ただ下校するだけの話。帰宅戦隊カエルンジャー
三十九度の蕩けそうな日。炎天下の俺レッツゴーレッツゲーム。せーので走り出す、下校とはデスゲーム。令和のランドセルが重い、多分社会問題。
母さんが朝歌っていた歌が頭の中をふとよぎる。他にも何か言っていた気がしたが忘れた。
俺は山田コウキ、小学二年生。一見普通の小学生だが秘密がある。そう、俺は帰り道だけ正義のヒーローに変身できるんだ。その名も『帰宅戦隊カエルンジャー』ちなみに俺はレッド。戦隊の名前はブルーである青木がつけた。さすがブルー。我が戦隊の頭脳担当だ。ちなみに青木は今日の算数のテストも百点だった。
おおっと先生さよーならの声がした。いよいよパトロール開始だ。さあ行こう、ブルー、イエロー、ブラック、ピンク。
各々昇降口で上履きから俊足に履き替える。
俊足は帰宅戦隊のたしなみだ。ちなみにピンクのユミちゃんだけはメゾピアノとかいうキラキラした靴を履いている。可愛いから許す。ちなみにユミちゃんと俺が付き合っているのは他の戦士たちにも秘密だ。一年生の運動会のあの日、ウサギ小屋の前でユミちゃんにキスを迫られたのは今でも記憶に新しい。なぜあの時、俺はまだ子供だからそんなことできない、なんて言ってしまったんだろう。
さあ、行くぜカエルンジャ―!今日も全力全開だ!
重たいランドセルを背負って俺たちは走り出した。暑い。七月の太陽で溶けそうだ。ランドセルの中には教科書、ノート、筆箱にタブレット、二組のカナちゃんから貰った手紙が入っている。愛の重さが加わって、今日は一段とずっしりする気がする。だが、そんなものに負ける俺ではない。俺は地球を守る男、帰宅戦隊カエルンジャーのレッドだ。
――レッド!道路の真ん中に太った結局毛虫が落ちてます――よく見つけた、ブラックリョウタ。毛虫は触ると危ないからな。これは悪い組織の罠かもしれない。避けていくぞ!
――レッド、みそきんのカップがおちています!いいなぁ、買えたんだあ、僕もみそきん食べてみたいなぁ、お腹減った――落ち着けイエロー木村、お前今日給食のカレー三杯お代わりしてただろ。でも確かにみそきんは羨ましいな。
――レッド、後方から自転車に乗った外国人が接近中。パターン青、フィリピン人です――何!?よく報告してくれたピンク。ブルー、ブラック、イエロー、追跡開始だ。ピンク、どうか止めないでくれ。男には行かねばならないときがあるんだ。さあ、出力全力全開で追うぞ。あ、イエローが転んだ。何?俺にかまわず先に行けだと?仲間を見殺しにするなんて俺には……そうかイエロー。お前の気持ちはよく分かった。ピンク、絆創膏持ってる?イエローの手当てを頼む。ブルー、ブラック。イエローの犠牲を無駄にしないためにも前に進むぞ。
結局今日も敵との勝負はつかなかった。俺たちの戦いの日々は、まだ終わりそうにない。
母さん、ただいま。おやつある?
――あんたまた近所の外国人追いかけてたでしょ!?ユミちゃんのお母さんから聞いたわよ!――いや、それはレッドとしての役目で……――止めなさいって朝も言ったでしょうがっ!――
ヒーローとは、ときに親にも理解されないものだ。




