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過去の自分と対話する(二人会話劇)

「遅かったね、待ちくたびれたよ」

「誰だよ、クソガキ。ママはどこへ行った?」

「ママは来ないよ。あとクソって言っちゃダメなんだよ。先生に怒られるよ」

「うるせーよ、大体ここはどこなんだよ」

「ここは精神と対話の部屋」

「精神と対話の部屋?どっかのアニメみてーだな」

「ボクもそう思った」

「で、どうしてオレはクソガキと二人でこの部屋にいるんだ?何か知ってるのか」

「この部屋は過去と未来の自分が交わって、真実を見つけると出られるんだってママが言ってた」

「過去の自分と未来の自分?」

「そう」

「ってことはまさか」

「そう、ボク、おじさんの子供のころ」

「マジかよ。オレこんなクソガキだったんか」

「ボクも未来の自分がこんなくたびれたオジサンなんてショックだよ」

「くたびれたってお前……オレはまだ四十だ」

「四十歳はオジサンだよ。自信もって」

「わかったような口きくじゃねぇか」

「未来は変えられるから、もう少しボクちゃんと勉強してオジサンの未来が少しでも良くなるように頑張るね」

「へいへい頑張ってくださいよ。人生そううまくも行かないけどな」

「それだ」

「?」

「オジサンは今、人生がうまくいかないと感じている。その原因が過去にあるとママは思ってるんだ。だからこの部屋にボクを入れたんだ。オジサンが過去の自分と向き合えるように」

(ガキの頃死んだ母さん……もともとつかみどころがない人だったけど一体何やってるんだ?まぁ、母さんが若くして死ぬことはこいつには伏せといてやろう。大人の気遣いってやつだ)

「なるほどな……クソガキ……じゃなかった、オレだからケンジ」

「何」

「オマエは今オレが人生うまくいってないのを知ってるのか」

「詳しくは知らないよ。ただ、ママが『助けてあげて』って」

「そうか」

「……」

「どうしたのオジサン黙っちゃって」

「ケンジ」

「何?」

「オマエ今いくつか」

「十二歳。小学六年生」

「そうか、一番いい時だな」

「そうなの?」

「ああ」

「聞かせてよ、この先何が起こるのか」

「ああ、ショック受けるなよ」

「大丈夫」

「まずオマエ今塾通ってるだろ?中学受験のために」

「うん」

「志望校は中高一貫のA中学が第一志望だ」

「うん、毎回模試でもA判定出てるから余裕でしょ?」

「ところがな、オマエは落ちる」

「え」

「落ちるんだよ」

「なんで、噓でしょ」

「正確にはな、当日盲腸にかかっちまって緊急搬送されるんだ。即手術からの入院で併願校も受けられず今までの努力が全部パー」

「うわぁ……最悪」

「だがな、悪いことだけじゃない」

「どういうこと?」

「しぶしぶ通った公立中学で、ユミちゃんっていう可愛い女の子とオマエ恋に落ちるぞ」

「えっ」

「安心しろ。ユミちゃんは可愛いうえに性格もいい。おっぱいもでかい」

「最後の一言はセクハラだと思うけど……まあいいや」

「ユミちゃんと一緒に帰ったり漫画貸し借りしたりしばらく甘酸っぱい日々をすごせるが……ちょっと問題が起こる」

「何問題って」

「幼馴染のアリサいるだろ?今マンションの隣に住んでる」

「あーいるね」

「そいつがオレとユミちゃんの邪魔をしてくるんだ」

「えっ」

「最初は『悩みがあるから隣のよしみで相談に乗ってくれ』って四六時中オレの周りをウロウロするようになる。母さんにもお土産持ってきて取り入ろうとしたりな」

「うん」

「オレも悩んでるならアドバイスしてやんなきゃと思って真面目に聞いてたんだ。悪口言われてるっていうから女子同士のもめごとの仲裁したりしてな」

「うん」

「そうしたら、アリサのやつどんどん調子に乗り出した」

「調子に乗るってどうやったの?」

「彼女ヅラかつ身内ヅラしてくるんだ。『ケンジ君はワタシがいなきゃ何にもできない甘えん坊なの。ワタシは毎日ケンジくんのメンタルケアをしてるの』とか周りに吹聴してな」

「うわ。うっざいね」

「うっざいだろ」

「うん」

「『誰それはヤバいやつだからもう喋らないで、喋ったら絶交する』とか脅してきたり」

「うわぁ……何様だよ⋯⋯キメぇ……」

「それだけならまだよかったんだけどな、あいつユミちゃんにもマウント取り出したんだ」

「どういうこと?」

「『ワタシが一番ケンジくんと仲良いから、ケンジ君のことは何でも相談して。ケンジ君とお話したかったらいつでも繋いであげるよ、家隣でお母さんとも仲良いからさ。もうワタシとケンジ君は家族みたいなもんなんだよ』とやりやがった」

「うぜぇ……」

「ユミちゃんは泣いて別れるっていうし、母さんには女の子泣かせるなって言われるし、アリサが『相談』名目でその話を自分が被害者かのように吹聴して回ったせいで、オレその後女子達から総スカンよ」

「うわぁ……女って怖え……」

「ケンジ、こういう女子のムーブをなんていうかわかるか?」

「何?」

「相談女、マウント女っていうんだ」

「相談女、マウント女……」

「こういう人種の女に出会ったらな、肯定も否定もせず速攻逃げるんだ。捕まったら最後、一番大切なものを失うぞ」

「分かったよ。すごい、さすが人生の先輩。とりあえずアリサには気を付けるよ」

「分かってくれたら嬉しいぞ」

「それでそのあとはどうなるの?」

「女にほとほと嫌気が差したオレは高校は男子校へ行く。色気はないが楽しいぞ男子校は。文化祭委員やったりしてバカばっかりやってた」

「例えばどんな?」

「ALTの外国人の先生を捕まえてコンドーム見せて『イズディスユアーズ?』って質問したり」

「セクハラじゃん」

「男だからいいんだ。ちゃんと『ノー、イッツスモール』って笑いながら返してくれたしな」

「退学にならなくてよかった」

「まあそっから大学行って普通に就職して結婚して子供も生まれた」

「そうなんだ」

「しかも相手はユミちゃんだ」

「えっ」

「アリサに相談女ムーブとマウントかまされて一時は疎遠になってたけど、大学で再会してな。今では笑い話だ」

「いい話……なの?」

「時間が解決してくれるってことだ。ガキのお前にはまだわかんないんだろうがな」

「うん」

「オレは今結構幸せだから母さんにもそう伝えてくれ。ガキのお前にはくたびれたオッサンに見えるかもしれないが、家族のためにくたびれる人生は悪くないぞ」

「あ、扉空いた」

「本当だ。光が漏れてる」

「じゃあボクは行くね。今の話ママにも伝えとく」

「ああ、くれぐれもオマエは相談女とマウント女に引っかかるんじゃねーぞ。人生の無駄遣いだ」

「はーい」

「いい子だ。さて……オレも扉から出るかな。大切な家族のために」

               ―了―

















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― 新着の感想 ―
自分の未来を知るってなんなんだろう。少年が早めに女の怖さを知るってなんなんだろう。話を構成するパーツの一つ一つはありそうだなぁ、こういう人や関わりってあったらするんだろうな、と思わせながら、知ったこと…
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