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僕が英雄?記憶にないんですけど?  作者: 髙龍


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第十六話

解体所の職員達の悲鳴は聞かなかったことにして午前中に預けた分の代金を受け取って冒険者ギルドに併設されている酒場にやってきた。


「1人あたり銀貨5枚か。臨時収入としてはまぁまぁだな」


「これで今日も思う存分、酒が飲めるな」


「本当にサノスはお酒好きよね」


「これの為に生きてるようなもんだからな」


素面のサノスが絶対に言わないようなセリフである。


「まぁ。好きは人それぞれだ。それにこうして飲んでる俺らもそう変わらないだろ」


「それもそうね」


酒場は多くの人で賑わっている。


ここでは基本、喧嘩は禁止だが酒の入った冒険者同士で熱くなり殴り合いになることもある。


「おい。お前ら。新人の癖にずいぶんと稼いでるみたいだな?」


そう言ってスキンヘッドのチャラそうな男が話しかけてくる。


「おいおい。勘弁してくれよ。俺らは狩りで疲れてるんだ」


「そういうなよ。親切な先輩冒険者がアドバイスをしてやろうってんだ」


「間に合ってます」


「そうそう。うちには優秀なサノスがいるもんね」


「サノス?聞かない名前だな」


「まぁ。登録したばかりのルーキーだからな」


しれっとサノスはそう言ってエールを飲む。


「なんだ。ルーキーかよ。猶更、俺の言うことを聞いた方がいいと思うんだがな」


「う~ん・・・。サノス。パパっと追っ払ってよ」


「おいおい。争いごととか勘弁してくれよ。酒が不味くなるだろ」


「このままじゃ、私達が楽しく飲めないじゃない」


「仕方ねぇなぁ。おっさん。俺と腕相撲しようぜ。負けたら消えな」


「おいおい。そんなひょろっこい腕で俺に勝つつもりか?」


サノスはどちらかと言うと痩せ型の体系だ。


「おっさん相手なら余裕だぜ」


「そこまで言うなら乗ってやらぁ。後悔しても遅いからな?」


サノスとスキンヘッドのおっさんは椅子を器用に2つ並べて即席の勝負台を設置する。


「準備はいいか?はじめ!」


ジントの開始の合図でサノスは一気に勝負を決める。


「痛ってぇぇ。てめぇ。何しやがる」


「おいおい。これは勝負だって言っただろ?それにあんた相手なら何度やっても結果は同じだ」


「くっそ。覚えてろよ」


そう言って赤っ恥をかいたスキンヘッドの男は酒場から出て行った。


「今のどうなってるの?」


「そうそう。どう見ても勝てなそうに見えたけど」


「からくりは簡単だ。強化魔法だよ」


「強化魔法?」


「魔力で肉体を強化してるんだ。詳細は明日、教えてやるから今は飲むぞ」


サノスはそう言って追加のエールを頼みつつ酒を堪能する。


明日、教えてやるといった効果だろうか。


深く追求されることはなかった。


が、サノスは他のことを考えていた。


少し面倒なことになりそうだ。

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