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第48話 クジョウのトップ、ハインツ・アンダーソン

第48話~クジョウのトップ、ハインツ・アンダーソン~


 それから3日後の夜の事。


 陽が落ち、屋敷の周囲に明かりが灯される時間となったころ、屋敷には続々と人が集まり始めていた。


 今日はこのクジョウの街のトップである、ハインツ・アンダーソンの誕生日であり、屋敷で行われるのはそれを祝う盛大な誕生日会だ。


 アンダーソンもまた貴族であり、その爵位は子爵。どうやら今日で45歳になるようだが、その年で誕生日会とは笑ってしまうというものだ。


「貴族にとっては誕生会も立派な社交場なんです。キョウスケさんには馴染みないとは思いますが、おそらくマリオット公爵家でも行っている行事かと思いますよ?」


 俺の嘲笑を見たシュライデンが俺にしか聞こえない声でそう囁いた。


 シュライデンには俺達のことは南部地方の冒険者だとしか伝えていないので、貴族のことは知らないと思ったがゆえの説明なのだが、生憎もともと地球の日本にいた俺にとってはどちらにしても馴染などない。


 ただでさえ俺の人生の中で誰かに誕生日を祝ってもらったことなど一度としてないのだから、余計に蔑みの感情しか出てこないという物だ。


「シュライデン、段取りは覚えているな?」


「もちろんです。緊張を通り越して気持ちが高ぶりすぎているのが少し心配なくらいですよ」


 その誕生会のパーティー会場に俺達はいた。本来なら顔パスで入れるだろうシュラインデンは、今や抹殺対象のためそれは難しい。


 それでもこうして俺達が屋敷に堂々と入ることが出来ているのは、執事長がこちらの味方になっているからに他ならない。


『こっちも配置につきました』


 耳元で聞こえるのはカナデの声。カナデ達には別の仕事を頼んだのだが、円滑にそれを行うには双方向での通信が不可欠。


 通信魔石はマリオット公爵との通信分しかないし、これから手に入れるのは難しい。


 ならどうするか。ないなら作ればいいんじゃね?


 というわけで久々にインデックスによる検索機能と、錬金術による錬金でこの世界には存在するはずのない通信機を作ったのだ。


 電波の発信のための水晶が不足していたりと多少の問題はあったが、その辺りもミスリルというこの世界独自の鉱石によって、通常の通信機などよりもむしろ上質なものを作ることが出来ていた。


『しかしこれすごいですねー。恭介さんだけじゃなくて、エリザさんやシュライデンさんの声も聞こえますもん』


『儂も長く生きておるが、こんな便利なものは見たことないの』


『私にも使えるのが尚いいよな』


 通信機の向こうからは、別動隊3人からの称賛の声。この程度の通信機であれば、地球では珍しくもなんともなかったのだが、やはりこの世界では珍しいのだろう。


 科学技術で世界を支配することも夢じゃないのかもしれない。


「今宵はこのクジョウの街の長、ハインツ・アンダーソン子爵様の誕生会に御出席頂き誠にありがとうございます」


 俺達やカナデ達が各々配置についたころ、パーティー会場の奥、一段高くなったステージ上で執事長による挨拶が行われ始めた。


 執事長からの挨拶が続く中、壇上の端から小太りの男が姿を現した。貴族らしく煌びやかな衣装に身を包んではいるものの、それを着ている本人の姿から、衣装に負けているとしか言いようがない。


「皆、今夜は私のために集まってくれてありがとう。私はこれからもクジョウの街、ひいてはこの北部地方を発展させていくためにいかなる労力も惜しまないつもりだ。我が盟友であるリッチモンド伯爵と共に北部地をさらに盛り立てていきたい。そのためには皆の協力が必要だ」


 小太りで頭頂部の髪が薄い。代謝ののせいか、短い演説の中でも汗をかき唾を飛ばしながら熱弁を振るう。


 どこぞのブラック企業にでもいそうな姿なの中年。それがハインツ。アンダーソン子爵の容姿だった。


「本当ならリッチモンド伯爵も今夜来てくださる予定であったが、火急な用とのことで来られなくなってしまった。だが言伝は預かっている」


 アンダーソン子爵の言葉にパーティー会場にいた全ての人が耳を傾ける。これもまた、さながらどこぞの企業の朝礼のように感じてしまう。


「『今夜はそちらに赴くことが出来ずに申し訳なく思う。これからも北部地方のために皆の力を私に貸して欲しい。その前にまずは我が友であるアンダーソン子爵と素敵な夜を過ごしてくれ』」


 読み上げられたリッチモンド伯爵の言伝に、会場内から拍手が巻き起こる。


 なんだこの宗教は。ブラック企業ではなくやばい宗教団体というのが正解だったのかもしれない。


 しかしこの短い挨拶の時間からでも、いかに北部地方の他の貴族たちがリッチモンド伯爵に支配されているかが分かるという物だ。


 誰一人として伝言に顔を背けず、誰一人として嫌な顔一つしない。果たしてそれが真の信頼か、背後での恐怖政治のせいかなのかはしらならいが、リーダーとしてのカリスマ性が見てとれた。


「それでは今宵は楽しんでくれ。私も大いに皆と楽しみたいと思う」


 その言葉でアンダーソン子爵の挨拶は終わり、本格的なパーティーが始まる。


 そうだな。せいぜい楽しんでくれよ。お前の最後の誕生日パーティーを。


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新連載を開始しました。 【『物理特化ですがなにか?~魔術は苦手だけど魔術学院に入学しました~』 是非こちらもよろしくお願いします!!
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