AIがとまらない
走る汎用列車型決戦兵器「疾風怒濤」から消えたのは運転手だった。
それだけではない。
玲於奈が告げたのは、驚くべき事実だった。人工知能が自動で列車を運転しているというのである。
サニーは冷静に玲於奈を問いただした。
「どうして、行方不明の運転手に代わって、機械がこの疾風怒濤を動かしていることを、今まで黙っていたのですか?」
「お客様がパニックにならないよう、黙っておいたほうがよいと考えまして――」
「それは車掌の仕事ではありませんね」とサニーが冷ややかに言った。
普段ならば、耳障りな皮肉も、いざというときには、立派な批判に聞こえるから不思議なものだ。心の中で、好子はサニーを応援したくなった。
「本当に申し訳ないのです。これは私の手落ちです」
玲於奈は制帽を脱いで謝った。
「わかりました。その件は不問に付しましょう。で、話を元に戻して――」とサニーは続けて、質問を繰り出した。「疾風怒濤が駅を素通りしたのは、その人工知能のせいなんですね?」
「おっしゃるとおりです」
「では、人工知能を止める方法はあるんですか?」
このとき、初めて玲於奈の顔色が変わった。「それが……止めるためには、パスワードが必要となるのです。ところが、セキュリティの都合で、パスワードの言葉を知っているのは運転手の東都湖のみなのです」
「つまり、彼がいなければ、この暴走した兵器をだれも止めることができない」
再び、玲於奈は「おっしゃるとおりです」と、うめくように肯定した。「人工知能は、大阪駅までノンストップで走行するようにプログラムされているのでしょう。おそらくは、大阪駅で停車できるはずです。それまでご辛抱ください」
「あてにならないじゃん!」と新雀が叫んだ。
好子もうなずいた。確かに、彼女の言うとおりだった。
機械が人の手も借りずに、駅へ止まることができるのだろうか。止まるにしても、微妙な判断が必要となるのではないか。
人工知能が列車を運行するという話は、まだ聞いたことがなかった。
サニーは文句を言おうとした好子を、手で制した。そして、こう玲於奈に提案した。
「さしあたって、あたしたちで、東都湖の居場所を探しましょう。探していない場所はあるのですか?九院さん」
「くまなく探しました。もし探していないとすれば、それは乗客の個室です。個室はプライベートな空間ですので、勝手に私どもが捜索することができません」
「では、そこから探すことにしましょう」
サニーと好子と玲於奈は話し合って、乗客たちの個室を一部屋ずつ見回ることにした。
食堂車にいた新雀とエスガーに許可をもらって、彼女たちの個室を見せてもらったが、人の姿などなかった。浴室もクローゼットの中もいなかった。
個室は好子たちと同じ構造であった。隠れる場所などない。
続けて、別の部屋を探すことにした。他にも乗客がいないのかと、サニーが玲於奈に尋ねると、あと三人残っているとの答えが返ってきた。




