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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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67日目 相談と卵の売却先

●67日目(グリウス歴863年7月9日)


午後一番にヒュリアに会うために王都へ向けて早朝より出発する。

理由は、昨日見つけた塔の所有権について

可能であれば欲しいと思ったからだ。

何故そんな所を欲しがるのかと言えば、いくつか理由はある。

まず、一つ目は秘密基地的な隠れ家なんてかっこいいじゃないか。

それは置いといて、身の安全を守りやすいというのが、第一だ。

仮に追われる身となった場合を考えると、

普通の街の家や地上にある家では簡単に襲われてしまう。

けれど、水中にあるのならば、そう簡単に侵入を許すこともないし

侵入されても極少数になるだろう。

そう考えるとこの塔はうってつけなのだ。

それに自動防御付きだし、あの縦読みのヒントを撤去すれば、なお安全だ。

位置的にエルフ王国の領海内と考えられるので、

エルフ王国には了解を取らないといけないだろう。

その為にヒュリアと相談するのが良いと考えたのだ。


帰りは、飛行と瞬間移動を駆使(くし)して帰る事にした。

王都での飛行は良くないようだが、それ以外では問題ないと確認できたので、

あえて歩いて帰るという選択肢は無くなった。

実は長距離のテレポートができるグレートテレポートという魔法を

使う事もできるのだが、転移先のイメージがはっきりとしていないと

失敗する恐れがあるという危険な魔法だ。

この世界で良くなじんだ場所というのは、今の俺には1か所もないのだ。

それなので、短距離のテレポートの呪文で移動しなければならない。

各国家の中に1か所はテレポート用の拠点を得るというのを

1つの目標にしても良いかもしれない。


途中MP回復の為に休憩を何回か(はさ)みながらではあったが、

お昼前には王都へ戻る事が出来た。

到着早々、城へ行き、ヒュリアに面会を申し込む。

「やあ、お帰りアルス。随分早く戻ってきたのね。港町はどうだったの。」

「すごく良かった。それで、ヒュリアに相談したい事が出来て急いで戻ってきたんだ。」

「急ぎの相談なの?何かしら?」

「実はね、港町で海底の塔を見てきたんだけど。あの塔が欲しくなっちゃったんだ。どうすれば、所有権を主張できるようになるのか教えて欲しいんだ。」

「随分、変な物に興味を持ったのね。しかも所有したいなんて。そうね、私の方でもその塔について調べたわ。昔、人間の魔術師が住んでいたという塔で現在は放置されているという事ね。魔術師がいなくなってから誰もその塔に入る事も所有を主張する者もいなかったので、原則的にはまだいなくなった魔術師の所有という事になるわね。だけど、その魔術師は正確には分からないけど、5、600年前に行方不明という事だから、空き家と言っても問題ないわね。

あの港町の名前はシールン市というのだけど、市長が認定すれば空き家と認められて所有が許されると思うわ。一応、所得する際には税金がかかるけれど、卵を売ったお金があれば十分足りるはずよ。念の為、王に確認と推薦を(もら)っておいてあげるから、明日また、来てちょうだい。」

「何から何まで助かるよ、ヒュリア。いつもありがとう。ヒュリアと知り合えた事嬉しいよ。」

「そ、そんな事ないわよ。まだ、所有が許されると決まったわけじゃないんだから。それじゃあ、すぐに謁見の予約をしないといけないから、また、明日。」

「うん。また、明日。」

手を振りながら、ヒュリアと別れた。


ヒュリアと別れてから、軽く昼食を済ませて、テイマー協会に向かった。

「すみません。アルスと言いますが、アマンダ会長はいますか?」

テイマー協会の受付のエルフに訊く。

「少々お待ちください。」

テイマー協会の室内は、冒険者ギルドと違って、

人でごった返しているような事は無く、数人の来客がある程度みたいだ。

「お待たせしました。こちらへどうぞ。」

そういって、案内してくれた。

「失礼します。」

案内された部屋に入ると、アマンダ会長が書類仕事をしていた。

「掛けて待っていてくれないか。」

そう言って、手早く書類にサインをしたり、目を通していたりした。

待っていると、お茶が運ばれてきたので、飲んで待っている。

「待たせたね。アルス君。礼の卵の売却の件だけど、既に10件の候補は選び終わっているよ。もし時間があるのなら見ていくかい?」

「そうですね。特に予定もないですし、問題ないですよ。」

そう言って、売却希望の書面を見せてもらった。

書面には氏名や交換に際しての物品名、簡単な人物評定(ひょうてい)などが

描かれてあった。

全て目を通してみたが、単純にアマンダ会長に聞いた方が早そうだ。

「アマンダさんは、どの人と取引した方が良いと思いますか?」

ざっくりと訊いてみる。

「何を基準に決めたいのか知らないけど、一番価値の高いのは、これとこれじゃないかしら。」

「実は、今度お金が必要になるかもしれないので、なるべく高く換金できる物がいいかなと思ってます。」

「急にどうしたの?何か大きな買い物かしら?それとも結納金(ゆいのうきん)かしら?」

まったく。この人は何を言っているのやら。

「そんなんじゃないですよ。実はシールン市でしたっけ?あそこの海底にある塔を所有したくて、許可が出たら税金が必要なんです。その為のお金です。」

「なーんだ。そんな事か。心配しなくてもこのリストにある物は全てそれ以上の価値がある物だから安心して。でも、そうね。換金を考えているなら、この人なんか、どうかしら。他のは、物の価値としては高い物が多いけれど、それを売却する事を考えると、ちゃんと売却できるかとか、売却時に発生する手数料等で結構目減(めべ)りしてしまう物も多いのよ。その点、こちらは、お金そのものなので、売却後の事を考えたら、一番実入りが多いはずよ。」

どれどれ?

「えーと、買い取ってくれる人は、エリアルド・カナンさんで、購入希望価格は白金貨200枚」

えーと、白金貨1枚は約10万円だから、200枚という事は2千万円?

「え?」

卵1個に2千万円?マジか。

「こんなに高価なんですか?」

「これが普通よ。卵も状態が良いから孵化(ふか)の可能性が高いのもあるけれど。」

「それと、このエリアルドさんってどこかで聞いた事があるような気がするんですけど、どこだっけかな?」

「アルス君、その人はこの国の王様よ。」

「えっ王様?なんで?」

「モンスターの卵の売買は王様の許可が必要なの。形式上ね。だから、王様の耳に入っても不思議ではないのよ。購入希望の理由を見ると、繁殖(はんしょく)させてテイマー部隊の戦力向上を目指すようね。巨人族とも対等に戦える戦力だからね。今回の襲撃事件での軍備拡張(かくちょう)と言ったところかしら。」

「王様から購入希望なんて来たら断りずらいんじゃない?」

「そんなことはないわよ。テイマー協会は一応国からは独立した組織だし。法的にも強制力は働かないわよ。別にアルス君が他の人に売却しても問題ないわよ。それに今のアルス君には渡りに船じゃないかしら。いっそ、この金額と塔の所有権を認めてもらえる許可も一緒に要求したらどう?」

「うーん。確かにそうすれば、塔を自分の物にしやすくなるのかな?わかりました。取引先は王様にします。」

「あら、勧めたのはこっちだけど、簡単に決めてしまっていいのかしら?」

「正直、誰に売るか決める判断材料は持ってませんし、アマンダさんが選んだリストですから、誰を選んでも問題ないと考えてます。問題があれば、選考の段階で(はじ)いていると思いますし。」

「信用してくれて嬉しいわ。じゃあ、お礼に私の事をテイムしてくれないかしら?」

「しませんよ。冗談はやめて下さい。」

「あはは、ざーんねん。それじゃあ、すぐに連絡して明日、取引できるように手配しておくわ。悪いんだけど、明日は朝、開所してすぐに来てくれるかしら?もちろん、卵を持ってね。」

「わかりました。」


取り敢えず、王都での予定は全て済んでしまった。

一旦宿の手配を済ませてから、街を散策(さんさく)する事にする。

露店で野菜を売っているお店があったので、

気になっていたトウモロコシの事を()いてみる。

「こんにちは。」

「はい、いらっしゃい。」

陽気そうなエルフのおじさん、年齢は相変わらず不詳(ふしょう)だけど、に声を掛ける。

売り物の中にやはりトウモロコシは置いていないようだ。

「ちょっと、お(うかが)いしたいのですが、こういった物は置いていないのでしょうか。」

と、バッグの中からトウモロコシを出した。

勿論(もちろん)、実際にはバッグの中ではなく、異空間収納からだけども。

「ああ、トウモロコシかい?それは売ってないかな。」

「何で売ってないんですか?」

「だって、それって飼料だろ。だったら、そういう店に行かないとないぞ。なんなら、売ってる店教えようか。」

売ってはいるが、やはり食べられていないものだった。

ただし、テイムモンスターや家畜の飼料としてのみ流通しているようだ。

教えてもらった店に向かう事にした。

店というより倉庫のような所だ。

「ごめん下さい。」

「はいはい。ただいま。」

若そうなエルフの青年が出てきた。こちらを見て不思議そうな顔をする。

「何か用ですか?」

「こちらにトウモロコシがあるって聞いてきたんですけど。」

「ああ、あるけど。新規の取引かい?どこの牧場なの?」

「いや、ただの食料として買いに来たんですけど。」

「え?食料?トウモロコシだよ。まあいいけど、でも小売りはしていないんだよね。」

「それなりの量でないと売れないよ。こっちも商売だし。」

「どれくらいの量ですか?」

「だいたい1000本位になるかな?あそこに見える木箱で3つ分で、金貨2枚だよ。」

そう言って奥を指さすと大きい木箱というか、

コンテナに近い気がするが、それが3箱らしい。

それで金貨2枚は非常に安いのだが。

念のため現物を見せてもらう事にした。

「これが、うちで売ってるトウモロコシだよ。」

そう言って見せられたのは、少し、干からびたトウモロコシだった。

「俺が欲しいのは、こんな感じの物なんだけど。」

そう言って持っているトウモロコシを見せる。

「随分、新鮮なやつだね。でもうちが扱ってるのは少し乾燥させたやつだからね。でないとすぐに腐っちゃうから、そんな新鮮な物は取り扱ってないよ。まあ、うちが仕入れてすぐならなんとかなるかもしれないけど。でも面倒な仕事は悪いけどお断りさせてもらうよ。ちなみにどこ行っても難しいと思うよ。どうしても欲しいなら農家に掛け合うしかないと思うけど、こっちも取引契約があるから仕入れ先は教えられないんだ。」

「そうですか。わかりました。」

なるほど、確かに俺が見つけたトウモロコシの群生の中で

食べられそうな物は10本ほどだった。

それ以外は、まだ、実が成長中だったり、()からび始めていたりで、

食べるための作物としては品種改良が必要なのかもしれない。

見つけたのを幸運として、当面は(あきら)めよう。

時間も遅くなったので、今日は、宿に戻って明日に備えて休んでおこう。

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