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第51話 化け物にふさわしい末路

第51話~化け物にふさわしい末路~


 俺が当初予想していた展開は、アンダーソン子爵の死ぬ直前、もしくは死後に強力な何かが現れるというものだった。


 このクジョウの街は北部地方で規模も2番目であり、なにより場所的に北部地方の交易の要となる街だ。


 その街をリッチモンド伯爵が放置しておくはずがない。いくら子飼いのアンダーソン子爵が統治しているとはいえ、この男はただの馬鹿だ。欲にまみれ自分を利する行為に目がくらむ、典型的な失敗者のタイプ。


 遅かれ早かれ反乱を起こされるのは目に見えていた。


 それをこの街に来て短時間である俺が気づけたのだ。長く北部地方を収めるリッチモンド伯爵がそれに気づかないはずはない。


 当然、それに備えた何かしらの策を打ってきていると俺は推測していた。


 反乱をおこさせない策として、圧倒的な武力を見せつけることで力で押さえつけた。


 次に時折甘い汁を吸わせることで、反乱への気をそいだ。


 それでも従わなければ殺してしまい、口を塞いだ。


 それらを行う練度の高い兵士達。暗殺者の集団。地下に潜む拷問官。全てを排除しこの反乱を誘発したが、最後の砦たる者だけはついに今日まで見つけることは出来なかったのだ。


「そりゃ見つからないわけだ」


 先の方法でも抑えられず、反乱を起こされアンダーソン子爵が失脚した際にリッチモンド伯爵に都合のいい展開とは何か。


 簡単なことだ。反乱を先導した全ての者が死んでしまえばいいである。


「な、なんだよあれ!?」


「いいから逃げろ!!あんなの普通じゃねぇ!!」


 兵隊長の剣で確かに貫かれたはずのアンダーソン子爵が起き上がった。しかもただ起き上がったのではなく、その体からは黒い霧が吹きあがり、膨大な魔力を辺りにまき散らしながら起き上がったのだ。


 黒い霧はアンダーソン子爵を包み込み、その容姿を劇的に変化させていく。


 小太りで小柄だった体は筋骨隆々の大男に変化した。その姿は例えるならハルクとでもいうのがいいだろうか。


 しかしその目に意志はなく、虚ろな瞳から読み取れることは何もない。


“検索結果:対象のステータス。『ハインツ・アンダーソン』

黒の呪法により人が魔物へと堕ちた姿。圧倒的な膂力と魔力を得る代わりに知能などの全ての機能を放棄した。術者の指示にのみ従う生ける屍。

レベル:61

      攻撃:1887

      防御:1232

      素早さ:1439

      魔法攻撃:1764

      魔法防御:1667

      魔力:1427”


 反乱者の標的はアンダーソン子爵となり、彼が殺されるときには必ず周囲にそれを成した人物たちがいる。


 だったら殺されたアンダーソン子爵を使ってそいつらを殺してしまえばいい。それがリッチモンド伯爵の策だ。


 子爵の死をトリガーとして発動する呪法。対象を魔物と化し、術者への隷属状態に貶めるおおよそ倫理的に求められるはずのない魔法。


 ステータスを見るに、この世界の人間で真正面から戦って勝てる者はそうはいない。おそらくだが魔物と化した子爵に反乱の目を軒並み殺させて、ある程度したところで伯爵自身がこの騒動を収束させるという口実で子爵を殺すのだろう。


 いかに絶対的なステータスがあろうとも、術者に絶対服従な以上、大人しく殺されろと命じられればそれに従う他はないのだから。


「グアアアアアアァァァッ!!」


 子爵であった者が咆哮を挙げる。すでに先ほどまで周囲にいたものは退避を始めるか、もしくは腰を抜かしてその辺に転がっている。


 このままでは大惨事は必至。一体何人が死ぬか、いやこの街が沈んでもおかしくはない。そしてそれがリッチモンド伯爵の目的なのだから援軍はこないだろう。


 何事も壊れかけを直すよりも、全て壊してから作り替える方がはるかに楽なのだから。


「みなさん!落ち着いてください!!」


 絶望と焦燥に包まれたパーティー会場に突如として響く声。咆哮をあげる魔物と逆側、その場所で声をあげた人物がいた。


「あれがアンダーソン子爵の真の姿です!あれこそこのクジョウの街を陥れようとしていた元凶なのです!!」


 そう声を上げた人物。誰であろう、シュライデン・リッチモンドその人だ。


「私はこのことをとある情報筋から知り、そして止めるために今日やってきたのです!私の騎士と共に!!」


 魔物の咆哮に負けない声を張り上げ指をさした先にいたのは、一人の鎧に身を包んだ騎士。つまり俺だ。


「敵は強大です!!ですが、我が騎士ならあれを容易く倒すことが可能です!!」


 シュライデンの声に魔物が反応した。視線がシュライデンを捕らえた。どうやら獲物として完全に認定されたようだ。


 獰猛な瞳。それはただ捕食者が獲物を見つめる視線そのもの。問答無用に殺される。そこに情けなど一つもない無慈悲な視線だ。


 だがシュライデンはそこから一歩たりとも引かなかった。よく見れば震える膝と手を固く握り、必死に虚勢を張ってそこに立っていたのだ。


「十分だ。後は俺に任せろ」


 だから俺は収納から槍を取り出すと、一気に魔物、アンダーソン子爵との距離をつめた。シュライデンの横を通り過ぎる時に、そう一言だけ告げて。


「欲にまみれた奴にお似合いの末路だよ」


 肉薄する距離まで迫った俺に対してアンダーソン子爵は反応することが出来ない。ステータスがいかに高いとはいえ、所詮俺の10分の1にも満たないのだ。そもそも勝負にすらならない。


 龍槍術の派生スキル、『魔槍召喚』。それによりあらたな槍が召喚される。


「ゲイ・ボルグ」


 朱槍がおおよそ槍にありえない軌道で一気にアンダーソン子爵へと突き刺さった。


 ケルト神話において、クー・フーリンが使用したとされる伝説の槍の一つ。投げれば30の鏃となって降り注ぎ、突けば30の棘となって破裂する。この槍の持つ逸話はいくつもあり、いわく突かれた者は必ず死亡するという話もあるほどだ。


 その槍が魔物と化したアンダーソン伯爵の顔面、しかもど真ん中に突き刺さる。回避などできようはずもない。


 槍を喰らった子爵の辿る末路は死、それのみ。断末魔すらも許さない。槍の一撃により今度こそアンダーソン子爵の命は散っていった。


 後に残されたのは、何が起こったのかわからずにその様子を見ていた兵士や招待客と、返り血にまみれた俺だけだった。



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新連載を開始しました。 【『物理特化ですがなにか?~魔術は苦手だけど魔術学院に入学しました~』 是非こちらもよろしくお願いします!!
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