第10話:「日本でのお仕事②」
「ん? つまり、未来を見たいということか?」
私の問いかけに、彼はコクコクと首を縦に振る。
私は、それを聞いて安心した。
ただ魔法を振るうだけで仕事になるのなら、簡単なことだ。
「なんだ、そんな簡単なことか。どのくらい先を見たいのだ?」
彼の依頼に私はあっけらかんと答えると、驚いた表情に変わった彼は私に畳みかける。
「は…………! か、簡単なことなのですか!! どのくらい先を見通せるのですか?」
「ん………。最大魔力を使えば10年先ぐらいまで見えるが、疲れるから最大1日ぐらいにしてほしいな」
コロコロと変わる彼の表情ににやにやしながら、私は質問に答える。
「一日ですか! では、とりあえず1時間先の画面表示を教えていただけますか?」
「良いぞ、任せろ」
私は意気揚々と答えると、目の前のモニタに意識を集中する。
未来を見る魔法は、物体の時間を巻き戻す魔法と一緒で、時属性の中級魔法だ。
一日以上の時間をさかのぼる場合、膨大な魔力を使用するため上級魔法に分類されてしまうが、1時間程度ならば大した魔力を消費しない。
なので、私は一つ細工を施すことにした。
「……ああ。偉大なる時の精霊よ。私に未来を教えたまえ。アピアーウィンドウ!」
「……うわっ!」
私が発動句を唱え終えると、淳の前にぼやっとしたスクリーンが表示され、そこに映像が投影される。
それを見て驚いた淳は、その画面に釘付けとなる。
「……お、俺の部屋が表示されました。画面には……。数字が書かれていますね」
「うむ! この窓に映し出されている状況が今から10分後に起きることだぞ! 一緒に映し出されているモニタも記録するがよい!」
「なんと! さすがです!!」
興奮した声色でそう言った淳は、ポケットから板を取り出すと、レンズのようなものをスクリーンに向け、パシャパシャと異音を出す。
「……昨日の地震の時にもそれを使っていたな。それは何なのだ?」
ふと疑問に思ってしまった私は、淳に確認をしてしまう。
あの薄い機械を使って記録をしていたようだが、私はそんな記録の方法を知らなかった。
「これは、スマートフォンというものですよ。高機能なので結構何でもできます! 今は写真を撮っていました!」
「……写真? なんだそれは?」
「今の状況を映像として記録することができるんですよ。今アイシアさんが映し出してくれた画面も、この機能を使えば簡単に記録することができます」
そう言って、淳はスマートフォンの画面を私に見せてくれる。
確かに、そこにはぼやっと写るスクリーンが映し出されていた。
「はー……。魔力を使わずにそんなことまでできるとは、魔法がなくても便利なのだな」
私は、目の前の機械に関心してしまい、言葉が自然と口に出てしまった。
その後、私は淳に確認を取った後スクリーンを消す。
それと同時に淳は、パソコンのモニタと対峙すると、スマートフォンに映し出される写真を眺めながら何かの作業を始めた。