表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廻天列系における輪廻の格律  作者: 星ノ鳥ヌシ
廻天列系における逃走の格律*ジャイアント・インパクト*

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/84

12 そして保父になる

 意外と安全運転だったアキのおかげで無事家にたどり着き、なにはともあれ浴槽にお湯を溜めた。炭酸バブの袋を破く際に指先の爪に入り込んだ細かい砂に気づき、その有様がまるでホタテのミミのようだとしばし眺める。


 そよそよとベコナは自分の家でお風呂に入ると言っていたが、ベコナは溺れていないだろうか。鳥は元々水浴びだけで、お風呂に入るものではないから心配だ。

 シャワーをややぬるま湯にして、浴室でスタンバイしていたおまるに勢いよくかける。お湯にすると羽の油分が抜けてしまうからいけない。もちろん石鹸もだめだ。長いこと時間をかけて、砂を噛んでしまった羽を綺麗にする。


「こんなもんでどうだ」

「ありがとうございますじゃ。もう動いてもじゃりじゃりはしないですじゃ」


 翼を広げて満足げにおまるが頷き、そのまま体を大きく膨らませたかと思ったら、俺のことなどお構いなく、ぶるっと盛大に身震いをして大量の水滴を飛ばした。すっきりすっきりと歌いながら、勢いよくタオルをすぱーんと股に叩きつけた後、おしりをふりふり風呂場を出て行く。


 どこで覚えたんだそれ。絶対オマタのマネだろ。


 はぁ。まだシャワーも浴びてないのになんでこんなにびしょびしょなんだよ。俺一人だけなら後かたづけも楽なんだけど、こうやって面倒をみなきゃならない奴がいると大変だな。しかもこれから晩ご飯作らなきゃならないし。世のおかぁさんの大部分が、海とかキャンプとか嫌いな理由がわかる気がする。


 さてと、そろそろお湯もたまったし、俺も風呂にを入るかと服を脱ぎかけたら、ベコナが風呂場で溺れかけたと、パンツも穿いていない真っ裸のそよそよが、ずぶぬれになってしょんぼりしているベコナを抱えて、大慌てでやってきた。


 やっぱりな。


 鼻に水が入ったとひたすらくしゃみをするベコナをやわらかいガーゼはんかちで拭き、風邪を引くから早くお風呂に入りなさいとそよそよを浴槽に押し込める。アパートの隣部屋だけど裸で来るなよまったく本性鳥が。

 ぺくちぺくちとくしゃみをしているけれども、ベコナも元気そうだから大丈夫だろう。


 しかし、案の定、こいつらの風呂の世話もしなくてはならなくなったか。どっと疲れの増した体を叱咤して、俺は育児に励んだのだった。



 疲れのせいかなんだか具合が悪いし、冷麺はまだしも半熟卵を作るのも時間がかかるし面倒くさい。もういいや、冷たいうどんで。冷凍麺をレンジで解凍するだけ。めんつゆにシーチキンと水菜を混ぜると簡単で美味しいから、これにしよう。

 それにしても、この「キッコーマンめんみ」の「めんみ」ってどういう意味なんだろう。オマタが常備してたから使ってるけど、どうしてめんつゆじゃないのだろう。不思議。めんみから立ち上るよいおだしの香りをかいでいたら、満たされていたはずのおなかも減ってきたし。不思議。


 暮れなずむ町を窓から眺め、レンジの中でオレンジ色の光を浴びる冷凍うどんを眺めながら、おれは「めんみ」について長らく考え続けたのだった。   

   

   ***


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ