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皆が無言で食事をしていると眉間に皺を寄せていたグリムがポツリと言葉を漏らした。


「…あいつは元気か?」


「あいつ…?

あぁ母様ですか?

元気ですよ。」


「………そうか。」


そう呟くとグリムはまた食事を始めてしまう。


一体何なんだとシェリルが首を傾げると物凄い速さで食べ終えたグリムが席を立つ。


「……あいつに悪かったと伝えておいてくれ。」


「えっ?」


「あとたまには実家に顔を出せと伝えておいてくれ。

……ここはあいつの家なんだから。」


それだけ告げるとグリムはホールを出て行ってしまう。


ポカンとしているシェリルを見てクリスがくすりと笑った。


「…本当に素直じゃないだろう?」


「……はい。」


「でもあれがあの人に出来る精一杯なんだ。

大人になったからこそ拗らせに拗らせて素直に言えない事って沢山あるんだよ。」


「…大人って面倒臭いですね。」


「……そうだね。」


クリスが優しく笑う。


シェリルは何となく頭の中に母親を思い浮かべた。


何があったのかは分からない。


でもこれを聞いたならきっと喜ぶんじゃないかと思えたのだ。


きっといつもの様にへーと普通の顔をしながら耳だけ赤くして。


その様子を想像してふわりと笑みが零れた。


そんなシェリルを優しくクリスが見守っていた。






「…ねえ母様。」


ある夜の帳が降りた時間、シェリルは母親の寝室の扉を開けた。


部屋の中では父親が本を片手にワインを飲み母親もジョッキに継いだ麦酒を飲みながら本を読んでいる。


シェリルは部屋の中に足を踏み入れた。


「…ねぇ母様、クリス伯父様に聞いたのですが。」


「なんですか?」


「『似非王子と欠陥令嬢』という物語を教えて下さいませんか?」


シェリルの言葉にキャロルとルシウスは目を見合わせる。


戸惑った様な顔をしていたが諦めた様にルシウスがふわりと笑った。


「…長い話になるよ?」


「構いません。」


「そっか…。

じゃあ座ってくれるかい?

…さぁ、どこから話そうかな。」


ルシウスとキャロルはゆっくりと似非王子と欠陥令嬢の物語を語り始めた。


その物語を語る声だけが夜を迎えた部屋にいつまでも響いていたという。

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