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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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76日目 聖女

●76日目(グリウス歴863年7月18日)


日が昇る頃に宿を出る。

外はまだ暗く、所々設置されている外灯の明かりが

(ほの)かに光って周りを照らし出している。

そんな中を門まで歩く。


門には門番が待機していて門も完全に閉まっている状態だった。

「よう、アルス君。また出かけるのかい。」

昨日、助け船を出してくれた門番だった。

「お仕事ご苦労様です。昨日はありがとうございました。」

「いやなに、最近は深夜から朝までの夜警がメインでな。昨日はその後の会議で偶々(たまたま)通りかかっただけだよ。それより今日もどこかへ行くのかい。」

「こんなご時世ですからね。色々と依頼が立て続けに入ってくるんですよ。」

「お互い大変だな。ハハハ。」

「大門はまだ開けられないから、こっちから出てくれ。」

そう言って門の横にある小さな鉄の扉を開けて出してくれた。

「気をつけてな。」

「ありがとう。おじさんも気をつけてね。」

手を振りながら別れると、後ろで門が閉まる音が聞こえた。

まずは街道沿いに橋の砦に向かうのではなく、偵察をしようと思う。

その為に今日は夜も明けないうちに出てきたのだ。

向かう先は、ダンジョン付近。

昨日の指摘のとおり、ランゴバルドを牽制(けんせい)の為に襲うのであれば、

それなりの数とそれを集めておく場所が必要だ。

意図的にモンスターホードを引き起こせるのならば別だが、

人為的に集めて襲わせるのならばそれなりに準備も必要だし、

その為の拠点も必要だ。

先般、大地の牙と戦闘になったのが帝国側の人間ならば

もしかすると今回の為に偵察と制圧を兼ねて

やってきた者達かもしれない。

現状、ランゴバルドには戦力的に調査できる者はいない。

俺ならば、2時間もあれば到着できるだろう。

軽く偵察をして何もなければそれでよし。

もし、魔物がいるようならば殲滅(せんめつ)しておかないと

相手の目論見(もくろみ)どおりに進むことになるだろう。

「リリー、行くよ。」

リリーが服の中に潜り込んだのを確かめてから魔法を発動させる。

「フライ!」

「ミサイルプロテクション!」

一気に上空へと上がる。

「テレポート!」


予定通りにダンジョンまであと数kmの所までやってきた。

ここからは、慎重(しんちょう)に進みたい。

索敵を行い付近に魔物がいない事を確認した所で

木の上すれすれに飛んで近づいていく。

もうすぐ、放棄(ほうき)された砦付近に近づく。

すると、やはりというか魔物の反応が多数確認できた。

一旦地上に降りて、防御魔法をかけ直す。

更にインビジビリティの魔法で姿も消した。

索敵は500m先までしか分からないが、

砦の内外に正確には分からないが、200~300位の魔物が確認できた。

「ビンゴ。あまり嬉しくないけどね。さてさて、どんなのがいるのかな?」

索敵をマップ化させてマップに表示された魔物を適当に調べていく。

どうやら、メインはゴブリンで他にもオークやリザードマン、

インプなど様々な魔物がいる。

その中でも格段に強そうな魔物はレッサーバンパイアが3体、

ダークエルフが10体、人間が5人、

これが砦の建物の中にいるのが分かった。

一体どこからこんなに魔物を集めたのか不思議と言わざるを得ない。

しかし、今はまず、この数を何とかしたい。

今持っている魔法で範囲魔法といえばストーム系が一番だろう。

今なら魔力の燃費も悪くない。

まずは、防御魔法から発動する。

「ディテクトエビル!」

「ディテクトインビジブル!」 

「プロテクションフロムファイア!」

「プロテクションフロムコールド!」

「プロテクションフロムエビル!」

「マジックプロテクション!」

「マジックシールド!」

「アースシールド!」

「プロテクションシールド!」

「ミサイルプロテクション!」

「能力強化-全」

続いて攻撃魔法を発動させる。

「ダブルスペル・ワイデンスペル・ウインドストーム!」

2つのいつもより大きな竜巻が砦の近くで巻き起こる。

しかもただの竜巻ではない。以前出したウインドストームの二回り程大きい。

竜巻に巻き込まれた者は風の刃で切り()かれていく。

突然起こった事態に、周囲のモンスターがパニック状態に(おちい)っている。

その間にMP回復ポーションを飲む。MPが多少回復したところで、

更に魔法を発動させる。

「ダブルスペル・ワイデンスペル・ウインドストーム!」

合計4つの竜巻が襲い掛かりモンスターはあっという間に激減していった。

場所が場所だけにモンスター達が固まっていた事で被害は甚大(じんだい)となった。

砦の建物の外にいたモンスターは、ほぼ全滅。

建物にいたレッサーバンパイアとダークエルフ、人間はまだ無事の様だ。

しかし、日もすでに昇りかけている。

レッサーバンパイアは悪戯(いたずら)に動くことも叶わないだろう。

砦の建物もウインドストームで半壊状態である。

()()うの(てい)で出てきたダークエルフと人間に向かって再度攻撃を仕掛ける。

「ダブルスペル・ハイデンスペル・ライトニングストライク!」

轟音(ごうおん)と共に2筋の光が2人のダークエルフに直撃する。

一瞬時が止まったように2人は動かなくなり、そのまま倒れこんだ。

そして近くにいた人間ともう一人のダークエルフも

その余波(よは)を喰らって致命傷ではないものの火傷(やけど)を負っている。

そして、レッサーバンパイアは建物の陰に隠れて

日が当たらないよう注意している。

ダークエルフの残りの1人は逃げ出すように走り出した。

「ライトニングストライク!」

先程のダークエルフ同様、落雷が直撃した後、動かなくなった。

人間の5人は今だ状況を把握しておらず、

倒れた仲間を起こそうとお互い手を貸しあっている。

そして何かを叫んで、周りにいるモンスターに

助けを求めているような感じだった。

しかし、モンスターのほとんどは壊滅しており、

生き残っているモンスターも虫の息という有様だった。

「ダブルスペル・ファイアーボール!」

次の瞬間、人間とレッサーバンパイアの2か所に

大きな火の玉が飛んできた。

そして巻き込まれるや否やその火の玉は大爆発をする。

一瞬にして人間は倒れてしまった。

そしてレッサーバンパイアもその爆発で吹き飛ばされ、

辛うじて生き残ったのも束の間、

太陽の光を浴びて絶命の叫びをあげながら灰塵(はいじん)と化していった。


「さて、後始末はどうしようか。」

放置してアンデッドになるのは避けたい。

仕方ないので、異空間収納で回収していく。

勿論(もちろん)、テイムしていない生きている者は収納できないので

その場で(とど)めを刺す。

回収だけで1時間以上かかってしまった。

ちなみにレッサーバンパイアの所には魔石が落ちていたので回収する。

ここで長居は禁物だ。すぐに橋の砦に向かってテレポートで離脱する。


橋の砦に到着したのは丁度昼頃になっていた。

到着早々、司令官室に通される。

どうやら昨日のうちに連絡が入っていたようだ。

「君がアルス君かね。私はこの砦の司令官を務めているバッシュだ。よろしく頼む。」

「こちらこそ、バッシュ司令官さん。」

「それにしても少し遅かったんじゃないか。もっと早く来るものだと思っていたのだが。」

「すみません。ちょっと寄り道していたもので、遅くなりました。」

「まあ、君の行動には制限を付けるなと言われているからな。あえて理由は聞くまい。それで、いつ出発する?」

「食事を済ませたらすぐにでも出発しますよ。」

「そうか、では、食堂に案内させよう。」

「あっ、そうだ。ギルド長に伝言をお願いしたいのですけど。出来ますか?」

「勿論。伝令は定期的に出ているからな。それで、なんて伝えるんだ。」

「森の時間は稼いだ。再起できないくらいにはしたけど、増援も考えられるので気をつけて下さいとお願いします。」

「良く分からんが、そう伝えよう。」

食堂に案内されると、兵士や冒険者でごった返していた。

「随分、混んでますね。」

「仕方ないです。即席の砦なんでこんなものですよ。」

案内してくれた兵士の方が答えてくれる。

「あそこで、食事を受け取って好きな席で食べて下さい。出発するのであれば、門の所まで行っていただければ開門しますのでいつでも来てください。私は仕事に戻りますので、ご自由に過ごしてください。」

そう言って、案内の兵士は去って行った。

言われた通り、食事を受け取り、適当な席で食事を済ます。

正直あまり美味しくはない。

こんな所で美食も何もないけど腹が(ふく)れれば問題ないのだろう。

時間も大してとれる状況でもないので、すぐに門まで行く事にした。

門を出ると、すぐ先には橋が見える。

通常であれば橋を使った防衛線、そして砦を利用した防衛線と

2段構えの防衛なので難攻な砦なのだろうが

果たしてこの世界でもそうなのだろうかと疑問に思ってしまう。

しかし、今は、南に向かうのを急がないといけない。

コンパスで南を確認して南へ進んでいく。

砦から離れた所で連続テレポートで一気に南下する。

南下といっても実際は川沿いを進んでいく感じになる。

小1時間程で海岸線に出る事が出来た。

ここで小休止する。

ステータスを確認するとレベルが上がっていた。

そしてSP残が6978。

そしてこのSPを使って限界突破スキルを一気にLV10まで上げた。

残978。

これで、レベルアップ時の取りこぼしは今後無くなるだろう。


休憩の後は、海岸線を主体に空中から地形を確認しつつ進んでいこう。

それというのも道が無いからだ。

辺り一面、草が生えているだけの何もない所だ。

目印になりそうな木や岩などを見つけておきたい。

草の丈は今の俺の身長並みにあるので、

今後補給物資を運ぶにしてもかなり労力がかかりそうだ。

しかも待ち伏せし放題じゃないか。

そう思いながら飛行していると、索敵に反応があった。

少し内陸部の方だが、索敵範囲にかすめた感じだった。

一旦停止し、索敵反応の方へ向かう。

すると5体の魔物の反応を見つけた。

魔物の名はサーベルタイガー。かなり凶悪な魔物だ。

下手をするとBランクの冒険者でも被害が出るほどの強さだ。

それが5体とは。何にしても放置は得策じゃない。

見つからないよう上空から一気にケリをつけたい。

そう思い、上空へ上がっていく。

そして相手の真上に来た段階で降下する。

魔法の射程内に入った所で、まだ使った事が無い魔法を試す事にした。

「ハイデンスペル・スタンクラウド!」

するとサーベルタイガーの周囲に少し黄色みがかった空気が一気に充満した。

一瞬サーベルタイガーは反応するも

その空気を吸い込んだ事でバタバタと倒れていった。

5体全てが麻痺(まひ)して倒れたのを確認すると1体1体止めを刺していく。

うーん、強力なのは確かだけど、麻痺させるだけだから

結局止めは別の方法でしないといけないのが難点かな。

それでも強力な魔物をこれだけ簡単に仕留められれば上出来と言えるだろう。

しかし、通常サーベルタイガーは単体で動き回るモンスターだと

思っていたけど、これも帝国の仕業なのかな?

サーベルタイガーを回収して、急ぎ港町へ向かった。


日もだいぶ傾いてき始めた頃、ようやく目的地の近くまで到着した。

飛んで行くわけにもいかないので、歩いて近づいていく。

索敵で周囲を取り囲むように人がいるのが分かる。

念の為、防御魔法を展開させておく。

完全に取り囲まれた瞬間、

「止まれ。」

前方から姿を現した者が叫んだ。

俺はその指示のまま立ち止まる。

「何者だ?」

その誰何(すいか)の声に答える。

「俺はアルス。冒険者だ。そしてジュノー王国の使いの者だ。ここの指導者に書状を渡しに来た。」

「貴様のような子供が冒険者だと?しかも王国の使いだと?嘘を吐くな。」

「書状を確認すればいいだろう。」

そう言って、ベルトポーチから取り出したように見せかけ、

異空間収納から書状を取り出す。

書状を手に持って高く掲げて見せつける。

するとその声を掛けてきた者の横にいた者が近づいてくる。

そして、手の書状をサッと受け取る。

両面を見てそのまま持って声を掛けた者の所へ戻って行った。

書状を渡してそのリーダーらしき者が確認する。

「本物っぽいな。分かった。では案内するついて来い。」

そう言って、歩き出す。俺も距離を保ったまま歩き出す。

すると隠れていた10数人が一斉に立ち上がり、囲むように付いてきた。

街に入り、一度身体検査をされて、そのまま一つの屋敷に通される。

「武器はここで一旦預けてくれ。」

そう言われて、腰に下げたショートソードとワンドを預ける。

扉をノックし、開ける。

すでに連絡が行っていたのであろう、中には数人の人間が待ち構えていた。

「お待ちしていました。アルス殿。」

そこには見知った顔があった。

「シスター・ポーリン?ともしかしてユミコ?」

奥の大きな椅子の横に立っていたのは

岬の教会で会ったシスター・ポーリンだった。

そしてその横で座っていたのは

多少面影が残っていたものの成長したユミコに似た人物だった。


「ビックリされましたか?この間は助けて頂いたのにお礼も言えずに大変失礼しました。私です、ユミコです。」

ユミコはあった当初は5歳程度の子供だったように記憶していたが、

今はそれより少し成長して見た目俺と同じくらいの年齢に見えた。

「貴方様がいらっしゃるのは、ユミコ様のお力で分かっておりました。」

シスター・ポーリンが目を白黒させている俺に向かって説明した。

「一体、どういう事?」

ようやく出た言葉がこれである。

「それは後ほど説明いたしましょう。」

シスター・ポーリンが答える。

先程のリーダー格の者が書状をポーリンに渡す。

裏の蝋封(ろうふう)を確認して、中を(あらた)める。

そしてその書状をユミコにも見せる。

「ジュノー王国の使者アルス殿。ご厚意感謝いたします。我々もジュノー王国と協調して戦いましょう。」

「ありがとうございます。それで、援助物資はどこにお出ししましょうか。」

一応、礼儀正しく受け答えする。

「この場で構いません。早速出して頂けますか。」

「わかりました。」

そう答えて、異空間収納から武器や食料の物資を全て出す。

周囲からおおーという歓声があがる。

「では、この物資は有難く頂戴いたします。」

ユミコが手を上げると近くに控えていた者達が物資を部屋の外へ運び出す。

運び終わった後、ユミコがここの参列している者に宣言する。

「我々は、ジュノー王国からの援助を受け、国を取り戻すことになりました。すぐに、ジュノー王国と連絡できるよう準備を進めなさい。そして提供された武器を配布し、部隊の再編を進めるよう、急いでください。他の者も一度下がる様に。」

そう言われて、ここにいた全ての者達が部屋を出て行った。

残ったのは俺とユミコとシスター・ポーリンだけとなった。


「それで、どういう事なのかな?」

全員が出払ったのを確認して()いてみた。

「順を追って説明します。」

ユミコはにこやかに微笑みながら話し始めた。

「アルス様が去ったその日の夜半に眠りの中で私はこの世界の主神であるツクヨミ様に再開しました。私と再会した事で、私や他の転生者に何が起こったのかをツクヨミ様は知る事が出来たようです。ツクヨミ様が何故、この世界の事なのに分からない事が発生したのかは、異界の神の仕業であることも説明されました。その神はこの世界では邪神と同列に置かれるモノで盗みや隠蔽(いんぺい)に長けた異界の神らしいです。なぜ、異界の神がこの世界に現れたのかは謎のままですが、ツクヨミ様はベルガド帝国でこの世界に準じない力を感じたと言っていました。そして、今いる帝国の皇帝はこの世界の者ではなく、また、ツクヨミ様が呼ばれた転生者でもないようなのです。よくは分からないのですが、ツクヨミ様が直接介入すると因果律が崩壊してこの世界も崩壊の()き目を見るので、ツクヨミ様が直接手を出されるのは、この世界が崩壊するような事態でもない限りできないという事でした。しかし、現状、異界の神とはいえ、神に準じた力を持った者が跋扈(ばっこ)しているのは、いずれ因果律の崩壊に近づいてしまう事も危惧されていました。そこで私は特別な使命と共に再び加護を授かりました。私がダンジョンの魔核になってしまったのは邪神の呪いに似た力を受けてなったものだったのですが、この世界に転生する前に受けた加護のおかげで、その呪いは完全なものにはならなかったのです。シスター・ポーリンの解呪の儀式と再び受けた加護のおかげで、呪いの力は完全に霧散(むさん)しました。そして加護のおかげで、体と魔力の調整も行われて、私は一夜にしてこの通りの姿になったのです。」

「なるほど、なんとなく理解した。それでシスター・ポーリン、あなたは一体何者?」

この世界では見た事もないスキルなのか魔法なのか分からないが、

シスター・ポーリンはそういった力を持っているのが不思議であった。

「私の祖父と祖母は多分アルス様と同じ世界から来た者です。2人は英雄と呼ばれた存在で普通の人とは違って300年ほど生きたそうです。そのような特殊な人間をハイヒューマンと呼ぶこともあります。そして私の母はその英雄の娘でこの世界の人間と結婚しました。母には特別な力はなかったようですが、私は祖父や祖母の力の一端が発現しました。儀式魔法による解呪もその一つです。」

「そうだったのか。転生者の子孫か・・・。」

「私の事よりも、ユミコ様の話をお聞きください。」

シスター・ポーリンは話を戻すように促した。

「先程も言ったように私は特別な使命を受けるのと引き換えに強力な加護を授かりました。私の使命は聖女として邪神の活動を抑えること。帝国に存在しているかもしれない邪神と対峙する為にこの国をまとめ上げてこれ以上被害を出さないようにすること。そしてアルス様に協力する事。これが私の使命です。」

「良く分からないな。神がたかだか人間の国1つをそれほど重要視するものなのか?国の興亡なんて日常茶飯事ではないのか?」

「ツクヨミ様(いわ)く、帝国の皇帝は邪神と何らかの繋がりがあると見ています。その皇帝の力に対抗するには相手が国である以上、個人の力では対抗するのは難しいと見ています。私に与えられた事は国としての帝国を抑える事。そして、皇帝と直接対峙できるのは、アルス様、あなた以外には現状いないという事。邪神は帝国を利用して力を蓄えているはずです。それを()ぐのも重要な役割なのです。」

「国の事は何となく理解した。けど、なんで、俺が皇帝と対峙しないといけないんだ?」

「アルス様、失礼ですが、記憶はありますか?神と話した事、前世の事、あなたの能力が何のために与えられたのか、憶えていらっしゃいますか?」

「・・・・」

確かに前世の記憶は断片的だし、神と話した?そんな記憶は全くない。

俺のチートな能力も何かの為に与えられたのか?

思い出そうとしても、頭の中に(もや)が掛かったような

霧で前が見えないようなもどかしさしか出て来ない。

「あなたも転生直前に邪神に邪魔されたのです。ただ、ツクヨミ様もある程度想定していたようで、あなたに内緒で転生が邪魔されないように手を打っていたのです。しかし、邪神の力は思った以上に強く、結果として転生には成功しましたが、記憶が封印されたのとツクヨミ様との接触が困難になってしまったのです。ツクヨミ様曰く、アルス様にメッセージを伝えられたのは、一度きりの偶然だけだったとおっしゃっていました。」

「・・・ああ、あの時の・・・・確か教会を目指す切欠(きっかけ)になった謎の声か。」

「ツクヨミ様は何かの理由で一時的に邪神の力が弱まったせいだと考えています。」

「それはいいとして、俺に邪神なんか倒せると本当に考えているのかツクヨミ様とやらは。」

「いくらアルス様が強力であると言っても邪神を直接倒すのは無理でしょう。曲がりなりにも神ですから。」

「じゃあ、どうするんだ?」

「邪神に力を与えない事です。神の力が強くなるのは、人々の祈りであったり、生贄(いけにえ)だったり、もっと簡単に言うならば、魔力の供給を止めてしまえばよいのです。そうすれば、神としての力を発揮できなくなり、神としての存在力も失っていくでしょう。結果、邪神は神域にはいられなくなり、その姿も下位のものに転落していくとの事です。」

「つまり、魔力の供給がなくなれば、神でなくなり、ランクが下がって、何か別の存在になるという事でいいのか?」

「大まかにそのように(とら)えて頂ければ大丈夫です。」

「それじゃあ、神と戦う必要はないという事でいいんだな。」

「神とはいえ、一度世界に庇護(ひご)されたものを好きには出来ません。」

「ふーん、良く分からないけど、まあいっか。それで、俺に何をさせようというのかな?」

「何をするかはアルス様次第です。アルス様は、一度皇帝とやり合っていますよね。しかし、皇帝はその後、邪神の協力のもとに新たな力を持ったとツクヨミ様は感じています。つまり、皇帝を倒して帝国を打倒すれば、邪神の(いしづえ)はなくなり、力を失っていくと考えています。」

「皇帝とやり合った?いつ?そんな奴・・・って、もしかしてダンジョン砦の戦いの時のあのグレートソードを持っていた奴か。」

「そうです。その男が皇帝です。」

「っていうか、何でそんな事知ってるんだ?」

「女神さまはいつでも見ていらっしゃいます。」

「女神?ツクヨミ様って女神なの?」

「あれっ、言いませんでしたか。言ってなくても存じ上げているものと思っていました。」

「初耳だ。っていうかそんなことは今はどうでもいいよ。」

「あの時の奴が皇帝だったとは。惜しいことしたな。もし倒していれば歴史が変わっていたかもな。」

「はい、ツクヨミ様も残念がっていました。唯一のチャンスだったようです。」

「唯一?」

「今の皇帝は人ではないと言えるような力を持ってしまいました。そして、その動機はアルス様です。皇帝はアルス様を完全に敵視しています。」

「マジか。」

「はい、マジです。」

「それで、これからどうするんだ。」

「まずは失地を回復する所から始めます。」

「ただ、今日の所は、だいぶお疲れのようですので、また明日にでもお話ししましょう。」

「ああ、そうだな。ちょっと情報が多すぎて整理が付かなくなっているのも事実だ。今日の所は休ませてもらおうか。」

「それでは、部屋へご案内させます。」

シスター・ポーリンがそう言って、パンパンと手を叩くと、扉が開き、

侍女(じじょ)が現れて部屋へ案内してくれた。


「なんか疲れたな。」

ベッドに横たわり、(つぶ)いた。

部屋には軽食と果物が用意されていて、

リリーは勝手に果物を食べ始めていた。

そういえば、今日倒した魔物はどんな感じだろう。

異空間収納の中で解体を進めようとステータスを開けると

サーベルタイガーを倒したことで更にレベルが上がっていた。

限界突破のスキルのおかげでSPも12000という

破格(はかく)のポイントが入った。

このポイントを使って、光、風魔法をLv10の最大まで上げて、

火魔法をLv9、土、水、闇をLV8、HP自動回復をLv7、

剣術をLv8まで上げた。

これで更に色々な魔法が使えるようになった。

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― 新着の感想 ―
ランゴバルドからダンジョンまでの15キロなら一般人のランニング程度の速度でも1時間あればつけるのにフライとテレポートがあって2時間はちょっと不自然かな。 捕らえてチャームで情報を聞き出せばいいのにな…
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