第60話 半ドン
ギルドを出ると正午の鐘が鳴ったので、待ち合わせの茶屋?へと向かう。
入り口の引き戸をガラリと開けると……どう見ても居酒屋だよねココって?
だが、中は割と客でいっぱいだ。
「お〜い!コッチじゃコッチ!」
奥の小上がりで、のじゃロリさんと狐さんが手を振っている。
「お2人さん、お疲れさんどしたなぁ。ウチら、ちいと先にいただいてましたんえ。」
座卓には、冷奴に厚揚げの煮物と枝豆、そして関西風お好み焼きっぽい食べ物が既に並べられている。
そしてもちろん?中央には……清酒の5合瓶がドンと。
……あ〜やっぱそうなるんだねぇ?
狐さん、自分の隣の座布団をトントンしながら手招きしている。
「うふふ♡ タマキはんも早ようコチラへお座りになっておくれやす♪。せっかくの冷酒がぬるぅなってしまいますえ?」
「あはは……皆さん、ずいぶんとガッツリ飲もうとしてますね?」
「このくらいは水じゃよ水! 町を歩いて喉が乾いたんじゃから、このくらい飲んでもバチは当たらんじゃろうて。」
「あたしたちを呑兵衛だとお思いでしょうけど、そうじゃないんですよ? 今日は『半ドン』(※1)だから、昼飲みの人も多いんです!」
周りを見回すと確かに、どのテーブルでも1杯飲っているみたい。
ま、ボクはまだ調査することがあるから程々にしとくけどね。(飲まないとは言っていない)
「それで? そっちはどうじゃったんじゃい?」
「ええ、割合良好ですよ。警察関係者の協力も取り付けたので、情報収集の精度は上がるものかと。」
「あたしの感触でも、警察組織全体がまるまる私たちと敵対することもないかと思いますよ?」
「もっとも、今日お会いした全ての人に裏切られている可能性もゼロでは無いのですが……ユリミさんとの付き合いも長いようですし、まぁそこは考えなくても良いかと思います。」
「ま、そうじゃな。ワシもあやつらとは長い付き合いじゃからの。それは杞憂というものじゃよ。」
「タマキはんは、大胆なようで用心深さもお持ちなんどすなぁ?」
「あはは、ボクはちょっと心配し過ぎるトコがあるのかもしれませんね。悪い癖です。」
おおっと……のじゃロリさん、冷酒2本めを頼みだしたよ。大丈夫かなぁ?
「ところで、そちらはいかがでしたか?」
「ウチらも『魔道士ギルド』や『魔道具屋』で話、聞いてきましたんやけどな……この1週間ほど姿を見せはらへん常連さんが、2人ほどおるらしいんどすえ?」
「いずれも、まだまだヒヨッコの魔道士らしくてのう……魔法学校出たての若い子たちのようじゃ。」
「ということは……この町でも、若い女性が相当数拉致されているものと見て間違いないですね?」
「うむ、そのようじゃの。ワシは昼からは、魔法学校の校長に会って話を聞いてくるつもりじゃ。」
「よろしくお願いします。ボクも実際に町を回ってみて、感触を掴みたいと思っています。」
「ワシは1人で大丈夫じゃから、おぬしらは3人で一緒に行動すると良いぞよ?」
「タマキはんはウチが町をご案内しますよって、そちらもお2人で行かはったらどうですやろ?」
「念のため、ってことですね。じゃあ、あたしは魔法学校にご一緒しますね!」
ということで、午後も2人1組で動くこととなった。
狐さんが何だか嬉しそうな表情。
よっぽど買い物が楽しみだったようだね?
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※1 午後半休を意味する俗語。週休2日制が増えることによって、現代では死語となりつつある。ま、この言葉知ってるんは、確実に昭和世代やろなぁ……w




