1 傲慢な少女?
暗く豪華な部屋、そこに女性というには少し幼い女の子がいた。艶のある金色の髪の毛、自信を表す様な紅い瞳、幼さと色気が不思議と共存する顔は黙っていれば儚く美しく見える。しかし、その美しい顔を歪めながら文句を垂らす。
「サイネス、なんで今からお父様に呼ばれなければいけないのだ」
「姫様、私には分かりませんが魔王様からの呼び出しですのでここは大人しく従ってもらえませんと……」
あー、イライラす。私は私の好きな様に生きて好き自由に生きたいだけなのに。その為の力だしその為の魔法、それを得る為の才能と努力をしてきた。それを認めない人達の事は私は興味がない。私は父の様に魔界での平和やましてや人間界、神界との関係も興味がない。気に入らなければ無視をしたら良い。害をなすなら黙らせば良い。そもそも人間の世界は魔界と違って魔素が少ないから本来の力が出せないから行きたいと思わないし。神界は論外。あー、イライラするのだ。
折角力あるのに弱き者に合わせる意味が分からないのだ。不平があるなら皆努力をしたら良いだけのことなのに。
「ひ、姫様、少し魔力を抑えて頂けたら有り難く思います」
「ちっ、真祖と呼ばれるお前が私の漏れ出した魔力如きでグダグダ申すな」
「し、しかし、姫様の魔力ですの力のない者は命すら落としかねませんのでどうか抑えて頂けたらと…」
どいつもこいつもそんなくだらない事ばかり気にしよって。転移魔法を起動させお父様の元へと転移する。
「ふむ、転移魔法か……ハンナ、私はサイネスと共に来いと言ったのだが?」
「はぁ、それはサイネスが転移魔法を使えないのが悪いのでしょ?こんなくだらない魔法私は3歳の頃には使えたのだ。それを1000年は生きている真祖と呼ばれるヴァンパイアであるサイネスが使えないなんてさぞ怠惰に過ごされてる証拠ではないのですか」
「……お前の優れた魔法の才は魔界は勿論いつしか神界、人間界と共に平和で豊かな未来が見られると思ったがお前は王になる器では無い」
才か…。何をしても才能才能、たった1人の子供である私の事も見てないのに何が平和だ、くだらない。
私の中の冷たく暗い気持ちが広がる。無駄に豪華なのにどこか暗く冷たい私の部屋と同じだ。
「お言葉ですがお父様、私は王になる事など興味ないのだ。好きな様に生きるだけです、力ない者や才の無い者などどう生きようか好きにしたら良いのだ」
「封印魔法陣展開」
「く、何をするのですか、お父様、しかも私を拘束出来る力など…まさか、神と組んだのですか、恥知らず」
「お前の力はいつかこの世界に災いをもたらす、どうかお前の力が正しく使える様に」
く、どんどん魔力が体の奥に押し込められていく、魔法陣から伸びた神聖な鎖が拘束して外れない。何が災いをもたらすだ、ふざけおって、何も見てこなかった……何も見てこなかったお前なんかが私の何が分かる。
もう殺す。今殺す、影の中から7柱の悪魔が出る。私に勝手に着いてきた悪魔や私に害をもたらそうとしたから平伏させた悪魔達。何が平和だ、しかもそんな下らないものの為に娘である私を神と手を組んでまで殺そうとするなんて、殺す。押し込まれそうな魔力を暴走させる、今まで私は……私の力は1度も裏切った事はない。他の奴らは皆私を恐れ遠ざけ……父ですら私を殺そうとした。信じられるのは私の力のみ…だけど今はその力さえ私の思い通りにならない。悪魔に命令を出すが誰1人聞かない。自分の魔力が封じられ拘束が解けたのか…
私は意識を失う前に父の言葉を聞こえた気がした。
「お前の心が正しい物になれるよう願っておる」
姫様がいなくなった部屋で姫様が残した悪魔だけが残る。力で抑えた者が力を失った姫様を主人と認める訳もないだろうに。
もしかして、魔王様は本当に姫様を殺してしまったのだろうか。
「サイネス、ここに残った6柱の悪魔をそれぞれ戻してきておくれ」
「無、無理です……この6柱は大罪様達です」
「何故此奴らがハンナに協力していたのか…」
魔王様と話をしていると6柱の大罪様達は興味を無くしたのかこの場に漂うプレッシャーと共に闇の中へと消えていった。しかし姫様は何処へ。
「あの、姫様は……」
「ふむ、人間界に送っただけだ、力を封印してな」
「それでは姫様は生きておられるのでしょうか」
「あぁ、ただあいつの力は6割ほど封印しているの、そもそも人間界では魔素も少ない」
「それでは姫様に危険が…」
「神に協力をして作った魔法陣だ、しょうがないだろ、そうなったらあいつの自業自得だ」
「すみません魔王様、姫様は本当に災いをもたらすのでしょうか……」
「それはそうだろ……あれ、何故私は、神と人間界の事を話し合っていて……サイネス、すまぬ、頭痛が酷くて少し休む」
「……魔王様」
評価やブックマークして頂けたら幸いです。