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メアリーの日記(抜粋)と 2

◯月◯日

ダグラス様のせいでお嬢様と離れる事になってしまった。許し難い。

こうなったら、一日も早くアイリーンとかいうクソ女を見つけだしてやる。


◯月◯日

宿について侯爵家の護衛や侍女に話を聞くと、令嬢は時折街に出る事もあり、それなりの金も持っていたという。

これは近くにいるな。

皆は人を雇って遠くへ行った思っているらしいが、違う。

世間知らずでも無い令嬢なら、そんな事をすれば大事になるか、すぐ足がつくとわかる。協力者が近くにいるはずだ。

接触する機会があった宿のものが怪しい。

フフフ。どうしてやろうか。


◯月◯日

私はまだ宿にいる。

何故まだ捕まえていないのか。

それは嫌がらせのためだ。

私がここにいる限り、ヤツは身動きが取れない。ずっと縮こまってなければいけないのだ!

余計な手間を掛けさせ、私をお嬢様から離した罪を償ってもらうよ!

今日もあの女の泊まっていた部屋の椅子に座って高笑いする。フハハハハ!この全能感!!私にひれ伏すがいいわ!!


◯月◯日

私が獲物で遊んでいたら、お嬢様の一大事に間に合わなかった! なんて事だ。バカだ私は。女は速攻捕獲。護衛に預けて、私は一刻も早くお嬢様の元に向かう為、馬車を急がせている。これ、走った方が速いんじゃないか?! いやいやそんな訳ない。あっ馬に乗って行けばいいんだ。フォードの護衛に交渉だ。




「お嬢様ぁ?! また私の日記を読んで! しかも今付けてるのじゃないですか!!」


「いや、控え室に思いっ切り開いて置いてあったわよ。貴女日記の管理、甘すぎない?」


「置いてあったからって読んじゃいけないんですよ」


「それはそうだけど」


「まあでも問題ありません。読まれてもいいように書いてるんで」


「あれで?!」


「お茶目でしょう。日記を付けるようになったのは、母が字の勉強に日記を付けろとノートをくれたからなんです。なので面倒に思いながらも、気が向いた時に付けてたんですが、それを母が勝手に読み、悪さがバレて怒られました」


「えげつないトラップを仕掛けられたわね。これもマッチポンプって言うのかしら??」


「よく分かりませんが、単なる "罠" でいいんじゃないですかね。娘を信用してないのがバレバレですよね。そんな訳で、日記には読まれても構わないと思う事しか書きません」


「あれを読まれても良いと思っている素敵な貴女に、新たな日記帳をプレゼントさせてちょうだい」


「それって読む気満々ですよね」


「奮発して鍵付きでもいいわ」


「鍵の所持者は、まさかご自分じゃないですよね」


「ちゃんと貴女とシェアするわ」


「ならいいです」


「同意を得ちゃった! 楽しみにしてるわ。ところで、アイリーン様の居場所っていつから分かっていたの?」


「宿に着いた時から、獲物がいる気配は感じてましたよ。次の日には、なんとすれ違いさえしました。私が見るからに使用人だから油断したんでしょうが、甘いですよね」


「変装はしてたのよね」


「服装は町娘っぽかったですね。髪もキャップで隠れてました。でも、それだけです」


「ああ、匂いとか」


「そうなんです。姿を隠す前にしっかり入浴したんでしょうね。簡単に洗えなくなりますからね。でも擦り込まれた香油の匂いが、拭いただけじゃ、まだ落ち切ってなかったんですね。体臭に混じってフワッと。お嬢様じゃ、無いミスですね」


「メアリーには何度もしてやられたもの。お陰で今でも香水を付けられると、湖に飛び込みたくなるのよね」


「逆に藁の匂いを付けたりしてましたよね。彼女は眉毛も睫毛も、プラチナブロンドのままでした。せめて眉くらいは染めて欲しかったですね。庶民にも居ない訳じゃないですが、やはり目立ちます。立ち振る舞いについては考えたんでしょうね。移動する時は小走りでした。令嬢は走る訓練はしませんからね。でもそれはそれで目立ってました」


「そこまで見てたのは貴女くらいだと思うけど。早く捕まえてあげれば良かったのに……」


「教育的指導です! お嬢様に迷惑を掛けた上、三食昼寝付きの生活で私に脂身までプレゼントしてくれたんですよ! 大罪です」


「お礼を言う案件も入っていたわね」


「過ぎた事はいいんですよ。もう全ては終わった事です。振り返っても、誰も幸せにはなりません」


「えぇぇ……。まあでもメアリーは良くやってくれた訳だから、私からは感謝しかないわ。ありがとう」


「そんな、勿体ないお言葉です。勿体ないので言葉は取っておいて、別の形で示してくれてもいいんですよ」


「そんな貴女に朗報です」


「はっ?! まさか」


「ダグラスとベスがいい感じになったのを見て、『冬よ去れ! 春はどこだ! ここ空いてますよおおお!』と叫んでいましたね」


「何故それを! 日記にも書いてないのに」


「それは貴女が、耳の遠い家令のジョンが銀器を取り落す程の大音量で叫んだからです」


「おおう、割れ物じゃなくて良かった」


「で話を戻すと、貴女の活躍と私の婚姻により、リチャード様の家にアイリーン様の家とも繋がりが出来ました」


「私的には複雑ですが良い事ですよね。でもそれと私になんの関係が?」


「リチャード様の側付きになってもらいます」


「誰がです?」


「メアリーが」


「わだじば要らないんでずがあぁぁぁぁ!」


「要る要る。期間限定よ。リチャード様の手綱を取ってもらいたいって。アイリーン様の件で指示を出したりしてたでしょう。見込まれたようよ」


「ぞれでもわだじば、お嬢様のおぞばがいいでずうぅぅ」


「公爵家だし断りにくいっていう事もあるけど、何かそこでメアリーの相手が見つかりそうな気がするのよね……」


「精一杯お仕えさせていただきます!!」










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