七大災厄の一人、衝撃のタキシード
「結界魔法デ・スルフィー!」とサニーは高位の魔法を使った。
サニーと好子の体が、衣のように光の玉に包まれる。そのまま、ふわりと浮かんだ。
結界魔法には、魔法の効果を断ち切る効果がある。さらに、光に包まれた物体を思い通りに運ぶことができるのだ。
「地面の泥よ!元の姿に戻れ!凝固魔法タワロ・レンターラ!」
泥の地面は、好子の魔法によって、元に戻っていった。
二人が罠から脱出すると、拍手の音が聞こえてきた。
初めは、第三工場の出している音かと思われたが、それは違っていた。工場の入口から、音がもれてきたものだ。
誰もいない夜の工場で鳴り響く音は不気味だった。
好子は怖がって、サニーの腕をつかんだ。もしかすると、お化けかしらと考えたからだった。
「音が近づいてきている……」とサニーは状況を述べた。
拍手をしている主が、工場に入ってきた。
「お化けですよ!先輩!」と好子が叫んだが、お化けのほうが良かったかもしれない。
ぱちぱちと手をたたきながら、好子たちの目の前に現れたのは、なんと、タキシードを着た女だった。
「すばらしい。実に、鮮やかな魔法でした。私の呪縛魔法から逃げたのは、あなたたちが初めてです」とタキシードの女は言った。
窓から月光が差し込んだ。その光が女の体を照らし出す。背がすらりと高くて、黒に塗りつぶされたタキシードをぴしっと着こなしている。金髪で色白の顔に、赤く派手な口紅をつけている。どことなく、大人の色気がある。20歳以上だろう。サニーとは違う美人だった。
「さて、自己紹介が遅れました。わたくし、七大災厄の一人、『衝撃のタキシード』と申します」
「あんたがBB団ね!」とサニーが叫んだ。
「そのとおりですのよ。――我らがBB様のために」
衝撃のタキシードが目の前に現れた。
各国の警察が血眼になって探している犯罪組織BB団の幹部である。この機会を逃す事はできなかった。
とっさに、サニーは束縛魔法を使った。
この魔法を使うと、地面から魔法の鎖が出てきて、文字通り、敵を束縛できる。
頑丈そうな鎖が、タキシードへ、グルグル巻きにからみつく。その鎖は走るダンプカーすら止められそうだ。
「ジーパン、あんたは出口に回って!」
サニーに言われたとおり、ジーパンの好子は腕を組んで、工場の出口に立った。
「あと1分か――」とサニーが腕時計を見た。
あと一分で、ヤッタ・ゼフラン・キスの効果が切れる。そうなれば、お金のかかる束縛魔法を使うと、自分の命が奪われてしまうだろう。
一刻の猶予もない。
「ジーパン、頼んだわよ」
好子はうなずくと、睡眠魔法を使った。この魔法で奴を眠らせることができるのだ。
だが、好子が呪文を唱えるか唱えないかのうちに、衝撃のタキシードは鎖を引きちぎってしまった。
「こんなもので、わたくしをとらえられると思いまして?ちゃんちゃら、おかしくて、ヘソで茶をわかしますわ」
そう言った途端、恐ろしいスピードで、好子にせまると、「睡眠魔法ダ・ショーネ!もう一度、お眠りなさい」と言って、タキシードの女は好子を眠らせてしまった。




