第七話 力点
敵情と言うが、具体的にどこのことなのか。
それが問題だ。
動くにあたっての問題は別にないんだけど。
「我らも各地に散っているが、正直足りていないのだ。」
ダンディさん曰く、忍者の数が足りてないんだとか。
人手不足はこんな世界にも。
世知辛いねー。
そんなとこにポップアップしたのがこの俺。
NPCを鎧袖一触にする力を持った、パッと見とても優秀な忍者。
しかしその実、無駄にイケボで叫びながら敵を蹂躙するローラーニンジャである。
ひとまず細かい事には目を瞑ることにしたらしい。
良い判断だと思う。
「どうか、頼まれてはくれぬだろうか。」
そう言って浅く頭を下げるダンディさん。
後は俺が頷くかどうかなのだが。
チラリと周囲の気配を探ってみる。
拒否ればデストロイかな?
口封じ的な意味で。
ダンディさんはそんなことしないと思うけど、周りがちょっと前のめり気味に。
身体はともかく気配がね。
判り易すぎる。
そんな重くなりそうな空気の中、俺は特に悩むことなく頷いた。
実際問題なんてないし。
それに、今回のクエストはJAPON全土を網羅しないと完結しない筈。
だったら方針が示されただけ、良かったとするべきだ。
毎度の事だが、クエスト中に明確なヒントが掲示されることはない。
後から考えると、あれはヒントだったのかなー?って思うことがある程度。
だから、なるべく気を付けるようしてみたんだけど……。
功を奏したみたいだ。
「そ、そうか。頼まれてくれるか!」
俺が頷いたことで、ダンディさんは喜色満面に。
喜色満面のオッサンとか誰得。
でもダンディさんなら許す。
* * *
そして俺は越後へ侵入を果たした。
ちょっぴり緊張したんだけどね。
うん、楽勝だった。
途中、幾つか影が降ってきたけど全部切り伏せた。
「三印・気配周波」で察知した見知らぬ気配は全てデストローイ!
やっぱ忍術は優秀だわ。
これで叫びさえしなければ……。
さてさて。
とりあえずの目標は村上何某。
あと長尾……景虎?
ま、軽ぅーく様子を探ってみますかね!
……おやおや?
何か軍勢が居る。
どこかに向かってるねー。
こーゆーの、詳細希望されてるのかな。
ま、いいや。
ちょっと近付いて確認してみよう。
* * *
ちょっと近付いてみるだけの筈が、何故か潜入してる件。
つい出来心で!
で、確認したところ集団は長尾の軍勢で間違いないっぽい。
向け先は越中だとか。
敵は椎名とも、一揆衆だとも。
越中かー。
信州とも繋がりが多少あるし、一応見ておいた方が良いかな?
それとも、越後国内を隈なく散策する方が先だろうか。
思案のしどころですなー。
しかし、今はそれどころじゃない。
どうやら長尾は中々優秀らしい。
俺の周囲に多数の気配。
全滅させるのは容易。
だが、軍勢の中で暴れまわるなんて特別な作戦でもなければニンジャのやるこっちゃない。
一旦離れて様子を見よう。
それでもなお、ついてくるならば……。
ちょこっと離れた丘にまで来た。
遠目に映る軍勢は粛々と行軍を続けてるようだ。
そして俺の周囲には、後方を中心として多数の影。
正面にも数名。
いやはや、大胆だね?
失笑を禁じ得ない。
コメディ風の路線は断念しようと思います。
次の更新は一週間後くらいの予定です。