ライト、天狗になる。
実はライトは、昔。あくまでも研究者としてたが、自分はドクター所長より優れてるんでは無いかと、思っていた。
最新の論文や特効薬は全てライトが作っていたし、同じ研究をしても、より詳しく結果を出していたのは自分だった。
研究者としては、自分の方が上だと確信を持っていた、ある時に、アン様にこの事を伝えた。それを聞いたアン様は、少しニコッとして言った。
「ライト。その気持ちは大事ですよ。これからも、精進して頑張りなさい、心はしっかりと持つのよ」
この言葉を聞いてライトは、意味がわからなかった。怒られるのを覚悟してアン様に言ったからだ。逆に少し励まされてしまったのだ。
ライトは、アン様とのやり取りを、看護師部にいる嫁のボタンに話した。
「ボタン。僕は、研究者としては、ドクター所長寄りも優れていると、思っている。それを、アン様に怒られるのを覚悟して話したが、逆に励まされてしまったのだが、どう思う?」
「ライト! なんて事を言ったのですか! 私は、恥ずかしくて明日、アン様にどんな顔して会ったら良いか、わかりません」
「ボタン。どうしてだ? 最近の研究結果や、論文は全て僕がやっているんだぞ?」
「ライト! アン様に言われた事を良く肝に命じておいて下さい! その内に分かります」
ライトは、アン様に言われた事やボタンに念押しされた事については、正直意味がわからなかった。
そこから一ヶ月程経った日、災害級の疫病が流行しようとしていた。
この災害級の疫病の病原菌を、発見し無事に特効薬の作成を、行い解決したら、ドクター所長本人に伝えようと、ライトは考えていた。
この時、ドクターは別の地域で診療していたので、不在だったが、自分だけでも大丈夫な自信があった。
だが、実際に分析を開始すると何かの糸口は見えているが、その先がわからないといった状態だった。そこから、数日が経ってしまい、いよいよ疫病が流行しようとしていた。
ライトは、焦っていた。今までは、どんな細菌でも電子顕微鏡で見れば、直ぐに見れたし、そこから特効薬を作るなんてのは、朝飯前だったのに、この細菌だけは、糸口しか掴めなかった。
そこに、ドクターが帰って来た。
「ライト。どうだ? 何か見えているか?」
「いえ。何も」
「そうか。ライトでも見えないのか。これは災害級の細菌かな」
ライトは、研究者としては、自分が上だと思っていたので、ドクター所長にも見えないだろうと思っていた。
そうこうしている内に、ドクターが分析を始めた。ライトも引き続き分析を開始した。
この時が、二人が机を並べて研究した初めての日だった。




