表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/276

103日目-その2 シグルド

使用人について行くと、奥まった廊下の突き当りにある扉の前に来た。

その扉を開けると、その先は下りの階段になっていた。

地下室もあるのかと案内の使用人に訊く。

案内人曰く、「地下部屋はいくつかございます。主に内密の会合などに使用されております。」と答えた。

階段は思ったよりも明るく、廊下の方が薄暗く感じるほどだった。

階段を下りきると、また扉になっていた。

使用人は扉をノックすると、中から入れとの声が聞こえてきた。

扉が開き、中へ入る。

中は10数人で会議ができそうな長テーブルと椅子が設えてあり、

奥の椅子にはシグルドと彼の警護と思われる軽装の鎧を着た男2人が

シグルドの後ろに立っていた。

更に奥にはメイドと思われる女性2人が飲み物の準備をしている所だった。

「ようこそ、アルス殿。直接話すのは初めてだったかな。私はシグルドと申します。そちらにお掛け下さい。」

そう言って、シグルドの向かい側の席を勧めた。

勧められた席まで来て、こちらも挨拶をする。

「そうですね。話すのは初めてではないでしょうか。アルスです。以後、お見知りおきを。」

簡単に挨拶を済ませ席に座る。

「要件を話す前に確認したい。アルス殿は、ホフマン殿の護衛という事でよろしかったかな。」

「残念ながら今は護衛ではございません。正確に言うならば私どもはホフマン伯爵をここまで護衛する依頼を受けております。ですので、依頼は完了という事になっておりますが、今は、帰国時の護衛を受けるか、この後滞在中の護衛を含めて依頼を受けるか交渉中という事です。ただ、今現在ホフマン伯爵を護衛している冒険者とは旧知の仲でホフマン伯爵のご厚意でしばらく滞在させてもらっています。もし、交渉が決裂した場合は、すぐにこちらを引き払い、もう一つの用を済ませ次第、帰国する事になるでしょう。」

「なるほど、では、今現在あなた方はフリーの状態だという訳ですね。」

「そうなりますね。」

「それでもう一つの要件とは?」

「私の妻たちの状況はご存じでしょう。彼女たちが挨拶もできずに去った事が心残りという事でその挨拶に伺う事を予定しております。」

「そうですか。」

シグルドは少し考えてから、続けた。

「あなた方の状況は理解しました。それでもう一つ伺わせて頂きたいのですが、あなた方の噂について知っておられますか?」

その質問をしている時にメイド達はそれぞれの前に飲み物を出した。

そして、メイド達は部屋の奥にある控えの間に引き下がっていった。

メイド達が部屋を出た後で話を再開する。

「噂と言うと、どのような噂でしょうか?」

「いえ、口さがない貴族達の噂ですが、アルス殿がアメリア女王を娶るのではないかという噂です。」

いきなり核心部分に触れてきたか。

「私が女王を娶るですか。これは異なことを。私が娶るのではなく、女王が私を婿に迎えるの間違いじゃないですかね。この国では、女王より一介の冒険者の方が格上なのでしょうか。そもそも私の方から女王に対して結婚を申し入れる事は不敬にあたると思いますが。」

相手の様子を探る意味でも相手の言葉尻を指摘した。

これは単なる屁理屈に近いものだが。

「確かにそうですな。これは私の質問の仕方がおかしかったようです。私がお訊きしたいのは貴方と女王が結婚するかもしれないという噂をあなたがどうお考えか訊きたかったのです。」

「そうですか。女王陛下がどのようなお考えかは、私には測りかねます。何せ、まだ数えるほどしかお目にかかっておりませんので。それで、私がどう思っているかというご質問ですね。一言で言えば、どうも思っていない、でしょうか。女王陛下からそのような話は一切ありませんし、他人の無責任な噂話に付き合っていられる程、私も暇ではないのでね。」

「つまりそれは、貴方に結婚する意志はないという事でよろしいのですかな。」

「どうも先程から話が噛み合っていない気がしますが、この質問には意味がないと先程からご説明させて頂いております。女王陛下が結婚するにあたって、まず女王陛下の意向が重要じゃないんですか。私にその意思があるかないかなど関係ないのでは?この国では女王陛下の意向は最優先事項ではないのですか?それともまさかとは思いますが他に誰か意思決定者でもいるんですかね?」

「まさか。女王陛下の意向が最優先なのは当たり前です。しかし、それが国の為にならない場合は、配下として女王を諫める事も必要ですので、貴方にその意思があるかどうかの確認をする必要があると感じたまでです。」

「では、お答えします。今は全く考えていません。実際そのような話が正式にもしくは本人からあれば考えもしますが無いものを考えるほど、夢想家ではないのですよ。他にご質問は?」

あえて、この質問にケリをつけるために言った。

俺からこの質問に言質を取りたかったのだろうが、

馬鹿正直に答えてやる義務はない。

俺ははぐらかすだけはぐらかした。

「いえ、質問はこれだけですが、この後はこちらの要望を聞いて頂きたい。正直、私は貴方の存在がこの国を危うくしていると考えています。ですから、この国に干渉しないで頂けないでしょうか。」

「これはまた、随分な言いがかりに聞こえますが、私がこの国を危うくしている根拠や状況を教えて頂けますか?何を以ってこの国を危険に晒しているのか、皆目見当がつかないものですから。」

「この国がようやく一つにまとまろうという時に貴方の存在自体が迷惑なのですよ。」

「私がいつこの国の政治に口出ししましたか?それとも私が反抗勢力でも組織しようとしている事実でもあるんですか?昨日今日来た人間にそんな事できるわけないでしょう。どうもあなたと話していると市井の痴話喧嘩をしているようで理解に苦しみますが、これがこの国の外交というものなのでしょうか。そうでないのなら、そのようなあやふやな言いがかりではなく分かるように話してもらえませんかね。」

その言葉を聞いて、後ろに控えていた兵士風の男達が

剣に手を掛けながら激高した。

「貴様、誰にモノを言っている。」

「控えろ。」

その言葉に即座にシグルドは後ろの兵に命じた。

「申し訳ありません。」

後ろの兵士は再び直立姿勢に戻り、謝罪した。

「これは外交ではない。貴方は今のところジュノー王国の使節団の一員ではないはず。それは貴方が先程言った言葉です。つまり、今はAランクの冒険者のアルス殿個人とこの国の要人である私の個人的な話し合いでしかない。そして、どのような理由があろうとなかろうと、私があなたの存在がこの国を危険に晒していると判断したので、その上で話し合いの場を設けているのですよ。」

「これは失礼しました。私の方が言い過ぎたようですね。確かに今の私はジュノー王国の使節団の一員ではありませんでしたね。申し訳ありませんでした。しかし、それならば尚更、個人の感情で物事の話を進めるのは如何なものでしょう。法、もしくは女王のお決めになった事であれば従うべきでしょうが、違法な行為やマナーを逸脱した行為もしておりませんし、女王からの命令でもないのですよね。であれば、これは貴方個人の言いがかりとしか捉えられないと思いますけど、いかがでしょうか。」

「ですから、その為の話し合いです。」

シグルドはそう答えて、一時沈黙する。

こちらも敢えて答えず、黙ったまま飲み物に手を掛けた。

シグルドが目指しているものは、自身で権力を手中に収める事。

その為に女王と結婚し王家の血を一つにまとめて、

誰も裏切る事の出来ない状況にする事だろう。

最悪の事態を想定するなら、女王との結婚後、

女王を亡き者にする可能性もある。

結婚する前に女王を亡き者にする事も考えているだろうが、

その場合、女王派の貴族の反感を買い、統治が難しくなる可能性もある。

それに、女王を亡き者にするにしても継承者の加護と呪いの件もある。

直接手を下す事は出来ないのでそれなりに時間もかかるはずである。

つまり、それらの企みにおいて俺の存在が邪魔なのだろう。

しばらく沈黙が続いた後、話しかけたのはシグルドの方だった。

「これ以上の話し合いは無駄なようだな。貴様の為に忠告しておいてやろう。女王には近づくな。そして速やかにこの国から立ち去れ。話は以上だ。戻って頂いて結構だ。」

一方的な要求で話し合いも何もなかったように思えるが、

これ以上ここに留まっていてもしょうがないと感じ、部屋を後にした。


部屋に戻ると、アンジェとマリアが心配そうに駆け寄ってきた。

「どうだったの?」

「予想どおりと言えば予想どおりだけど、女王に近づくな、早々にこの国から立ち去れって言われたよ。」

「昔からあいつは高圧的なのよ。何様のつもりかしら。」

アンジェが珍しく悪口を叩く。

「それよりも、今後俺には監視の目が付くだろうから、大人しくしていた方がいいかもなあ。」

出来ればアンジェとマリアの希望もあるし、

アメリア女王からもシグルドと結婚なんかしたくないとも聞いてるし、

モルガン公爵からも助けてやって欲しいとも言われているから、

力になってやりたいとは思うが、正直な所、

貴族社会の事なんて分からないし、

どうすればいいか全く分からないというのが率直な感想だ。

それでもこの経緯を皆で共有しないとボロが出るので、

夕食時、皆が集まった時に今日の出来事を伝える事にした。

ホフマン伯爵は、基本的に内政に関する事なので、

ジュノー王国側は感知しない事で決めていたようだ。

俺達との契約も、協議中という事で

了承してもらえたのは良かったかもしれない。


部屋に戻り、ベッドに転がり込む。

「面倒だなあ。」

思わず、愚痴をこぼしたくなる。

そもそも、のんびりゆっくり過ごしたい俺としては、

こういうドロドロした人間関係は苦手だ。

それにしてもシグルドの態度が気になる。

わざわざ呼び出しておいて説得も中途半端なような気もするし、

もっと強権を発動させて追い出されるくらいは考えていたけど

どういうことなんだろうか。

寝込みを襲われては敵わないから、今日から対策をするか。

アンジェとマリアにも今日から俺の部屋で寝てもらった方がいいだろうな。

決して邪な考えじゃないんだからね。

そうと決まればすぐに言っておこう。

まずは、アンジェの部屋へ行く。ノックをするとアンジェが出てきた。

「今日から気を付けないといけないから、俺の部屋で一緒に寝た方がいいと思うんだけど、どうかな。」

「えっ?アーくんと一緒に寝るの?アーくんが誘ってくれるなんて初めて・・・。」

違うから、改めて襲われる危険がある事を説明して

ようやく理解してもらった。

続いて、マリアの部屋。

「えっ?アーくんと一緒に寝るの?アーくんが誘ってくれるなんて初めて・・・。」

さっき同じセリフを聞いた気がする。

「あらっ?アンジェも一緒なのね。ざーんねん。」

マリアにも改めて説明しておいた。

3人で俺の部屋に戻り、いくつかの対策魔法をかけておく。

扉にはハードロックの魔法を、

部屋を中心にアラームという魔法をかけておく。

アラームは効果範囲内に侵入してくる者がいた場合に発動して

直接頭の中に警鐘を鳴らして知らせてくれる。

もしくは実際に音が鳴るようにもできる。

そして効果時間を8時間にしておいた。

それともう一つライフバブルスという魔法だ。

これは、体に薄い膜のような物を張り、

有害な毒やガスなどを防いでくれる魔法だ。

もっと時間を掛けられれば他にもできるのだが、即席ではこんなものだろう。

そして最後の問題は、誘惑に負けない事。

と言っても、2人にはちゃんと説明したので問題ないようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ