アリサ9
「貴女があのサファイアを持っているそうね。言い値で買ってあげるからおとなしく差し出しなさい」
なぜ厄介ごとはお父様がいない時にやって来るのだ。
サファイアの石言葉に心の成長というのがあったが、わたしの心は強制的に成長させられているみたいだ。
主に平常心や我慢という分野で・・・
「わざわざ屋敷までお越しになったのに申し訳ございません。マリーナ様が仰っているサファイアはすでに出入の商人に売り払って目の前のチョコレートに変わっております」
「はぁっ!」
侯爵令嬢とは思えない底冷えするような声でにらまれた。
事実をありのまま話したのにこの扱いはひどい。
「え、あのサファイアをお望みでしたら出入の商人を呼びますのでしばらくお待ちください」
人払いさせられた為に廊下で待機している従業員に伝言を頼もうと席を立つ。
「待ちなさい!」
どうやらこの厄介ごとはまだ終わらないようだ。
私はソファーに座り直す。
「貴女、本当は転生者なのね。本物を隠して似たような物を用意させるつもりでしょうけれどそうはいかないわよ」
「・・・」
「やはりね。あの女を退けたくらいでいい気にならないことね。おとなしくあの方の事は諦めなさい。それが身の為よ」
それからしばらくの間、意味不明な言葉に耐えていたが、出入の商人がやってきてサファイアの首飾りを差し出したことで私は解放された。
廊下で聞き耳を立てていた従業員が呼んでくれたみたいだ。
お父様に特別手当をつけてもらえる用に頼んでおこう。
ちなみに出入の商人がマリーナ様に提示した価格は私が売った時の二倍だった・・・
商人恐るべし。




