シールド消失
《年齢はお前がいない間に113歳になった。恩師の誕生日くらい顔を見せろよ》
「それは謝ります。ところで中隊長が地球くんだりで一体何を? 任務ですか?」
《地球へ来るような任務などあるはずがないだろ。お前じゃあるまいし》
「しかし、あなたも熱心に地球に執着しているようですが? 昨日の玩具もあなたが木星の技術を使って作ったのですか?」
《そうだ。俺は技術屋じゃないからあれが限界だ。地球にある物質も限定されるしな》
「木星人に聞くのは無意味だと言う事はわかっていますがあえて聞きます。なんのために? やはり気まぐれですか?」
《いーや。俺は今回だけは目的がある。お前が地球へ行く前から準備していたんだ》
海へ出て、陸地から十分に距離をとったところで二機のOVER DOLL は静止した。
「演習なら・・・俺に武器を与えて欲しいところですね」
《ふん・・・。残念だがこれは不利な状況でお前がどこまで戦えるかという最終課題だ。昨日はヒロ・リラ・ミリンが助け舟を出してきて驚かされたが・・・。もうあいつは木星に帰ったようだな。お前一人で何ができるかやってみろ》
黒いOVER DOLL はライフルを構えた。シンは残像を残して左へ飛び、すぐさま直角に上に上がる。
「何ができるか? 木星人にしては不明瞭な事を言う!」
ネロスの両腕部からレーザーが放たれる。それは一つにまとまり黒い機体のシールドに当たった。
《こんな攻撃じゃあ、俺を堕とすのに丸一日かかるぞ!》
黒い機体は顔をネロス向ける事無く、ライフルだけを上方に向けて放った。
「くっ・・・」
プラズマ弾に弾かれるようにネロスは体勢を崩した。
《シールド95% 直撃には気をつけてくださいね シン》
「フル教官が相手だと分かって気が楽になった! 彼の操縦のくせも俺には分かるっ!」
《シンとフルの対戦成績は 210勝12敗でフルが遥かに勝っているようですね それもそのはず フルは50歳から150歳の第二若手部門で一位の方ですからね》
「ひ・・・150歳でも若手なんだ・・・・」
驚いて口に手を当て、信じられないと言うような表情をしている羽月にシンは言った。
「300歳以下は若手だ!」
モニターは青いプラズマ一色になる。ネロスの目の前を、打ち下ろされたプラズマ弾が通りすぎた。
「あ・・・あれ当たっちゃったら私達死んじゃうの?」
「5発までは大丈夫だ!」
[ドォーン]
背中にプラズマ弾を受けたネロスは急降下をする。水面ギリギリで体勢を立て直し、大きな波しぶきを上げながら空へと上がる。
「あ・・・と、4発ね」
「その通りだ。賢いな、羽月」
「そのくらい分かるわよ!」
怒った口調だったが、シンを抱きしめている羽月の手は震えていた。
「フルオートでレーザーを撃ち続けろ。狙いはシールド発生装置!」
《敵のシールド依然変化無し このままでは相手の言う通り 24時間かかってしまいます》
「奴を海に落としたらなんとかならないか?」
《無意味です 敵のシールドに変化は表れません プラズマライフルの威力は若干落ちますが それ以上にこちらのレーザーの威力は半減します》
「これでは昨日の二の舞だ。何か無いのか? お前は、機体じゃなく、お前こそが新型なんだろ!」
《その通りです 時間をいただければ ある作戦が可能になります》
「何だその作戦は?」
[ズガーン]
正面からプラズマ弾を受けたネロスは体をのけぞらせながら、海面と平行に飛行をする。
《そのためにはもう少し生き延びてください》
「もったいつける奴だな! 新型の特徴か!」
ネロスは空中で後ろにバク転をして姿勢を正し、静止して黒い機体の出方を伺う。
《ユリ知っているか》
フル教官は通信でシンに話しかけてきた。
《先ほどお前とA・I以外の声が聞こえたが・・・。女を乗せているのか?》
「そうです。乗せて戦ってはいけないとはあなたから教えてもらった記憶はありませんしね」
《それは西原羽月と言う地球人じゃないか?》
「・・・・。良く分かりましたね。・・・どうしてそう思ったのですか? 数いる地球人の中から」
《やはりそうか。「知っているか」と言うのはその娘についてだ。お前とその女との遺伝子的繋がりを知っているのか?》
「い・・・遺伝子っ? ・・・私とシンが・・・繋がっている・・・って何? おじさん!」
羽月が堂々と二人の会話に割って入った。
《お・・・おじさん? 俺はまだ113歳だぞ・・・。まあいい。シンはお前の子孫だと言う事実を知っているのか?》
「・・・・。えっ! ・・・・。えっ! シンが・・・私の・・・子孫・・・。子供の子供とかって感じで・・。うそだぁ!」
羽月はシンを精一杯の力で抱きしめた。
「絶対嘘だ! だって私もシンも17歳だもん! おかしいじゃないっ! それに・・・それに私はまだキスもしたことないしっ! 第一・・・だいいち・・・。私とシンの血が繋がってたら・・・ダメじゃない! それって禁断じゃない! 知ってても私知らない振りしちゃうよっ!」
《言い方が悪いですね フル教官 まあ私も人の事は言えませんが》
ネロスに続いてシンが口を開く。
「こいつから聞いて知っている。だが、もう気にしない事にした」
「うそっ! シン知ってたの? あなた確信犯? 妹属性、姉属性?」
羽月は席を立つと、シンの顔を覗き込んでいる。
《私はあえてシンを焚きつけるためにそう言いましたが その言い方は正確ではありませんよね フル教官》
《かもしれんな。ではお前が教えてやれ・・・。時間はそれほどないぞ》
間髪いれずにフル教官はライフルを放った。虚をつれたかと思いきや、シンはそれをかわす。避けながらも、飛行しながらも常にレーザーで黒い機体の背面に付いているシールドジェネレーターを狙う。
《ユリよ、本気か? 木星人らしからぬ無駄な事を》
「日本には『雨だれ石を穿つ』と言う諺がありましてね、・・・あったかな?」
「あるわよ。シン・・・もしかして今までのテスト全部満点だったけど・・・。ネロス君にやってもらったんじゃないでしょうね?」
「とにかくだ、無駄と分かっていてもやってやる!」
「あー。ごまかしたぁ」
ネロスは時には螺旋飛行、時には直角・180度と角度を変え、何とかプラズマをかわしながらレーザーを叩き込む。だが・・・。
[ドオーン]
ネロスは敵を飛び越え、上下逆さまになって敵の後ろを捉えたかに見えた。しかしそれはフル教官が誘った罠で、後ろも見ずにライフルを向けて弾を放っていた。
《シールド21% あと一発食らったらダウンです》
「なぜだ! まだ三発。あと2発は大丈夫なはずだろ!」
《何度かかすっています 累積的に一発分差し引いてください》
[ドガーン]
「くうっ・・・・。くそっ!」
海面に向かって落下をするネロスに追撃のプラズマ弾が直撃する。海に落ちたネロスだが、少し離れた海面から姿を現した。しかし、その機体からは海水が滴り落ちる。シールドは完全に消失していた。
《ここまでだな》
ネロスの上空にはしっかりと狙いを定めている黒い機体がいた。
丁度、ネロスは見下ろされるような形になる。




