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デジデータ消滅

紀子さんの正体が遂に発覚、これは呪われてからW団8日目の話

パソコンのバックアップが始まってから数時間、夜が明けて寝ずの番で総統とエンクランスはパソコンとアライドを見守っていた。

「どうやら呪いは完璧になくなったとみていいようですね総統」

「ZZZZ〜……ん〜……エンクランス何か言った?」

「いえ、なにも」

総統は背伸びして椅子から立ち上がり朝食の用意を始めたその時。

『データのバックアップに成功……デジデータ展開開始…』

「総統!!」

「エンクランス、みんなを起こして」

布団で寝ているアライドとサリィ。

「エンクランスさん…僕生きてます!」

「アライド生きてる」

襖で寝ているアラネ、破れた襖に腕を入れて布団の中にうずくまっているアラネを引っ張り出した。

「パソコン動き出したんですか?」

水筒で寝ている水犬、水筒の中で固まっているのか最終手段、ストーブの上に置くことに。

「みんな集まった?それじゃあ…」

『デジデータを画面に展開します』

パソコンの画面に映し出されたのはあの白の正方形の部屋に四脚テーブルとまったく同じ形のパソコン。

「何ですか?これは…」

「テーブルの上にパソコンがあるだけ」

「もしかすると、デジデータとはこのパソコンの事なのでは」

『そのとうりです』

スピーカーから声が、そして画面上のパソコンが形を変えて紀子の姿に変化した。

『私がデジデータの正体です』

「紀子さんだ!!」

『デジです、誰なんですかその紀子という方は?』

画面上に映し出されたのは人間を模した完璧な女性、青のワンピースにあの長い髪が二つに束ねられ顔が見やすくなっていた。

テーブルを椅子代わりにして座りこちらを見ている。

「紀子はある映画に出てきた呪いのビデオの人で……」

『あなた方がどういう誤解をしているか知りませんが、私に人を呪い倒す力などございません』

「………?」

メンバー全員が別の意味で凍りついた。

『ですから私に人を呪い倒すプログラムも力も超能力も魔法もありません』

これが最後になるであろう、皆が庭に出て両手を広げて一言叫んだ。

「あの一週間は何だったんだ!!」

一息入れて。

「話を進めよう」

パソコンがそれぞれ見えるように横に椅子を並べて座った。

「それじゃあ、ことのきっかけから話をするのが定石だと思うがすっ飛ばして、君は何なんだい?」

(知りたい方は我々W団を読んで下さい)

デジはなにやらややこしい数字を画面に展開して、自分が何者かをスピーカーを通して話してくれた。

『私は完全自立型電脳世界人間、私を作り上げた父は親しみからデジと名をもらいました』

「完全自立型電脳世界人間?簡単に言ってくれるかな?」

『つまり、パソコンの中に人が住んでいると考えて下さい、それもまだ不完全な』

「不完全とは?」

『私はまだ成長の最中です、更に人に近ずく為学び成長するのです、インターネットを経由して』

なにやら難しい話になってきたので、話を変える総統。

「それじゃあ君はどうして捨てられていたんだい?」

『捨てられた……』

黙ってしまったデジは頭を抱え込んだ、するとデジは頭をかき始め何かを思い出そうと画面を埋め尽くす大量の文字と数字が。

「大丈夫なのこれ……」

『記録がなくなって思い出せません……私はどうしてここにいるのですか?父……父わ?』

「これは一から説明いるの?」

「いるんでしょうね」

〜〜数時間説明中〜〜

『つまりあなた方はその映画を丸呑みして私が紀子だと勘違いして、呪いを解こうと父つまり古物のマンションを訪ねて、私のバックアップデータを発見してインストールした、という流れでいいですか?』

アライドがあのCDを持って水犬にフリスビーとCDの違いを教えていた。

「……あのCD、デジのバックアップデータが入ってたんだ……そんな感じで、それじゃあこの一週間起きたあの出来事は」

画面にアラームのタイマーが表示された。

『これです、父は帰りが遅くだいたいこの時間に帰ってくるので、自動で点くようにしていたのです』

真夜中にパソコンが勝手に点いた原因がハッキリした。

「それじゃあ、デジが日に日に直っていたのは?」

『外部の付属品です、スピーカー・マイク・インターネット・カメラ、これらが私と連動しています』

総統が試しにマイクを抜いてみるとデジの耳がなくなって、慌てて付け直した。

『分かりましたか?』

「なるほど、マイクがこちらの音を拾うから耳、スピーカーが音を出すという意味で口、カメラは目といったところか」

「インターネットは何なの」

『それはこういった事です』

デジの体が褐色や白肌に自由自在に色を変えた。

「つまり、肌の色素を変えるのか」

「サリィが見た日にインターネットに繋いでましたから、アラネまでは白黒だったんですね」

「いろいと分かってきたところで、本題に入ろうか」

『どうして私がここに来たのかだいたい理解し、私の身におきた出来事を話の最中に修復しておきました』

総統達は飲み物を用意して準備を完了していた。

「ここまできたんだ、話してくれるかな?」

『あれは15年4ヶ月15日前……』

「ずいぶん正確な過去…」


当時の私はその時代のワープロ並みに古く壊れやすかったです。

その時は私の体はなく、0と1で作られ、父の手によって画面上に現れたのは簡単なドット絵、それから徐々に時代の流れにのり、私が始めて父と会話したのは、正方形のファイルにドラックという運び方で入れられ、私に口と声が。

そして、正方形の天井に文字が。

「これでいいはず、何を打ち込もうか……」

『ピーピピピーーピ』

「その前に音声設定しないと」

これが始めての会話、それから父は私が入っているファイルにいろんな情報が運び込まれました、そのたび私自信で新たなファイルを作り、棚にしまうように整理していました、そうしないとなんども私の体が固くなったからです。

次に私は耳、つまり音をいただきました。

「あーあー、あああ?あ↑あ↓、聞こえますか?」

『はい……ピーさん』

「そのいれてない言葉のときピーはやめて」

『では、お名前を』

「名前か……古物は…ちょっとな、変な方向で主人とか……」

父は名前を考えていましたが、私はすでに読み方を決めていました。

『お父さん…父……父親…』

「なんだ?そう呼びたいのか?」

『……はい』

「まあ、それでいいか、それじゃあこっちも名前を決めるぞ」

『私の名前?』

「そうだ、呼び方を決められたから何がいいかな…そういえば……」

父は何かを探り出して、それを半分に切り、私と別のもう一人の名前を決めました。

「デジ、これから君はデジだ」

『デジ……それが私の名前』

「これからよろしく、私のかわいいデジ、もう少し成長したらもう一人作ってこの名前をつけよう」

『はい…お父さん……』

そして、父はいろんな情報を私に渡して成長しました、ドット絵から二次元絵に。

「アバターと言って君にとってはコレがデジ、君の身体だ」

『コレが、私の体……』

「それに、コスチュームや部屋の着せ替えも出来る、一石二鳥だろ?」

ですが、ファッションに疎い父はいろんな付属品を私に着せ替えましたが、結局シンプルな今の姿になりました。

ですが、まだ一つおかしい点がありました。

「その目は変えた方がいいかな」

私のアバターの目が異様にキラキラしていて、身体に不自然だったのです。

『私の目がどうかしましたか?』

「ちょっと……キラキラしすぎかな」

『……少しお待ち下さい……』

私はペイントで他のアバターの目を真似ることにしました。

『どうですか?』

「目がグチャグチャ…目が死んでる…目線が下過ぎ…クマはとったほうが…病気の人の目だ…黒点は描こうよ…鋭い眼差し…丸すぎない?」

『これでどうですか?』

「なかなかいいんじゃない、ピッタシだ」

父は喜んでいましたが、その姿を見ることは出来ませんでした。

『所詮私はパソコンのデータ、目があっても私の目は光を通して色や形を認識することはない、ただの飾り』

そんな私の望みを父は叶えてくれました。

目を閉じるように言われて数分、閉じたとしても何も変わらないはずだった、しかし、私の目に電流が走ったかのように足りなかったものが差し込まれたような感覚が。

「デジ、目を開けて」

目を開ると、目の前に浮かんでいるブラウン管テレビ、そこに映された汚い部屋に幾つもの本や機器が乱雑した映像が流れていた、すると横からみすぼらしい格好の男が出てきた。

「これでどうかな?」

男は手を伸ばして何かを触ると、私の目の奥でゴロゴロと何かが動きそれに合わせてテレビの映像も動いた。

「外の映像をカメラを通して見えるようにした、どうだい」

『この方が私を創り出した父な…の……』

ようやく古物の素顔をみれると思った矢先、映像が途切れた。

『スミマセン、どうやらバックアップデータの中にこの辺りの記録は入ってなかったようです、更に父に関する映像が一片も残っていません』

「素顔の部分を自分で消したのかもしれません」

「なんでそんな事を……」

『映像はなくても私の記録には残っていますし、もう少しでこの記録は最後です、つまり、私自身の消滅』

それから数日後、父と私が自作で作ったゲーム、父はそこに私の基本データとその形を密かに入れて、その条件がデジを私自身を倒すことにしたのです。

父から目をつけてもらってからは父の身の回りを見ることが可能になり。

「デジ!家の鍵どこにおいた?」

『枕の下です』

「そうか!……合ったぞ!、それじゃあ行ってくる」

『足下にきをつけ……手遅れですね』

雑誌を踏んで転けた拍子に棚が父の真上に倒れた。

棚に置かれていたCDと資料が散乱し棚の下敷きになった父は這いずりで部屋から出た。

「もうちょっと早く教えて、それじゃあ行ってくる……」

扉の鍵を閉めて、大急ぎで出て行った父でしたが。

『あ……レポート忘れてる』

机の上にレポートが残ったまま出て行ったらしい。

『もう少し起こすのを早めようか……ん?あれは…』

倒れた棚の上に置かれていた封筒が遅れて束で落ちてきた、封筒の差出人に名前はなくただ、数字が書かれていた。

『そういえば、ここ最近謎の差出人の封筒が増えてる、何が書かれてるんだろう……』

手を伸ばして取ろうとしても届かないし取れない、目に映る光景は現実、私はデータの形をした模人間、現実の封筒を開けて読むことは出来ない、読むことの出来るのはこのパソコン宛のメールだけ。

『父は私にいろんなものを与えてくれた、でも私は何もしていない、毎日起こすことや、父と遊んだり、運んだりするだけ、倒れた父を助けたり、封筒を手に取り読むことも出来ない』

その日の夜、いつもどうりにアラームで電源が点いたのですが。

「……何度言っても同じだ、娘は渡さない、何度も封筒を送り金額を増やしても……なんだって…まさか……娘は渡さない、切るぞ」

父は帰ってきて、封筒の送り手と口論していました、その火種は。

『私…』

「デジ…聞いてたのか?」

『…いえ、何のことですか?』

父は黙って段ボール箱に荷物を積み込み始めました。

『お父さん…何を』

「デジ…明日は少し早めに帰ってくる、だからいつもより早めに点けといてくれ」

次々と荷物をまとめる父は何もいわずに段ボール箱の数を増やした。

散らかっていた部屋が綺麗になっているのは良いことのはずなのに、その日はそれ以上語らず、自ら電源を切りました。

朝を迎えるといつもはアラームで電源が点いたのですが、父自ら点けて何もせず出て行きました。

部屋には私以外のものはしまわれ閉じられ、抜かれていました。

『私…私は大丈夫…だって父は私を見捨てたりしない…きっと』

分かってるはずなのに、信じているはずなのに、電源を切ることは出来なかった。

私も自分のファイルを整理してから夜を待ちました。

その日の夜……

いつもより二時間早く電源を点けてから三十分後に玄関が開かれ、息を切らしながら父が帰ってきました。

『お父さん…どうした……』

「すまない……デジ…」

『…え!?』

父の手がカメラを掴み私の目が見えなくなり、映像が流れなくなって。

『お父さんどうして!私はあなたの娘なのに…』

「すまない…」

自分を含めて全ての色がなくなり白黒に、更に私の正方形の部屋が崩れはじめ。

『やっぱり私は駄目だったの?』

「すまないデジ」

マイクが切られ、父の声が聞こえなくなり、自分の体が消え始めた、顔が消えて、脚が消えて、腕が消え始めた。

『お父さん…わた…し…は……』

その後はよく分かりません、なぜ私は消されたのか、なぜ私はこうして生きているのか。

なぜ私は捨てられたのか……

なぜ私はまだこうして残っているのか……

会いたい……

私が父の娘なら支えになれたはずなのに……

支えになって父の悩みを聞いたりできたはずなのに…

会って父の支えになる……

会いたい……

崩れた自信の体を必死の思いでかき集め食らいつき作り直した。

これが人なら九死に一生を得たというのでしょう、事実こうして残っている、けれど綺麗なデータでなく不純なデータばかりを取り込みすぎた体はバグとなって、設定された時間に表れるバグとなり父を出ることの出来ない箱の中で待ち続けた。

パソコンの中にいない膨大なインターネットの中にいない、壁の向こうや映像の向こうでもない、見えていた越えられない世界、地上、人の世界。

「今でもその思いは変わらないのかい?」

『父と別れてからこの思いは変わりません、ただ一筋な思いで、会いたいんです』

話が終わると、総統は立ち上がった。

「ちょっと休憩していいかな」

『どうぞ、これも私と人の差ですから』

総統の後に続いてついて来る団員、デジに聞かれないように庭で話すことにした。

「凄いよね、本物の人みたい」

「自分で行動し悩みながら生き目的を持っている」

「総統、このままこの件を投げたりしませんよね?」

総統に目線が集まる。

「どうやら考えていることは同じ用じゃな」

総統達は部屋に入るとカーテンを閉めて陣形をとりスポットライトが当てられる。

『何ですか?これは』

「デジ君、君は見事復活してこの世界に戻ってきた、しかし場所が悪かった」

何もかいていない側のホワイトボードを横から出してきて反転させると黒字で悪の組織W団の文字が。

『悪の組織?…まさか、私はあなた達に利用されるの?』

「頭がいいから話が手っ取り早くすむ」

『じゃあ、今までの悲観的な態度は…』

「演技だ」

小声で後ろの団員は。

「嘘だ」

「見えないところで号泣してたでしょ」

それが聞こえた総統。

「してたけど、今は黙って」

『私をいったいどうするつもり』

姿勢を直して腕を組む総統。

「我等W団の世界征服の協力をしてもらう」

『世界征服の協力?そんなのできるわけ……』

デジの言葉を遮る総統。

「おっと、それ以上は言わなくても分かる、しかしタダで働いてもらうつもりはない」

『どういう事?まさか協力しないと私を消すつもり?』

総統は一度、団員の顔を覗いたのちに答えた。

「協力してもらうのは君のお父さんを見つけるまでだ」

『えっ…』

「世界征服をする過程で偶然見つかった場合、君を親に帰す、これが条件だ、どう?簡単だろ」

「あくまで偶然の話」

『…まって、偶然の話だとしてもこれでは私のお父さんを捜してくれるような……』

「だとしてもそれまでは粉骨砕身の思いで協力してもらう、まず我々W団の第一目標は正義の見方を倒すこと」

『正義の見方?』

「悪の組織の敵だ、そいつを倒すことで我等W団は先に進むのだ、協力してくれるね」

どうやっても私はこの世界からは出れない、外の世界の力を借りるしかない、でもこの人達なら、私の願いを叶えてくれるかもしれない。

『……分かりました、私デジは我等W団の組織に入り、粉骨砕身の思いで世界征服の協力をします』

カーテンが開けられ日差しが部屋に入ってきた。

「よろしく、デジ」

一瞬だったが、はじめて目が見えたときと声が重なり合い、消えていた父の顔がうっすらと見えたようだったが、また消えてしまった。

『お父さん…私は必ず探し出して、今度は私がお父さんの支えになります』

我等W団新メンバーデジ加入(仮)

『それでは、他の方にも挨拶をしたいのですが』

「あ…そ…それがね」

「この組織、君合わせて8人だけなんだ」

『……8?その女の子を入れてですか?』

「サリィは人質だから違うよ」

「ここにいる四人と一匹、そして水犬の元の蛍姫に情報屋のハトの二人と君」

『それで8ですか……』

「いや…確かに8人しかいないけどこれからもっと仲間が増える予定……」

総統がなにやら今後の予定的なものを話しているが、デジは話を聴こうとはせづに小文字で。

『お父さん、あなたを探し出すには膨大な時間がかかりそうです』

と、願いが叶う日がいつになるのか、そして世界征服はいつの話になるのかを考えていた。

「話聞いてる?」

……次の日の朝

いつもは総統が起きて朝食の準備をするのだが、目覚ましのメロディーがいつもとは違った。

『ちゃんちゃちゃんちゃららんちゃんちゃんちゃちゃん、さあ今日も元気にラジオ体操よ〜い、1・2・3・4…』

寝室から総統が出てきて新聞を取りに歩いていると、ラジオ体操にかぶせるようにデジが今日の天気を知らせてきた。

『総統おは5ようござい6ます7、今日の天気は8快晴で肩を湿度温度ともに伸ばして去年の平均を背伸びの下回るらしいです運動』

「ややっこしい、凄くややっこしいラジオ体操止めてから天気は聞くから、あと目覚まし時計にラジオ体操て誰が決めたの?」

『エンクランスさんです』

「総統、朝から元気ですね、どうしたんですか?」

「原因の張本人がコーヒー片手にクロワッサン食べてる」

『エンクランスさんおはようございます』

エンクランスが総統が起きたとき作って置いたコーヒーを飲みながら食卓のクロワッサン買い置きを食べていた。

「おはよう、明日は聴いてるだけで熱くなれる曲で」

『キッローの曲でいいですか?あのボクサーの』

「いいね、キッローは有名だからいいんじゃないかな」

「朝から外で走ってこいって言ってるの?その曲聴きながら」

「おはようございます総統、なにやってるんです?」

そんな茶番をしていたらアライドが起きてきた、それに続くように続々と食卓に集まった。

「まだ食事の用意すんでないのに」

すぐに朝食準備にかかる総統だが。

「総統、昨日の新聞どこにおきました?」

「総統、襖の付け替えどうします?」

「総統、爪きりどこでした?」

「総統、イチゴジャムどこでした?」

などなどで、支度ができないと思いきや。

『昨日の新聞はテーブルの脚の調整に使われています、襖は今日の午後に業者が取りに来ます、爪きりは引き出しの一番したの黄色い箱の中、イチゴジャムは切れてます』

「イチゴジャム切れてるの、じゃあブドウにしとこ」

総統の代わりにデジが全てやってくれた、そして、それぞれの仕事があるので、次々とアパートから出て行った。

「助かったよ、毎日こんなんだから、ワシも仕事あるし」

身支度をする総統、もう残っているのは総統だけ。

「それじゃあ行ってくるよ」

『総統、帰ってきてください』

「まるでこれから戦いに行くみたい、大丈夫だよ、みんな戻ってくるから、どんなに離れても、我等W団の絆は仲間以上じゃ、たとえそれが生き物でなくてもね、それじゃあ行ってくるよ」

『総統……』

「あと、これは秘かな決めごとなんだけど、みんな出て行くとき声に出さなくてもいいから、行ってきます、て言うことにしてここに必ず戻ってくる約束をするようにしている、みんなはワシが聴いてるんだが、いつもワシが最後じゃから聴いてくれる人がいなかった」

総統は玄関の扉を開き、閉じる前にこういった。

「でも今は違う、行ってくるね、デジ」

扉は閉じ鍵をかけられ、一人だけ残っているデジ、でも今は前ほど自身の電源を切ることに抵抗はなかった。

『行ってらっしゃい、皆さん、総統、W団』

電源が切れて誰もいなくなった部屋、でもそれは今だけの話、夜になれば悪の組織が動き出す、世界征服を企むためにこの部屋に集まる、それまでは静かに待とう。

冷蔵庫に貼られていたカレンダーが落ち、今日の日付に新メンバーお祝いと書かれていたのはここだけの話。


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