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ついに紀子の正面対決が始まる。
2XXX年世界は機械により安全で快適な最低限度の奉仕を受け、天国のような生活だった。
しかし、機械を制御していたコアが暴走し世界は機械が支配する地獄の地と成り変わった。
コアはもはや地球そのもの、破壊してしまうと地球は灰色の惑星となる、この事態を打開するために造られたのが、固円盤再生ロボ・バックアップ、通称BUロボである。
オープニング……
「で、コレが紀子を打開する方法なんですか?」
既に午後6時過ぎ、段ボールの裏面にあった隠されたCDを見つけたのはよかったが、パソコンに入れて読み込んでみるとなにやら変なゲームが始まった。
「でも、もうコレしか方法はないんだし楽しんでやろう、どうやらRPGじゃないようだし」
オープニングが終わりタイトル画面が出てきた。
「アーケード、VS、オプションどれにします?」
「ストーリーで」
ストーリーを選びキャラクター選択、全機体で六体、個々に特徴的な姿をしている、キーボードを触っているのは総統、付属の解説書をエンクランスが読んでいる。
「これ全部自作なのか?だとしたら凄いな…みんなどれがいい?」
「総統の好きなように」
「それではこの黒い機体で」
総統が選んだのは、BUロボ隊長プロト、機体は古いが全体的に黒く塗りつぶされた機体に肩のミサイルポットと腹部に内蔵されている粒子ビームを装着している。
ゲームが始まり2Dの格闘ゲームが開始された、初戦はキャラクター選択にもなかった雑魚戦。
「総統、コマンドは普段と一緒ではしょります、ですがこのゲームに特殊なルールがあるみたいです…」
「総統すげー!」
あっという間に雑魚戦勝利。
「だてに格ゲーしてないよ」
「まあ…きたときに教えます」
雑魚戦二回目。
順調に敵を倒す総統、コアが送りつけた刺客を次々と倒し、コアの中枢に進む。
第10戦目
力量は五分五分、自分と同じ機体で戦ってくるミラー戦、しかし、総統の方が勝っていた。
「ゲージを消費して必殺……」
『粒子ビーム砲・ブラスター』
プロトの必殺技が炸裂、変装が剥がれ落ちミラーは爆発しながら吹き飛んだ。
「総統、次でラストですよ、エンディングまでもう少しです」
「そうだね……あれ?目的変わってない?」
映像が流れてプロトが大きな扉を開き始めた、この中に暴走したコアを止めにBUロボ達は戦ってきた、この次で終わる、この中にいるボスさえ倒せば。
扉は開かれ真っ暗な部屋についた、何にもない真っ暗な部屋、総統達は見覚えがある、あの紀子が出てくるときのあの真っ暗な部屋。
「総統……まさか…」
突如、プロトが入った扉が閉まり、正面から明かりが灯りだし、真っ暗な部屋は真っ白な正方形の部屋になった。
その部屋の中心に人が一人立っていた、アライドと水犬が見た垂れ下がった髪、エンクランスが見た口、アラネが見た耳、サリィが見た青のワンピース、総統の見た眼。
「紀子だ……ラスボスは紀子だー!!」
そこには完全な人の姿をした紀子が立っていた。
「あなた達のせい……あなた達のせい……呪ってやる呪ってやる……」
「総統!今がチャンスです!」
エンクランスが声を上げて、硬直していた総統を起こした。
「戦闘は始まってます、紀子は見たところ何の装備もしていないただの人です、なにかする前に……」
「叩く!」
プロトのブースターで一気に距離を積めて、もっとも攻撃が早い弱から入った。
「何もしない敵を攻撃するのは正直、気が進まないけど……当たれー!」
『ジャストガード』
紀子は驚くべきスピードでプロトのジャブを防ぎ、背後に回り、体格差が二倍もあるプロトの背中を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたプロトは前のめりに倒れ込んだ。
「何!?さっきのは、ただのガードじゃない」
「ジャストガード、単発で隙は大きいが相手の攻撃にあわせて押すと攻撃は当たらず、相手は攻撃モーションをとったまま固まるというガードのカウンター応用技」
「応用技!?なんで紀子が使ってるの!?」
「総統!紀子さんの体が……」
青のワンピースが紀子の体を覆い隠し、みるみるうちにキャラクター選択にいたキャラに変身した。
BUロボ対装甲操縦ロボ・デジ、人の形もとい身長も模したロボ、他の機体に比べ一番小さいが他の機体に乗り込むことによってその力は更に向上するサブ的なキャラクター、武器は主に体術、人の形を模しているため無茶な動きもでき、更に両手に装着している細い釘を打ち込むことで、内部から破壊する。
「総統…心してかかって下さい、あの紀子……相当強いです」
紀子が走って近く。
「体術なら遠距離から攻撃する、ミサイルポット10連弾」
両肩の武器を紀子に向けて撃ち込み、紀子は爆煙の中に包まれた。
しかし、何事もなかったように紀子はガードと回避していた。
「大丈夫、確信はないがこの機体はそうとう強い、紀子の一発ぐらい軽い軽い」
総統は後ろに下がり防御の態勢、だが、紀子には関係なかった。
上段ガードを下段足払い攻撃で外して、そこに更に下段から蹴り打ち上げ、打ち上げられたプロトにジャンプで追いつきボディに中強の二連打、もう一度ジャンプして二連打、仕上げに空中掴みで、プロトの首に紀子の両手がそえられて、落下直後に両手から首に釘を射出。
プロトのライフをごっそりと持ってかれた。
「………」
思わずキーボードから手を離す総統、そして一言。
「上級者だ!!」
「なんですかあの動き、どこぞの格ゲーの動きでしたよ」
「私たちも出来るかなあの動き」
「アラネちゃんなら出来そうな気がする」
「総統、顔を画面に戻して、まだ終わってません」
しかし、どんなに抗っても的確な差し込み、素早い行動、なにより攻撃を無力化するジャストガード。
プロトの機体に数々の釘が打ち込まれ、四肢が動かせない状態に陥った。
「紀子に負ける」
紀子がプロトに近づいて、とどめを刺した。
『釘刺しショット』
BUロボの弱点に差し込むとどめ技、プロトはそのまま打ち込まれた反動で、背中から地面に倒れた。
「プロトー!!」
完敗、敗北、壊滅、紀子に勝てなかった総統達に待っているのは、命のタイムリミット、精算が待っている。
貰ったパソコンに呪われ、とどめを刺された総統は長針が10時を回っている時計を見た。
「もう10時!?」
「えっ!?」
どうやら全員が気づいていなかったらしい、残り2時間、それ以内にこのゲームで驚異的テクニックの紀子を倒さなければならない。
「総統は休んで下さい」
「エンクランス……」
「総統は少しやりすぎです、僕らにもやらせてくださいよ」
「アライド君……」
「面白そうじゃん、驚かされた分キッチリお返ししてやる」
「アラネちゃん……」
『僕も僕も!!』
「水犬……出来るの?」
残り2時間、W団VS紀子の闘いが始まった。
コンティニューからやり直しが出来て、ホッとする一同、アライドが紀子と戦闘する事になった。
「あそこまで強いって事はもともと強いキャラなんですよ」
アライドは紀子と同じデジを選択、戦闘が始まった。
「攻撃をさせない、速攻の攻めをくらえ!」
アライドは紀子には攻撃をさせないように隙あらば釘打ち、連打、詰めて連打連打。
「いいよアライド、紀子を押してる」
一見アライドが優勢に見える攻防だが、エンクランスから見たらアライドの方が押されていた。
「イヤ…駄目だ、アライド君は決定打を入れていない、ライフは削れているが、あれはガードで軽減された釘打ちのみ、いずれアライドの特殊武器の弾が尽き……」
「あ……尽きた…」
紀子の目が光り動いた、紀子はアライドが使うデジの握られた拳両方を両手でそれぞれ掴んだ、そこに温存していた釘打ちをここぞという感じで、打つ打つ打つ。
「アライド、紀子から離れろ」
「出来ません、しっかりと掴まれて……」
打ち込まれた釘が肩に飛び出した。
「両肩が動かせない……」
「蹴りだ!」
残された足で渾身の一撃を放ったが、その足を脇腹でガッチリと捕まえられ、軸にしていた足を払われ、背中から地面に倒され、紀子の手が顔にそえられた。
『釘刺しショット』
アライド敗北……
「アライド君…残念だけど……」
しかし、アライドはこの戦いであることに気づいた。
「紀子の…つまりデジのライフは小さい、プロトは何回も当てられて、やっと倒れたのに対して、デジはたった一回のコンボで倒された」
次はアラネの番、使用する機体はBUロボ災害地用運搬ロボ・グモ、蜘蛛型の機体に六本の脚を自由自在に動かし、先を尖らせることで、刺すことも出来る、そして、二段階に分離して小さくなれる。
「……蜘蛛だから選んだの?」
「そうです、それにコッチの方がやりやすい」
サイズはNo.1の大きさ、故に分離して小さくなれるようになっている、プロトが人形のサイズぐらいに見える。
試しに残骸のプロトを刺して持ち上げ、もう一本刺して、真ん中から二つに裂いた。
「アラネちゃん酷い…いちよう隊長機……」
「これならガードなんて関係ない、この脚でくし刺しにする」
戦闘開始、珍しく紀子が先に動き、グモの弱点に向かって走る、機体が大きく蜘蛛型で動きが鈍いごり押しタイプの機体。
「この機体はただ脚を自由自在に動かして攻撃するだけじゃない、グモ特有のあれも出せるのよ」
『ネットガム』
口元から網が飛ばされ紀子に当たった。
「動きにくいでしょ、すぐに動きやすくしてあげる……」
紀子は必死にはがしているがガムのように離れない。
「当たれー!」
紀子に向けて脚がおろされる。
しかし、的を外して紀子の肩をかすめただけになった。
ネットガムから解放された紀子は肩をかすめた脚に捕まり、グモの弱点である胴体に内蔵されている本体に近づいた。
「させない、もう一度」
グモがネットガムの体勢に入ったその瞬間、グモの口にあたる部分が開ききったところに飛び込んだ紀子、ネットガムが発射される前に無理あり口に釘打ちをした。
「しまった!このままじゃ」
グモはそのままネットガムを発射、だが、閉ざされた口に当たり、使用不可になり、紀子はグモの背中に乗り、弱点に迫る。
「アラネちゃん!!」
「分かってます、分離!!」
紀子が弱点に釘打ちする一歩先に分離が成功、サイズはデジより少し大きめな感じ、本体が抜けだし、残った脱け殻は崩れた。
「今度はちゃんとした格闘戦、かかってきなさい」
だが、アラネの健闘も空しく分離、サイズは紀子の足先より小さくなった。
トドメは紙で虫を摘むように簡単に潰された。
「害虫のように潰された」
『次は僕が行く』
BUロボ探索兵器・ドグ、犬型の機体にどんな場所にも潜り込めるように製作された。
しかし、結果は悲惨な物だった、キーボードに脚をおいてみたら、他のボタンをおして、思うように動かずに一方的な攻撃が続いた。
「やっぱり水犬には無理か……」
トドメは釘刺しショットではなく最初から最後まで投げで終わった。
「あれ?この終わり方どっかで見たような……」
「次は私が行きます」
BUロボ重装甲兵器ガド、あらゆる攻撃をその両手につけてあるシールドで防ぎ道を開ける目的で造られたキャタピラ使用の強行突破専用機。
「この機体はもともと動きは鈍く戦闘向きではないが、間接部の隙間、弱点を極限までなくしたのがこの機体、紀子さんから見たらこの機体こそ苦手な分類」
「そうか、デジの基本的な戦い方は釘打ちの弱点攻撃、コンボをかさねてもトドメはどうしても釘打ちになる、さすがはエンクランス頼りになる」
「それでも、ガドには決定的な欠陥がある」
紀子とエンクランスの闘いが始まった。
エンクランスはすぐに全体のシールドで防ぎに入りながら後退した、それに続き紀子が追いかける。
「やはり見逃してくれないか……」
「どう言うことですか?」
紀子がガドにある程度近づくと、ガドの背後に回り込もうと方向転換、エンクランスもそれに合わせながら紀子を背後に近づけないように壁を目指す。
「なるほど……ガドの弱点は背中側に集中していて、壁を背にして戦うのが利に関するんじゃ」
「それまでに後ろをとられたら釘打ちのバーゲンセール、ガドは後ろに攻撃も転換も出来ないキャラ、だからこそ逃げ続ける」
しかし、いくら逃げても双方ブースとなしの自分の走行だけで、なかなか勝負がつかない、紀子もガドを壁にちかづけさせないよう考えて行動してくる。
すると、急に紀子の動きが鈍りチャンスが訪れた。
エンクランスは見逃さずすぐそばの壁に背中を預けた。
「よし、これで紀子に勝てる」
エンクランスは紀子に疑いの目を外せずにいた、ガドのいるのは四隅のちょうど端、右肩が壁に当たって動かしにくくなっていた。
「しまった、紀子は両手が自由に使えないように片方の肩が壁にぶつかって動かしにくいように四隅のどこかに誘導してたんだ」
「それでもガドの優勢は変わらないでしょ?」
「そうでもない」
紀子が迫る、ガドは真横に方向転換するにはキャタピラの軸を変えるしかない、それはすぐに場所を変えれないという事、場所を変えるには結局、一度壁から離れないといけない、ガドにとっては中途半端な位置に誘導された。
「右肩が使えないっていう事はガドにとっては右側半分が使用不可状態、シールドを構えても右側は守りきれない紀子はきっとそこをついてくる」
ガドは無理やりシールドを構えたが、紀子は右肩に乗り、装甲が分厚顔面に拳のラッシュ。
「このままではガドの顔面の装甲が外れて、無理やりにでも釘打ちをしてくる」
ガドの頭部が崩される、このままでは壁を背にしなくても、いつかは負けてしまう、エンクランスが考えた末、とった行動は。
ガドを急前進させ上半身だけを回転させる技で紀子を振り飛ばした。
「せこい事はやめます、正々堂々とこのシールドでスクラップにして見せましょう」
両手のシールドを拍手するように何度も叩き合わせ、強行突破専用機の名に恥じない特攻を見せた。
紀子は特攻をその身で止めようとシールドを構えたガドに挑んだ、結果は目に見えていた、紀子はいとも簡単に押され、足に火花を散らし壁に急接近する。
「潰れろー!!」
壁に激突、紀子は潰れたと思いきや、激突寸前に真上に飛び逃げしていた。
「見逃してくれなかった分、こっちも見逃しはしない」
『シールドプレス・粉砕機バージョン』
紀子の落下地点にガドの棘が出たシールドを構えて待ち受ける。
紀子はなんとか避けようとしたが、片腕を代償に技を避けた。
「紀子にやっとダメージらしいダメージがはいった」
紀子が地面に倒れた、立ち上がろうにも片腕を始めて失った紀子は立ち上がるのに時間をかけている。
「もう一度潰してやれば立ち上がれないだろう」
ガドの急発進が再度、紀子に襲いかかる。
だれもがエンクランスの勝利を祈り、確信した…。
だが、長針と短針が重なり、コンパスで言う北の方角をぴったりと指し示し、時の音を刻み鳴り響いた。