SS・夏と言えば・・
ルフツネイルの寮は、貴族王族を多数抱えているので非常に豪華である。
下手な宿等勝負にもならない。
授業が終わり帰ろうとしていた僕は呼び止められ、その一室に招待されていた。
部屋には僕を含めて六人。
これからするのは怪談話。
何でも夏が近づいたら、怪談話で盛り上がるのが常識らしい。
一人目は深夜に徘徊する透明な老婆のお話。
正直あんまり怖くない。
「お前らそんな作り話怖くも何ともないぜ。俺が本物の怪談を教えてやるぜ」
そう自信満々に言うのは、フューレからの留学生ビダル。
そしてゆっくりと語りだす。
【ビダルのお話】
それが始まったのは、フューレとリリオルの戦争の最中さ。
アルマン城には地下があって、俺の叔父さんがそこの警備をしてたのさ。
その日も警備をしていたら、誰もいないはずの貯蔵庫から話し声が聞こえたんだ。
剣を構えてドアを開け、中を確認した叔父さんだったけど、中には誰もいなかった。
空耳かと思って安心したその時、はっきり聞こえたんだ。
子供の「アハハハ」って笑い声が!
顔面蒼白になって辺りを見回す叔父さん。
恐怖はそこで終わっちゃいなかった。
目の前にはユラユラ揺れる人魂。
そして明らかにさっき聞いた声とは違う「ぶひゃひゃひゃ」と叔父さんを嘲る声。
余りの恐怖に逃げ出した叔父さんは、その足で警備を辞めたのさ。
叔父さんからの手紙には、今でも貯蔵庫には戦争で命を落とした、子供と父親の霊が出るらしい。
「それって一日だけだよね?」
何となく心当たりがあるような・・・人魂は多分フェンリルの炎だ。
「今でもって言っただろ。これは作り話じゃなくて、現在進行形の話しなんだ」
えっ・・・そんなはずないよね?
何がどうなってるんだろ。
【アルマン城最上階】
「警備の者が怖がってますから、いいかげんにお遊びは止めて下さい」
「何の話だ?」
シモンに詰問されグレイは惚けている。
「地下に出る幽霊ですよ。あれ貴方でしょ?」
「何だ気付かれちまったか。わかったもう止める」
グレイの内心は、やっと気付いてくれたかと、にやけている。
「それからガンツ商会から寄付がありました」
「寄付なら珍しくないだろ。わざわざ報告して来るまでもないぞ」
シモンは訝しげな表情を浮かべている。
「いつもより桁が一つ多いんですよ。寄付金としてはフューレ最大になります。それからガンツ商会のフィリップが貴方に宜しくと。何かやりましたか?」
「記憶にないな。戦争は金が掛かるんだ有り難く貰っておけ」
フューレ・リリオル戦争の時、最上階に侵入して来た少年。
その身体からはアルコールの臭いがした。
グレイはこの少年が何処から、誰の手引きで侵入してきたのか、すぐに気付いた。
その罪でガンツ商会を、御用商人から外すのは簡単だった。
だがガンツ商会はよくやってくれてはいるし、外して後を継いだ商人がガンツ商会以上に役に立つとは考えにくい。
結果的に少年の宣言通りパパスが来て、戦争は終結したし城は多少壊されたが死者はいなかったので、別段被害もない。
かと言ってこのまま不問にするのも面白くない。
誰かが気付いてガンツ商会を糾弾する前に、幽霊騒ぎは自分だったとしてうやむやにする。
そしてフィリップを、この件で脅迫して多額の寄付金を出させたのである。
斜陽の王国フューレを昇らせる面白さを追求する男。
それがグレイ・ラングウッドである。
【終】




