第八話 作用点
「忍法!ハリネズミィィーーッッ!!」
緑深い林野に響き渡る、謎のイケボ。
発生源は勿論、この俺。
相変わらず場違いでガッカリ感が甚だしいが、間違いなく強力な忍術である。
ハリネズミのように、丸めた背中から半放射状に細長い突起物を飛ばす。
いや、ハリネズミは針を飛ばしたりはせんが。
無数の突起物──通称”針”──は、何かにあたるか一定距離飛ばねば消えない。
その距離は「烈光券」や「手裏剣」よりは短いけど十分だ。
ま、プレイヤーなら見てから回避余裕でしたってなるんだけどな。
だってハリネズミよろしく、顔と腹には”針”がないから。
安地ってやつ。
しかし、NPCに対しては効果絶大。
正面に居る奴以外は、軒並みハリネズミ状態になっちまうのさ。
「忍法・ハリネズミ」
効果は上記の通りだが、何でハリネズミなんだろうか。
いや、ハリモグラが良いと言う訳じゃないぞ?
ただ、ヤマアラシの方が格好良いと思うんだよ。
漢字で書けば山嵐。
──忍法・山嵐──
ほら、なんか良い感じ!
しかも、「忍法!ハリネズミィィーーッッ!!」って叫ぶんだぜ。
イケボで。
ガッカリ感が加速してるのは間違いない。
まあそれはそれとして。
後方にいた雑魚NPCは37564だぜ!
でも正面の、特に真中に居る奴はちょっと手強そうかな?
* * *
「……っ」
前方の敵さんは、無言で苦無を投げ付けて斬りかかって来た。
真中に居る奴も棒手裏剣で狙いを付けてるのが判る。
中々の連携。
だが甘い。
「龍鋭塵ッ」
イケボで叫んで斜めに全力で撃ち払う。
以前、手加減して撃った奴とは訳が違うぜー。
容易く二名をドロップアウト。
その瞬間、真中で棒手裏剣を投げてた奴は身を翻して即撤退。
おお……っ。
冷徹な判断、素晴らしい。
ここまで見た中で、ダンディさんに次ぐ力量の持ち主と見た。
ならば、捕えるしかないだろう!
撤退に移った奴を庇うかのように攻勢に出る他数名。
「龍鋭塵ッ」
これって複数を同時に倒せるから汎用性が高いんだよな。
本来の用途はもっと別なんだけど。
まあいいか。
周囲の雑魚を容易く屠ると、撤退中の奴を視認する。
……よし。
「空蝉─分捕─」
忍法・空蝉─分捕─。
発動すると、まずは静かにイケボで諳んじる。
忍法なのに叫ばないと思った?
残念、そうだったらどんなに良かったことか……。
空蝉はいわゆる分身の術で、俗に言うシリーズ技/派生技ってやつでね。
今回使った「分捕」は、敵を捕えることに特化したものだ。
術者が視認した相手をロックオンし、捕えるまで追い続ける。
効果は捕まえるか、術者の精神力が途切れるか分身がぶった切られるまで。
便利なようで、格下や初見でしか使えない。
更に、
「ァアァッ、分捕ッタァリィィーーッッ!!」
分身がイケボで叫んだ。
どうやら無事に捕えたらしい。
結局は叫ぶ。
因みに、精神力が途切れたり的にぶった切られると
「ァアァッ、ムッネェェーーンッッ!!」
と言って消える。
うるせぇ、さっさと消えろ!
そう、何度思ったことか……。
このように、使い所が難しいのは例によって例の如くなのであった。
今回は、事前に敵勢は全て排除。
周囲に気配もない。
相手も力量的にNPCで格下。
俺の精神力が物理的に削られる以外、理想的な状況だった。
あとはコイツから良い情報が得られれば、言うことないんだけどなー?
次回更新日は未定ですが、今月中には更新したいと思います。




