第53話 刺客による攻撃
いつも誤字を指摘していただきありがとうございます。自分で気づききれていないので非常に助かります。
第53話~刺客による攻撃~
なぜ俺はここまでリッチモンド伯爵にこだわっているのか。
あり方が木山に似ているからというのが大きな理由であるのは間違いないが、ここまで俺の心を揺さぶるのはそれだけではないのは明らかだ。
『たの……む……。息子を……』
ギレ―火口で殺した魔族の言葉。この言葉が脳にこびりついて離れないのだ。
俺に親の記憶などない。だから親子の情などと言う感情などわからないはずなのに、それなのにこの魔族の言葉が俺にリッチモンド伯爵への執着を大きなものにしていた。
人が何かに執着する原因など、そう大したものではないのだ。ほんの小さな心に残る何かが人を動かす最大の原動力となる。俺にとって、この魔族の言葉がそれだったということに過ぎないのだ。
「顔が怖いの。何に憤っておるのかは知らんが、もっとリラックスしたらどうじゃ?」
「そんなに怖い顔してたか?」
「それはもうやばいですよ!!目が狐みたいに吊り上がってます!!」
どうやら俺は自分で気づかないうちによろしくない表情をしていたようだ。
確かにこのところリッチモンド伯爵関連のことを考えすぎて、思考に余裕がなかったのかもしれない。
相手の出方を考え、そしてその裏をかき、時には利用をして相手を陥れる。そんなことばかり考えていたせいか、自然と顔にそういう考えが出てしまったのだろう。
「恭介さん。一度休憩しませんか?今の恭介さんの状態はよくないです!!リフレッシュが必要です!!」
「そうじゃな。思えばお主、ここまでずっと動きっぱなしじゃろう。この世界に来てから休みもなかったのではないか?」
思い起こせばエリザの言う通り、地球からこの世界に召喚されて、一日としてまともに休みをとったことはなかったかもしれない。
もちろん寝て過ごしたことはあったが、あくまでそれは怪我や進化などでやむを得ない事情があったからだ。
「だけどなぁ」
休みは魅力的だが、今はリッチモンド伯爵の問題は優先したいという気持ちが強い。今の気持ちを抱えていては、休んでもしっかりとした休息をとれる気がしないのだ。きっと頭の片隅からリッチモンド伯爵の影が消えず、結局はすぐにカムイへと向かうこととなってしまうだろう。
「スルトはどう思う?」
自分の意見を優先したいところだが、パーティーで動いている以上、他の意見を蔑ろにするわけにもいかない。
なのでもう一人のメンバーである、スルトにも意見を求めてみた。
カナデとエリザは俺に甘い傾向があるので、ここは一歩引いた視点から冷静に俺を見れるスルトに聞くのが一番だとも思ったのだ。
『二人の言う通り、お前ずっと怖い顔してるよ』
「ですよね!!スルトさんもそう思いますよね!!」
『だけど私はお前の好きにすればいいと思う。気になることがあるならやりたいようにやるのが一番だ。仕方ないからフォローくらいはしてやるよ』
驚いた。
というのが俺の素直な感想だった。ここまで言動も含めて子どものような印象だったスルトだが、実は一番の大人なのかもしれない。
二人を見てみれば、俺と同じ感想を抱いたのか驚きを浮かべた表情でスルトを見つめていた。
「まずいです。恭介さんの中でスルトさんへの好感度が爆上がりです!!このままではスルトさんルートに一直線です!!」
「子どもだと思っておった妹が大人になるのを目の当たりにした姉の感覚とはこのようなものなのかの」
二人は放っておくとして、どうするか。実際カナデとエリザが俺のことを気遣ってくれているのは素直に嬉しい。
やはり俺の人生の中でそう言う存在はいなかったので、純粋に俺のことを心配してくれるという行為そのものが嬉しいのだ。
だが同時に、やはりこのままリッチモンド伯爵のところに向かいたいという気持ちも同じくらいに強い。
いろんな思いが混ざり合ったこの気持ち悪い感覚を払拭するには、早急にリッチモンド伯爵と対面するのが一番だと思うから。
「なぁ二人とも、気持ちは嬉しいんだけど……」
やはりこのまままっすぐにリッチモンド伯爵のもとへ向かおう。そしてこの件が片付いたら4人で少しゆっくりしよう。そう提案しようとした時だった。
「おいおい、こいつらを殺せば報酬がもらえるってのか?冗談もいいとこだろ」
人の神経を逆なでするような耳障りな声が背後から聞こえてくる。周囲を見渡せば、いつの間にか数十人の男たちが俺達を取り囲むように立っていた。
「頭、間違いなくこいつらですぜ。手配書通りの面してやがりますもん」
「そうかそうか。まぁ金をいただけるなら何でも構わねぇがな」
どうやら盗賊の集団のようだ。子分と思わしき雑魚臭しかしない男の言葉によれば、どうやら俺達は指名手配をされているようだ。
出どころは間違いなくリッチモンド伯爵だろうが、どうやら向こうも手段を選ばなくなってきたということだろうか。
「おかしいですねー。これだけの人数がくれば気づくものだと思うんですが」
「簡単なことじゃ。力が強くなりすぎた弊害じゃよ。あまりに自身が強大になりすぎて、雑魚に対するセンサーが鈍くなっておるんじゃ。人が足元の虫に気づかないのと同じ。裏を返せばその程度の奴らということじゃよ」
なるほど。カナデと同じ疑問を持っていた俺にとっても、目から鱗の答えだった。そしてそこまで自分が強くなっていたことに少しばかり嬉しくなる。どんな世界だろうと、根本は俺も男だ。強くなるということは素直に嬉しかったりする。
「どうやら現実が見えてないようだが、これから死ぬんだ。目を逸らしたくもなるだろうよ。もっとも女は俺達が楽しませてもらってから死ぬんだけどな。なぁ、お前ら!!」
盗賊の頭の言葉に下衆な笑いが響き渡る。
「燃やしますか」
「そうじゃな。それがいいじゃろう」
『カナデ、やっちまえ』
卑猥な目を向けられた方としては、盗賊たちに対して嫌悪感しか出ないだろう。だがそれは俺も同じ、いや、もしかしたらそれ以上だったのかもしれない。
「……」
無言で収納から取り出した槍を全力で横に薙ぎ払った。
俺の攻撃力のステータスはすでに1万を超えている。人間のトップである600程度のステータスでもその辺の岩くらいは割れるのだ。その数値をはるかに超える攻撃力をもつ俺がそんなことをしたらどうなるか。
「「「え……?」」」
俺達を取り囲んでいた盗賊たちのちょうど半分、簡単に言えば俺の前にいた奴らが全員真っ二つになった。
槍による横なぎはその勢いで真空刃を生み、不可視の刃となって盗賊を切り裂いた。避けることなど敵わない。刃を向けられたものはただ死あるのみ。
「人のものに手を出そうとして、生きて帰れると思うなよ?」
こうしてリッチモンド伯爵の仕向けて来た盗賊という刺客との戦いが始まった。違うか。虐殺の間違いだったな。
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