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物語はいつ迄も続いていく

 これはただ目立ちたいと思った『アニメのモブの役割を当てがわれた女の子』の物語だ。


 ずっとそう思っていた。


 でも『そうじゃなかった』みたいだ。違うな……これじゃ説明になってないや。



 明確には分からないから、私は十分の中でこう結論づけることにした。




 物語や熱中していることに『没頭』することが誰しもあると思う。

 その度に私は思う。それは『自分の気持ちをその中に置いてくる行為』なのだと。それに熱中するほど、浸っている時間が長ければ長いほど、色濃いものになっていく。



 きっと私はそんなものたちの残滓みたいなものなのでしょう。

 そう思ったら、自分がこの身体になった時のことを覚えていなかった理由も説明がつくような気がする。



 でもさ、そんなのはもう関係ないんですよ。


 今、『私』という存在がここにいる。

 この世界の外側の『私』がどう思っていても関係ない。




 ただ私はこの子の、エルフリーデの幸せを願っている。

 それを守り続けたいだけなのだ。





 『彼女を悪役令嬢にしないための10の方法 その10

                        自分の心に正直になればいい』





「お待たせして、申し訳ありませんでした。わたし、お話したい事があるんです……聞いてもらえますか?」





 物語の結末っていつも難しなと思います。


 歯切れの良いもの、後味の悪いもの。


 何を言っているか分からないものもあれば、蛇足の連続で台無しになってしまっているものだってある。


 でも私は思うのです。

 そんな物語だって、存在するだけで素晴らしいって。


 でもそうですね。願わくば私はやっぱり物語の結末は幸せに満たされているべきだと思う。

 どんなにチープであっても私は、うぅん……きっと誰もがこう思っているはずです。

 完全無欠のハッピーエンドがあってもいいじゃないですか。そんな物語が一つくらいあったって、誰も困らないはずだって。


 だから私はいつまでもこの人たちを見守り続けます。

 些細だけど、大切で掛け替えないものを守るために、全力でこの身体でこの世界を生き抜いてやるのです。



 こんなお話の結びがあったって別にいいですよね?













「ねぇ、お願い……目を開けてよ」


 なんですか? もう疲れちゃったんですけど。


 精神は完全に擦り切れてしまった。


 同じように身体だって。だから今は静かにしておいてくださいよ。




 あれからどれくらいの時間が経ったのでしょう。

 すっかり私は身体も弱り切ってしまって、寝そべっている時間が増えた。そして今声をかけてくれている人の顔すらちゃんと見えなくなってしまっているのです。


 絶対忘れない、私の大事な女の子だ。まぁ女の子と呼べる年齢ではなく、立派な女性に成長しているけれど。



「お願い、側にいてよ。ずっと一緒だったのに。貴女がいたから……」



 何言ってるんですか。わたしは何にもしていませんよ。



 変わったのは、貴女の成果。

 良くなったのは、貴女の実力。


 そして貴女はこんなにも人に愛されているのに……




「ねぇ、目を開けてよぉ。ねぇ、……ィー」


 あぁ、そう言えばずっと呼ばれたことなかったなぁ。


 いや違うのか。呼ばれていたけど自分の耳が、心が受け付けていなかったんだ。


 それを受け入れたが最後、自分が本当にただのペットになってしまうって、そう理解していたから。


 だから、わたしはずっと



「ねぇ。ソフィー、おねがい。目を、開けて?」



 あぁ、良いなぁ。

 大事な人に名前を呼んでもらえるって、こんなにも満たされるものだったんだ。


 知らなかった、知りたくなかった。


 もっと、呼んでほしい。


 でも、もう聞こえていた音が遠くなっていく。


 代わりに自分の中にある音だけになる。



 どくん、どくんと徐々に大きく


 ゆっくりと静かに




 そして音は止まってしまう……





 私が、終わってしまう。




























 ねぇ、可愛いでしょ?


 そうですね、なんだかあの子を思い出しますね。


 あぁ、あの子ですか。確かに、聡そうなところもそっくりです。





 誰ですか? せっかく人がゆっくり寝てたのに。



 どこの誰かはわからないけど、すごく聞き覚えのある声が鼓膜を叩いた。


 でも誰だったっけ? わたしはずっと見守っていた、あの女の子だ……姿は思い出せるのに、何故だか名前だけが出てこない。


 あの子に幸せを沢山もらった分、今度はわたしたちが沢山、沢山貴女を幸せにしてあげるね?


 あら、もうこんな時間じゃないですか。

 殿下からのお呼び出しに遅れてしまいますわよ。


 さぁ、行きますよ。“エルフリーデ”


 えぇ、レオノーラ。ハルカ。





 その声に閉じかけた瞳が否応なく見開かれる。

 その瞬間視界に入ってきたのは、大きな鏡に映し出された赤ん坊の姿。


 おい! なんですかこれ? こんなお約束じみた結末、認めませんよ!


 でも、まぁいいか。なんだか幸福に包まれているような気がしてなりませんからね。


 あぁ、今度はどんな幸福な毎日を過ごす事が出来るのか。彼女は、そんな幸せを私に与えてくれるのか。



 今はそれを楽しみにしながら、夢の世界に旅立つことにしましょう。



 きっとこのお話の続きは、私が自分で切り開いていくもののはずですからね。


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