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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第四章 絶望の果てには

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31 友人へ

 彼の横に行き、しゃがむ。弱く喉でヒューヒューっと痛々しく呼吸する音がする。

「……ユート」

 彼の睫毛が震え、目がゆっくりと開く。

「……ねぇ、立つよ」

 彼は僅かに笑うと鮮血が口から溢れ出る。

「流石に……もう無理だ。……悪いな、シロイ」

 彼はもう重度の怪我と火傷が全身を覆っている。私が彼を運べればいいのだが、私のこの腕と脇腹ではそれも選択肢にはならない。

「……置いて行け」

「ふざけんな」

 私の声が静かな通路に響く。

「俺達の状態ぐらい理解出来ている。出られたとしても、俺は、死ぬ」

 彼は私の方へ目を向けて微笑む。もうすでに焦点は合っていないのか、微妙に視線がズレている。

「もう身体を、自由に、動かせねぇ。痛みも、何故か、感じねぇ」

 彼の顔に軽く触れる。高温過ぎて火傷しそうな体温だ。だが、汗はもうかいていない。そして顔色に生気ない。

「行け」

 私は頭を振ってそれを拒絶する。

「嫌だ。絶対に運んでやる」

「じゃ、今、ここで殺せ」

 二人の間に沈黙が重く圧し掛かる。

「生きたままあんなモンスターに喰わせるのかよ」

 彼の手が私の手に触れる。

「シロイ……頼む」

 私の手が震える。立ち上がり、ナイフを拾ってユートの横に戻る。

「先に、向こうで……待っているぞ」

 彼が微笑む。

「うん。ちゃんと待っていなよ」

 私は彼の心臓に刃先をあて、体重を乗せて一気に押し込んだ。


ズブッ


 それは一突きで彼の弱くなった心臓を切り裂き、命を終わらせる。

 彼の体が一瞬痙攣し、静かになる。

 彼の頭がゆっくりと下向きなる。


ポタッ ポタ


 血が地面に染みを作り、広がっていく。

 ユートの、血。

 真っ赤で、少し腐臭のする、血。

 私はそれを暫く眺めてから立ち上がる。


――――抜け出さないと。外に蔦の事を教えないと


 怒り。

 悲しみ。

 後悔。

 絶望。

 そしてこのダンジョンに対する、やり場のない憎悪。

 声にならない悲鳴が頭の中で響く。

 私は立ち上がり、振り返らずに通路を歩く。


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