ドクター覚悟を決める。
部屋に連れて行かれたドクターは、慌てていた。アンにただならぬ気配を、感じていたからだ。
アンが話しかけて来た。
「ドクター所長。覚悟をお決めになって下さい」
「アン。ちょっといきなり過ぎて覚悟というかなんか……」
「ドクター所長! こんなチャンスは、二度と無いですよ!」
「いや、私はしないと決めているのだ! それに、アンは酔ってるだろう?」
「私が飲んでいたのは、ぶどうジュースですよ」
くっそー やっぱりグルだったか!
ドクターは、それはどんな行為か良く知っていたが、した事は無かった。今まで、医療行為一筋で来たからだ。
「もう、私からこんな事を言うのは懲り懲りです、こんな事言わせるのは、今日で最後にして下さい! さぁ! 覚悟を決めて下さい」
「けど、アン。もう、夜も遅いしあんまりアルコールを飲んでからすると良く無いって言うぞ」
「何を言っているんですか! こんな時しかチャンスは無いではありませんか! いつも逃げてばっかりですからね」
「うっう〜 でも痛いしなぁ」
「私のは、痛く無いと良く言われますので、大丈夫です! さぁ、早く準備して下さい」
「アン。私は、歳も若くなったしあの時の年齢とは、違うのだ、だから大丈夫です」
「歳の事を言うんですか! それを言ったら長くなりますが、良いですかね!」
「はい、分かりました。覚悟を決めましたので、優しくお願いします」
「では、まず上着を脱いで下さい」
「はい、脱ぎます」
「そして右手を出して下さい」
「は、はい。出しました」
「台に手を置いて下さい」
「はい。置きました」
「では、右手親指を中に入れてグッと握って下さい」
「はい。握りました」
「それでは、入れる所をアルコール消毒します。ここの血管に、刺しますのでじっとしてて下さい」
「アン。最後に確認だが本当にするのか?」
「何度も言わせないで下さい、採血をします」
アンが注射器を、血管に刺そうとした瞬間、ドクターが逃げようとした。
「やっぱり嫌だぁ〜」
アンはすかさず、ムナシを呼んだ!
「ムナシ! 抑えて下さい」
「はい! 只今」
へぇ? ムナシどこにいたの?
抑えてつけられてしまったドクターは、アンにすかさず採血されてしまった。
「ドクター所長。無事に採血が済みました。血を止める為、五分間程刺した箇所を押さえて置いて下さい」
「はひぃ。分かりました」
「ムナシ採血したドクター所長の血液をライトの所に持って行って、どこか病気が無いか血液検査を頼んで下さい」
「アン様。わかりました」
「頼むわね、ムナシ」
ドクターは産まれてから一度も血液検査をした事が無かった。アン達は、前の世界の時からドクターが病気になったら心配で、検査を受けて下さいと頼んでいた。
「アン。五分たったか?」
「まだ、です」
ドクターは、医療行為をするのは好きだが、されるのは大嫌いだった。なので一度も注射という医療行為をしてこなかったのだ。
「ドクター所長。五分立ちましたのでもう結構です。今度は、人間ドックも受けて貰いますからね!」
「アン。嫌です」
「ダメです!」
もう、イヤ〜




