努力は人を裏切らない
読者様、嘘をついてごめんなさい。
私はどうしても自分のキャラクターに重い過去を背負わせないと気が済まないようです。
次回は少しでも明るくなるかなと思います。
どうやらオレは小さい頃親に捨てられたらしい。
孤児院でそう言われたとき、オレはいらない存在なのだと思った。
孤児院では、理不尽なことで殴られ、脅され、恐怖で支配される。
弱い奴で、自分で命を断つようなヤツもいた。
大きくなると、銃を持たされ、オレたちは人殺しの訓練をさせられた。
孤児院自体も森の中の町から外れた場所にあるから、人目も届かない。
捨て子だから汚れ仕事をさせるのにぴったりらしい。
訓練の途中で死ぬ奴もいた。
そういうやつは、まとめて焼かれて森の中の適当なところに埋められた。
オレたちは捨てられた存在なのだから何をしてもいいのだそうだ。
皆諦めていたが、オレは子供ながらにふつふつと、この孤児院の『親』とよばれているジジイとババアに復讐をしようと考えていた。
オレの将来の夢はずっと変わらない。
『プロの殺し屋』だった。
この孤児院のジジイとババア、それからオレを殴った全てにヤツを全員殺す、それ以外考えていなかった。
オレは目つきが悪かったから皆に怖がられた。
だが、同じ部屋の『ルーク』だけはオレによく話しかけてきた。
「ハーネス!ハーネス!」
丸眼鏡に、そばかす、下がった眉毛。
よく顔がむかつくというオレと同じ理由で殴られているルークは、全然違うタイプのオレにひっついてくる。
理由は、1つ。
オレたちは夢が一緒だったからだ。
「ここを出たら、2人で孤児院に復讐しよう」
ルークはよく本を読んでいる。殺し屋という職業を教えてくれたのも、ルークだった。
復讐という言葉をルークはよく使った。
ルークもオレも夢のために自主練をしたり、ナイフの訓練や、体力作りを2人で行っていた。よくこんなつらい訓練を自主的に行えるな、なんて言われたりしたけど、オレたちには夢があったから、運命に流されているヤツらとは根本的に違った。
オレたちは、努力のおかげか最初の仕事で見事成功をおさめ、大きな殺し屋のチームに引き抜かれた。
報酬は高いが危険な仕事の多いチームだ。
オレたちはそこで着実に経験を積んでいった。
家も、孤児院の狭い部屋に何人も詰め込まれた部屋ではなくオレたちは同じマンションで部屋を借りてくらしていた。
そんな日々を過ごしていたある日ルークに呼び出された。
「どうしたんだよ。こんな夜中に呼び出して」
ルークに夜中、オレは呼び出された。
ルークは神妙な面持ちでベットに座っている。
オレは、首を傾げながら隣に座った。
「あのさ、僕たち孤児院に復讐するためにやってきたじゃないか」
「ああ」
「僕さ、仕事の報酬を少しずつ貯めていてさ。大きな家を買ったんだ」
「家だと!?」
オレは、驚いて思わず素っ頓狂な声をあげた。
「ああ、あのさ。ハーネス、僕は昔と同じで孤児院の大人たちを憎んでいるよ」
「ああ」
「でも、孤児院の大人たちへの復讐を果たしたら、子供たちが路頭に迷ってしまうだろう?」
子供たちって、孤児院の子供たちのことか。
オレは全くそんなことは考えていなかった。
「16歳から入ってお世話になってきたチームだけど、僕はここから足を洗って子供たちを引き取って育てようと思う。僕は孤児院の大人たちにされた傷はまだ体の至るところに残っているよ。心の傷もね。今あそこにいる子供たちもきっとそうだと思う。僕は今復讐の為に生きている。でも、こういうことって、繰り返してはいけないと思うんだ」
ルークは、オレが考えもよらなかったところまで考えていた。
「抜けられるわけないだろ」
オレは、冷静に答えた。
そして、常にお腹に隠している銃を服の上から触った。
オレは、銃を常に持ち歩いている。いつジジイとババアに殴られても撃ち殺せるように反撃できるように、寝るときも起きるときもずっと。
「復讐が果たされて、チームから抜けたらもう拳銃とは無縁の場所へいこう」
ルークは、オレの腹から銃を素早く抜き取った。
「あっ、返せ」
オレから銃を取り上げられるのなんてルークくらいだ。
オレはいつも気を張っている。ルークといるときだけが心休める時間だった。
「ハーネス。僕たちはいつかこんなものを持たず、殺すとか殺さないとか関係ない世界で気の許せる相手と・・・のんびり毎日を過ごせるといいね」
ルークはオレの銃をくるくるともてあそんだ。
オレは、一緒に過ごすならルークしか考えられなかった。
それなのに。
次の仕事は大きな仕事だった。
次の仕事に限って大きな仕事だった。
「ルーク!!」
ルークがターゲットを殺し損ねて捕まった。
向こうはかなり大きな組織で、ルークは人質としてとらえられていた。
ルークを拷問しているおぞましいビデオレターが届き、オレは頭がおかしくなりそうだった。
泣きながらボスに助けてくれと懇願すると、ボスは、向こうから提示された条件を見て頷いた。
「彼は全然口を割らないらしい。こちらの握っている向こうの組織の機密情報と引き換えに、ルークを解放するように言っている」
「行きます」
「あぁ、急げ」
オレたちは○○ビルの屋上で待っているという向こうの連絡通りヘリでビルの真上へと向かった。屋上はもう少しだというのに、ヘリで見下ろすだけで、まだルークを助けにいけないのが歯がゆかった。
憎い向こうの組織の男とルークが出てきた。ふらふらしていて消耗しきっている。
ルーク、今助けてやるからな。
「ボス、ヘリを」
オレはボスにインカムで言った。
「ヘリを降ろす気はない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
聞き間違いか?
思考が停止した。
「ヘリに載っている大きな袋があるだろう。その中の銃で人質撃ち殺せ、お前は組織の中でも一番銃の扱いが上手いだろう。だからここに連れてきたんだ。この距離ならお前は余裕のはずだ」
確かにオレの助手席には黒くて、大きな銃の袋が載っていた。これで、ルークをひどい目に合わせたヤツらを撃ち殺す用だろう?これで敵を撃ち殺しても、ヘリが離陸する気配がないから助けにいけない。
オレは、しばらく言葉が出なかった。
「だって・・・人質を解放するって」
「そう言わないとお前はこないだろう。早くしろ」
ボスの声は冷たかった。
部下には優しい人だと思っていた。
でも、違った。
平気で、ルークを見捨てるんだ。この人は。
「む、無理です。殺せません。殺せるわけないじゃないですか」
「殺せ」
「殺せません、殺したくない、そんなことできるわけがない。そんなことをするくらいならオレは・・・」
「殺せ」
「オレは死んだほうがマシだ」
本気だった。
かたかたと体が震えた。ルークが死ぬだなんて考えただけでおかしくなりそうだ。
「元々ここにはデータを持ってきていないんだ。だから約束が果たされなければ彼はどのみち殺される。向こうの組織で酷い殺され方をされるのをまたビデオレターで見るか、君が一瞬で殺してあげるかどちらがいいか君ならわかるだろう?」
最初から取引するつもりなんかなかったんだ。
そうだ、忘れていた。
オレたちはチームでもよく優秀だと言われていたから忘れていた。
オレたちは、元々、そういう役割なんだ。
「大事な友達なんだろう?彼を殺せるのはお前だけだよ。彼のためにお前が彼の息の根を止めてやるんだ。じゃないとこれからもっとひどい目にあう」
ルークの顔が浮かんだ。
心臓はばくばくと脈打っている。
オレは、オレはどうすればいい。オレはどうすればいい。
「・・・・ク・・・ろし・・・くれ」
拷問のビデオレター。目をそらしていた。
モニターから聞こえてきた声。
聞こえないようにしていた。全てを遮断して、見ないように聞かないように思い出さないようにしていた。
「ハーネス・・・僕を殺してくれ」
「殺せ」
ぐったりしたルークがふいに顔をあげた。
ルークは、オレを見上げてふっと微笑んだ。
「たのむよ、ハーネス」
ルークの口がそう、微かに動いた気がした。
オレは、がたがた震える手で袋を掴んだ。
***
あの一見以来、オレは生きる希望を失った。
そして、人を殺せなくなってしまった。
役に立たないオレは、どうせすぐ殺されるだろう。
その前にやることがあった。
帰宅後、空っぽのルークの部屋に行くと引き出しが開いていて手紙が入っていた。
中を見るとオレへの手紙が入っていた。
内容は、今回の仕事で自分が死んだらしてほしいこと。酷い手紙だ。こんな手紙を準備していたなんてな。オレは、手紙に書いてある通り準備を進めた。
***
「た、助けてくれ!!」
ジジイとババアは、オレのことなんて当然覚えていなかった。
そして、何度もオレに助けを求めてきた。
オレたちが何度も何度も助けを求めたって助けてくれなかったくせに。
ジジイとババアを目隠しして縛り、寝室に放った。
オレはバスを借りてきて、子供たちは、うるさいので縛って外に止めてきたバスに放り込んだ。
そして、孤児院に火を放つとオレはバスを動かした。
オレは、手紙に入っていた住所を調べ、ルークの購入した家に孤児院にいた7人の子供たちを連れてきた。
困惑する子供たち。そりゃそうだろう。突如誘拐されたのだから。
一番背の高いガキにオレはルークの手紙を押し付けた。
「こ、これは」
「これに大体のことが書いてある。お前たちをいじめていたジジイとババアはもういない。これからは子供たちで知恵を絞って生きていくんだ」
オレは、今までに仕事で貯めてきた金の入ったカードを、そのまま背の高いガキに手渡した。
子供たちは相変わらず警戒した様子でこちらを見ている。
「沢山金が入っている。頭を使って使え」
「・・・もう、毎日気を失うまで殴られたり、あざができるまで蹴られたり、舌を火ばさみで引っ張られたり、しなくていいってことですか」
「ああ」
「鬼ババたちが僕たちを追ってきたりしませんか?」
「鬼ババたちはオレが退治した。もう恐怖に怯えなくていい」
そういうと、ガキたちは大きく目を見開いた。
「・・・・・・・・」
脳の処理が追い付いていないのか皆は顔を見合わせている。
「オレは頼まれただけだ、礼ならその手紙を書いたルークにいってくれ」
あざだらけの子供たちにそういうと子供たちは静かに涙を流した。
ルークは、よく『復讐』という言葉を使ったが、根っこのところでは孤児院の子供たちを救おうと自分たちみたいな人間をもう増やさないように考えていたんだと思う。
「ありがとうござい・・・ました」
オレは、自分のことしか考えていなかった。これも全部ルークが考えてくれたことだ。
オレは感謝されるような人間じゃない。
ルークと違ってオレはガキが嫌いだ。
本日も読んでくださりありがとうございます。
お母さんが「一緒に遊んで」というのでタワーにチップを乗せて崩れた方が負けというゲームをしたのですが、普通に負けて、そしたら母に、
「ガイアちゃん、これがデスゲームだったら死んでたわよ。常にそういう気分でゲームに臨みなさい」と言われました。嫌だわ!!!!!!!!!!




