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魔法少女警察24時  作者: 村上玄太郎
第一章 おまわりさんは魔法少女

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ツキは無慈悲な夜の女王

 好子は自分の机で座ったまま、顔を伏せていた。

 待機室の机がスチールなので、頬《ほお》の表面がひんやりとした。

 こんなはずではなかったと、後悔の念が山のように押し寄せてくる。いくら頭に血がのぼったとはいえ、氷山を呼び出して落とすなど、市民を危険にさらしてしまったのだ。市民を守りたくて、警官になったのに。

 キス――のことは、しばらく、頭の記憶から消しておきたい問題だった。


「ちょっといいかしら。ジーパン」とサニーが聞いてきた。

 またも、キスの場面が、映画のワンシーンのように、好子の頭によみがえった。


「なんでしょうか?先輩」

 逃げ出したい好子だったが、狭《せま》い室内では、逃げる場所もない。

 恥ずかしくて、顔を上げることもできなかった。

「そのままでいいから、聞いてちょうだい。あたしね、あんたに謝らなくちゃいけないの。ごめんなさい」とサニーが言う。

「キスの事なら、もういいです」

「あんたにキスの儀式は話すべきだった。ごめん――少し、話すのが怖かった。あんたに前もって話すと、絶対に嫌がると思ったから。そうなったら、魔法で戦えなくなるのを恐れていたの」


 そんなことだろうと、好子は思っていた。

 逆の立場でも、好子はサニーと同じことをやったに違いない。

 彼女は顔を上げて、サニーの顔を見つめた。「いいんです。もう。今度からは、キスをする前に、私に許可を取ってください」

「いいえ、謝りたいのは、それだけじゃないの……」とサニーの顔が曇《くも》った。「まだ、大事なことを話してなかったのよ。ヤッタ・ゼフラン・キスの法則は、ファウスト交換の原理に反《はん》するものではないということを――」


 ちょっと待て。

 嫌な予感がする。


 急いで、好子はその言葉の意味を確認する。

「どういうことですか?キスして、魔法を使っても、お金も命も失うわけじゃないんでしょう?」

 サニーは深呼吸をした。そして、その真意を明らかにした。

「そうね。確かに、お金も命も失わない。失わないけど、キスした人にとって、大事なものがなくなってしまう」

「大事なもの?」と好子は聞き返した。

「運よ。幸運がなくなるってわけ。キスしてから5時間以内は、不運なことばかりが続くの……」

 今、キスしてから、およそ3時間が過ぎた。

 ということは、すくなくとも、あと2時間は、不幸なことが続いて起きてしまうかもしれない。

 ヤッタ・ゼフラン・キスの法則は、二人の幸運を犠牲にして、魔法を使えるというものだったのだ。


 夜を迎《むか》えた待機室に、またもや、じりじりとベルが鳴った。

 長い夜になりそうだ。

「第一章 おまわりさんは魔法少女」終わり。次回から第二章に突入します。お楽しみに

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