
「おかえりー、アーくん。こっちは特に変わった事なかったわよ。」
「それは良かった。出る準備は出来てるかい。」
「バッチリ。」
「よし。」
沼の畔を思い浮かべる。
「ゲート!」
姉弟は魔法の扉を見て怖がったが、マリアが2人をなだめて通過した。
その後にアンジェ、リリー、俺と続く。
畔に戻ってきて、召喚魔法レベル1を取得する。
異空間収納から1台の馬車を出す。
「召喚!」
1頭の馬が召喚された。
「もういっちょ。召喚!」
2頭の馬が召喚され、そこに佇んでいる。
馬車と一緒に持ってきた馬車の付属品のような物も取り出し、
アンジェとマリアに渡す。
2人は手際よく馬車に馬を誘導し、括り付ける。
この馬車はよくある幌が張ってある馬車で
大人、数人が乗っても大丈夫な大きさがある。
馬車の操作はアンジェとマリアに任せて俺は荷台の方に乗る。
全員が乗ったのを確認して馬車は動き出す。
道は悪いが、馬車が通った跡もあり、問題ないだろう。
ただ、普通の道ではないのでそれ程のスピードは出ないようだ。
歩くよりはましだけど。
森を抜けたのは、ほぼ召喚した馬の時間制限ギリギリだった。
日の暮れる間近でもあり、ここで野営する事にした。
本当はゲートで塔に帰る事も考えたが、
こっちに戻る場所を探すのが難しそうだったので
仕方なく野営する事になった。
見張りは、俺、アンジェ、マリアの順に決まった。
見張りの順番には暗黙の了解というものがあるらしい。
俺は一人旅だったから知らなかったが、
魔法を多く使う者が見張りになる場合は最初か最後が望ましいという事だ。
理由は簡単で魔力の回復に一定以上の睡眠が必要とされるからだ。
そのため、途中で起きてしまうとMPが回復しきれなくなるという事が
起こるらしい。
2人にそのことを聞いたら呆れられたが、
「アー君だから、しょうがない」と言われてしまった。
この辺りには野良の魔物などはいない。精々が野生動物くらいだ。
帝国の魔物は街に籠って出てくる様子もないので危険は少ないと思われた。
見張り中索敵にかかったのは、夜行性の小動物やフクロウなどの
夜行性の鳥ばかりだった。
夏とはいえ、焚火は欠かせない。
ただ、火は遠くまで見えてしまう事もあり、
開けた方には馬車を置いて目隠し代わりにする。
森側は木で遠くまで見えないので問題ないだろう。
それにしても、この間大量の人間を倒したのに
レベルが上がらなかった事に疑問を感じた。
もしかして間接的に倒しても経験値は増えないのかもしれない。
多分メテオの魔法の直撃で倒した数は大した事が無かったのだろう。
それとも、レベルの上がるための経験値の量が多くなったせいかもしれない。その場合、今後レベルの上がるスピードが遅くなる可能性もある。
次のレベルアップとその次のレベルアップには十分気をつける様にしよう。
ちなみに次の召喚魔法のレベルを上げると
魔法生物が召喚できるようになるみたいだ。
とは言っても弱い魔法生物ばかり見たいだけど。
数時間後アンジェが起きてきた。
「アーくん。変わるよ。」
「もうそんな時間か。眠気覚ましにお茶入れてあげるよ。」
「ありがとう。」
アンジェは籠手や脛あて等、一部分だけ防具を付けていた。
そして火のそばに座る。
俺は、ハーブを入れたお茶を出してアンジェに渡す。
このハーブティーはスッとした感じになり眠気が覚める効果がある。
眠気を飛ばす効果は瞬間的なモノだが寝起きには丁度良い飲み物だ。
俺はこれから寝るのでハーブティーではなく、白湯を飲むことにした。
コップにお湯を入れるとアンジェがこちらを見ている事に気付いた。
「ん?どうしたの?」
俺は、そんなアンジェに訊ねる。
はじめはジッと黙ったままこちらを見ていたが、
ふと我に返ったようにコップに目を落とした。
「いや、なんでもないから。」
「何でもないって、そんな風には見えなかったけど。」
少し間をおいて、アンジェが切り出す。
「アーくんは、わたし達の事、邪魔になってない?」
「そんなことないよ。なんで?」
「今日、改めて思ったんだぁ。アーくんとわたし達じゃあ、実力に差がありすぎるかもって。わたしもマリアもこの国ではそれなりに強いって自負もあったんだけど、間近で一緒に冒険して気づいたんだ。アーくんが予想以上に凄いんだって。だからもしかしたらわたし達足手まといになってるんじゃないかって感じたの。それで、このままでいいのかなって疑問に思っちゃって。」
「アンジェは俺とは一緒に冒険したくなくなっちゃった?」
「違うの。もちろん、アーくんとは一緒にいたいし、一緒にいろんな所に冒険してみたい。けど、今のわたし達じゃあ実力的にアーくんの邪魔になっちゃうかもって思ったの。」
「・・・もしアンジェ達ではなく、俺に相応しいと思える実力のある冒険者って誰だと思う?」
これはちょっとヤラシイ質問かも。
「・・・わたしの知る限りいないかも。」
少し考えてから、アンジェは答えた。
「実はさ。俺が冒険者になって少しした時に一緒の依頼を受けた冒険者のコがいたんだ。その時はさ、初めてパーティみたいな感じで冒険して楽しかったんだ。冒険と言っても馬車の護衛だけどね。その時は、ああ、俺もこんな感じで仲間と冒険したいなって思ったんだ。そのコとも仲良くなったし、向こうもまた一緒にって言ってくれてたんだけど、ちょっとした事件があってね。結局はそのコは半分冒険者をやめる格好になっちゃったんだよね。その後、エルフとドワーフと一緒に冒険したり、一人で冒険したり、アンジェも覚えてると思うけど、大地の牙やトール達みんなとも冒険したよね。俺的には結構楽しかったんだよ。確かに、冒険者ギルドでもパーティ組むなら同レベルでなんて言ってたけど。俺はそうじゃないって思うんだ。戦闘だけを見れば同レベル帯のメンバーの方が自分の実力を十分発揮できるとは思うけど、戦闘だけが冒険じゃないじゃん。それよりも大事なことは、お互い大切に出来るとか、信用し合えるとか、お互い一緒にいて楽しいかとか、そういった事の方が俺は重要だと思ってるんだよね。確かに戦闘で俺ばかりに頼られても困るけど、それって、困るのは俺だけじゃないと思うんだ。いずれ、その頼り切った人も困る事になると思うんだ。でも俺が一緒に冒険したいって思えるのは、ちゃんと自分で何とかしないといけない時に自分で何とかしようって思っている人達ばっかりだった。アンジェも別に俺に頼ろうと思って仲間になろうって言ったわけじゃないでしょ。」
「もちろん、そんな風には思ってない。ただ、アーくんと一緒にいると楽しいし、ただ一緒にいたいって・・・」
「だったら、いいじゃん。これからもっと一緒に冒険して、お互い無くてはならない関係って素敵だと思うよ。」
「アーくん・・・。ありがとう。わたしはずっと一緒にアーくんといたい。」
「俺もだよ。」
「あは。」
「ははは。」
気恥ずかしさから、思わず2人とも笑ってしまった。
「じゃあ、俺はそろそろ寝かせてもらうよ。」
そう言って立ち上がると、アンジェが突然抱き着いてきた。
「アーくん。ありがとう。おやすみ。」
そしてアンジェはおでこにキスをしてきた。
そしてサッと離れて焚火のそばに座り直した。
思わぬ出来事に一瞬呆然としてしまったけど、
こんな愛情表現は嬉しいと素直に思った。
「うん。おやすみ、アンジェ。」
顔を赤らめながら、テントに入る。中ではマリアが寝ている。
俺はその横に寝そべった。
アンジェは変にまじめだからなぁ。
これで心のつっかえが無くなればいいけど。
「って、マリア?」
「アーくん。アンジェばっかりズルいわよ。」
そう言ってマリアが俺に抱き着いてきた。
「こら、マリア、ちょっ、なんで抱き着くの?」
「わたしもアーくんに慰めて欲しいなぁって。」
「いやいや、何言ってるの?って、おい、マリア、顔近い・・・ちかーい。」
バサッ。
「マリアー。ちょっと何してるの?アーくんから離れなさいよ。」
「ちょっと2人とも落ち着いて。ほら、別のテントで寝てる2人が起きちゃうよ。」
「マリアは寝てなさいよー。」
「いやー、アーくんと寝るもん。アンジェは見張りしてなさいよー」
ぎゃーぎゃー、ばたん、ばたん。
これはもう仕方ない。
「ハイデンスペル・マジックプロテクション!」
「え?(なに?)」
2人は一瞬キョトンとした表情になる。
「ハイデンスペル・スリープ!」
ドサッ。
2人が眠った事により、テントの中は再び静寂の中に包まれた。
そして俺は、辛うじて自分の魔法に抵抗して眠る事はなかったが、
「お、重い・・・。」
2人の体が乗っかっていて身動きが取れないでいた。
その後、テントから這い出た俺は寝ずの番をした事は言うまでもない。




