二章 26 思い
ここから数話は個人視点からのストーリーになります
今話はリリアです
ちなみに……個人視点から書くのは初めてだったりするので下手くそなのはご容赦下さいm(__)m
─リリア視点─
「ミレリア、大丈夫?」
「……」
大樹の影に隠れるようにミレリアを連れてきてそっと寝かせる
私は未だ辛そうな彼女に声を掛けるも彼女の目は焦点が合わなくなってきていた
レフィル──彼から貰った魔法袋に入っていた回復薬や毒消しはほぼ使い切ってしまったが効果がなかった
いや、効果はあったのだけど症状を多少遅らせる程度の効果で完全に毒を消し去る事はできなかった
血は止めたし後は毒だけなのだけど…
「並の毒消しでは対処できない」と敵が自信満々に言っていた言葉を思い出す
私は表に出さなかったが、内心泣きたくなった
どうしてこう不甲斐ないのだろう私は
ミレリアの解毒が出来ない事に加えて、今回も足でまといだと言う事
ミレリアを運ぶ時、レフィルらを振り返ってみれば、エルマノが援護しているのが見えた
彼女はハイエルフ…魔術はお手の物でレベル的にも十分レフィル達の助けになるであろう事は見てわかった
では私はどうだろう
昔冒険者をやっていたとは言え、多少の攻撃魔術に多少前衛の経験があるだけ
前衛と言ってもレフィルが不甲斐ない頃に経験があるくらいで、彼がメキメキと実力を上げてからは出番が無くなった
なら攻撃魔術はどうだろう
こちらは長い間魔術鍛錬もしていたとあってそこそこできるし魔力もある
しかしあくまでそこそこレベルで、今相手をしている魔族にはかすり傷すら付けることができないと思う
何より私自信が魔術に限界を感じていた
どんなに鍛錬しても遅々として上達しない魔術に半ば諦めかけていた
そこでミレリアの登場だった
天性の攻撃魔術の使い手のミレリアの加入で格段に敵の殲滅速度が上がった
心なしかレフィルも楽しそうだった
それが私に止めを刺した
冒険者を辞めて冒険者ギルドの職員になる
最初彼は止めだが、私は頑として譲らなかった
ギルドでヴァージルに関する情報とアルス教に関する情報を集める為
そう言われれば彼は折れるしかなかった
しかし本音を言えばこれ以上不甲斐ない姿を見せたくはない
そして本音を隠して私は冒険者を辞めた…
最初の方は色々情報を集めたりするのが楽しくてこっちの方が向いてると思った
さらに定期的にギルドに顔を出す彼を見て力になれてるんだと感じでやりがいを見出していた
だがそれも徐々に尻すぼみになってくる
情報も次第に集まりが悪くなり、ギルドに帰ってくる傷ついた彼を見る度にこれで良かったのかと言う気持ちが湧き上がってきた
しかし冒険者に戻っても彼の役に立たない
逆に足を引っ張るのは目に見えている
勝気な性格と言われているけど、逆に内心ではどうしていいかずっとわからなかった
それが少しずつ変わったのはコタロー君と出会ってからだった
彼がコタロー君をギルドに連れてきた時は驚いた
そしてコタロー君は魔術が使えない
魔力はあるのに
最初はショックだったらしいけどもう諦めがついたらしい
それにコタロー君は薬を調合できるし、私が知らない調合の仕方も知っている
あの年でどれくらい努力したのだろう
凄い
ただ、他にまだ隠してる部分があったり、ちょっと常識では測れない部分もあるみたい
ずっと森暮らしだったのが原因なのかも
彼とコタロー君は進むにつれて道が交わり、今は目的地が同じと言う事で一緒に行く事になった
ギルドでその情報を手にした私は迷いを吹っ切るようにギルドを飛び出した
最初は辞めるつもりでギルドマスターに話したら残って欲しいと頭を下げられたので、とりあえず考えますと言って長期休暇をもらいリザールの港街へ馬を走らせた
そこで合流した彼と久しぶりに見たヴァージルに涙が出そうだったがグッと堪えて一緒に行く旨を話した
彼はやはり危険な場所へ行くのだからと拒否していたのだが、思わぬ所から助け舟が出た
ミレリアが了承してくれたのだ
まさかと思ったのだが、これで渋々ながら彼は折れた
そしてコタロー君と神霊で武神であるヴァイシュラヴァナ──親しい人達からは朱姫と呼ばれているらしい──も賛同してくれて一緒に行けるようになった
まさかあの美人さんが武神だなんて最初は驚いたけれど、実力を見て納得した
何にしろ助かったし、ありがたかった
そしてリザールからの船を探す過程で、レイラと言う女海賊も仲間になる
彼女は魔族が押し寄せているとわかっていてエルエリア大陸に船を出してくれた
理由はそれだけじゃないみたいだけれど
途中魔族の襲撃とかあったけれど、彼やヴァージル、朱姫がいたために大丈夫だった
驚いたのはコタロー君が強かったこと
ラグアニアの反乱を沈めたのだから強いとは思っていたけれど実際に見るのとでは違った
本当あの年ですごいと思う
それに比べて私は…
無事にインクについた後は、宿とって休むことになったのだけれどコタロー君と朱姫は出かけていった
いつも元気ねあの二人は
そして私達は休んだのだけれど、私の心のもやもやはまだ晴れない
起きても二人がまだ帰ってこない事に心配した私達は探しに行く事にした
レイラはいる場所が分かっているのか多分あそこだよと言っていた
街へ出て数ある料理屋の一つの中へ入ると
コタロー君と朱姫がエルフとドワーフと卓を囲んでいた
朱姫の古くからの知り合いだというエルフのキルエラさんとドワーフのジンバックさん
ここはそのジンバックさんのお店らしい
そこに魔族の襲撃があった
魔王ボルガ率いる魔族の大軍がこのインク目指して来ているらしい
明確な時期は今まで分からなかったけれど、まさかこのタイミングだったなんて運が悪いのだろう
そしてここでも私は安全な場所に避難
レイラさんも一緒だったけれど
暗い顔をしていた私をレイラさんは見ていたけど何も言わなかった
聞けば彼とヴァージルもあまり活躍できなかったみたい
何でも魔王とその側近が現れたらしく、さすがのキルエラさんとジンバックさんも危なかったみたいだけど、そこは二人は長寿で朱姫の知己
まったく慌てた素振りも見せなかったみたい
そして魔王ボルガに相対していた魔族のイルフリーデさんは新しい力を得たボルガにやられそうだったけど、助っ人が来た
元魔王だというルシーリアさんが助けに来て魔王ボルガを撃退した
イルフリーデさんとベアトリスが探していた人らしく、イルフリーデさんなんかは涙を流していたみたい
そこからキルエラさんとジンバックさんと別れてようやく死者の大森林に行く事になった
案内はさっき仲間になった元魔王のルシーリアさん
彼女は物凄く人間臭い魔族で、足で纏いな私にも気を遣ってくれる
嬉しい反面やっぱり情けない
もう足でまといになりたくないのに…
そして今…
私は他に何かないかと彼から貰った魔法袋を漁ると何がが手に触れた
「これ…」
彼から受け取った魔法袋から一振りの杖を取り出す
それは白魔術師が持つ初心者用の杖だった
どこか古びた感があるけれど手入れはされていたのか未だに十分使えそうな感じがする
硬い樫の木を削りだし、上部に小さいながらも白い魔石がはめ込まれている
「冒険者に成り立ての頃にレフィルから買って貰った……ずっと持ってたんだ…」
冒険者になったばかりの頃、レフィルが初依頼達成のお金で買ってくれた杖
その時の情景が脳裏に浮かぶ
~~
「はい、リリアにプレゼント」
「え?」
「前から魔術師用の杖欲しいって言ってたじゃん」
「あ…ありがとう」
レフィルの言葉に私は頬を染める、が
「女性なら白魔術師だよね。特にリリアは少しお淑やかになったほうが──イタタタタ、痛い!痛いよ──」
レフィルの余計な一言が私の赤かった頬をさらに赤くした
「煩い!一言余計なのよレフィルは!それに私は攻撃メインの黒魔術師なの!」
「痛い痛い痛い!エルマノ助けて~」
「女の子に助けを求めるんじゃない!」
~~
「白魔術師…か……え?」
私の呟きに反応したのかわからないけど突如杖がうっすら魔力を帯び始めた
魔力を通してないのになんで?と私は思いながらも杖から魔力が流れてくるのを感じた
と思ったら急に杖から光が溢れ出した
「きゃあ」
あまりの眩しさに私は目を瞑るがすぐに光は収まったためゆっくり目を開けた
「あれ?杖が…」
手に持っていた杖は先程持っていた杖ではなかった
硬い樫の木だった部分は鉄の感触を持つ何かに変わっていた
鉄ではない、重くないそれでいて手に馴染む
銀色に変わった杖の先端にはこれまた別の物がはめ込まれていた
「これって…ミスリル…」
先端には天使の翼のように羽が両翼に伸びており、その真ん中にクリスタル水晶が嵌っていた
「あ、そうだ。ミレリア!」
私は我に返ると慌ててミレリアを抱き起こす
彼女はすでにぐったりした状態で意識はない
「さっき急に頭に浮かんだこれなら…」
杖を握りしめミレリアに向かって魔術を唱えた
「お願い……クーラル」
私が願いながら唱えると、杖から放たれた柔らかな光がミレリアを包み込む
それは一瞬でもあり、数十秒だったかもしれない
次第に光が収まる
ミレリアに変化はない
ダメ…そう思った矢先、ミレリアの意識が戻った
「ん…」
「ミレリア!」
私は咄嗟に彼女の名を呼んだ
「リリア…?私は…」
「まだ動かないでね。体調はどう?」
彼女は私に支えられたまま自分の体を触ったり、手を動かしたりしている
「どこも問題ないな」
「…良かった……」
ミレリアは自力で上半身を起こし傷があった場所に手をやっている
私はその言葉に気が抜けたようにペタンと座り込んでしまった
「リリアが助けてくれたのだな?礼を言う」
「ううん、そんなんじゃないの…私……」
「ふむ…では詳しい話は後にしよう。所で、私を襲った奴はどこだ?」
「まだレフィル達と戦ってるよ」
「そうか…」
そう言うと彼女は立ち上がる
「まだ休んでなきゃ…」
「大丈夫だ。リリアの処置のお陰で全く問題ないようだ」
心配する私にニコリと笑みを浮かべる彼女
「行くの…?」
「ああ…王族殺しは極刑だ。未遂でもな。…何よりやられっぱなしでは私の気持ちが収まらん」
少し彼女を羨ましいと思った…
「それに…どうやらヴァージルはシロのようだ。手配書も撤回させねばならないな」
「え?」
私は一瞬意味がわからず固まった
「まだ詳しくはわからないが、クロなのはアルス教。それだけはわかった。あの私を狙った暗殺者もアルス教の手の者なのだろう?」
ミレリアは多少の怒りを滲ませた声音で話す
帝国は広くアルス教が布教活動をしている国だ
彼女も敬虔なアルス教信者と言うわけではないと言う事だけど、ずっと信じてきた物が実は悪でしたと知った時の気持ちは私にはわからない
でも今回の騒動でハッキリしたと思う
ケジメを付けるために彼女行くんだ
今までのミレリアの表情ではなく、どこか吹っ切った表情のミレリア
その表情が私には眩しかった
「わ…私も行くわ」
そう言って私も慌てて立ち上がるが、やはり彼女は反対した
「危険だ、リリアはここで…!?その杖は…」
彼女は私の手に握られている杖に目をやると、一瞬だが驚きの表情になるがすぐ我に返り、納得した表情を浮かべると私を見る
「ふむ。では一緒に行くか」
「え?」
てっきり来るなって言われると思っていた私は拍子抜けだった
「何かあったのかはわからない。が、今のリリアなら背中を預けられそうな気がする。よろしく頼む」
彼女に言われた時、私は危険だと言うのに、気持ちが高ぶるのを感じた
ああ…私、この言葉を言われたかったんだ…
守られてばかりじゃない、一緒に戦える…背中を任せられるパートナーとして見られたかったんだ
「しかしその格好では些か白魔術師としては不安だな…」
そう言うと彼女は自分の魔法袋をゴソゴソと漁り始めた
そして一着のローブを取り出すと私に渡してきた
「これをリリアにやろう。今のリリアになら合うはずだ」
それは薄い青色を基調としたローブだった
水色、と言えばわかりやすいだろうか
部分部分に濃い青や白のポイントが入っているが、派手ではない
「え…でも…」
私が返答に困っていると、ミレリアはサラリととんでもないことを言ってきた
「これは成人した時にわたし用に仕立てられたオーダーメイドのローブだ。あいにく攻撃型の黒魔術師になってしまったのでそれは着れないのだ」
「…いいの?」
「ずっと魔法袋に眠らせておくよりましだ。それに、今のリリアになら問題ないだろう」
そういうと私にローブを渡してきたので受け取るとコートを脱いで貰ったローブを羽織る
サイズは測ったようにぴったりだった
「ありがとうミレリア」
「ふふ、似合うじゃないか。いっとくが帝国の王族専用の仕立人がこしらえた物だから防御力も折り紙付きだぞ」
一般人には手が出ない高価な物とわかった私の表情は引き攣るが、それを見て彼女はニヤリと笑う
「さぁ、レフィルとヴァージルを助けに行くぞ」
彼女は魔法袋から愛杖プロミネンスロッドを手に取り真っ赤な魔力を身に纏わせた
「うん!」
彼女に遅れてないように私も白銀の杖を手に駆け出す
レフィル…待ってて、今行くから
リリアが白魔術師として覚醒しました(テッテレー)
次話は14日(午前9時)更新予定です
個人視点はルシーリアです
よろしくお願いします
いつもお読みいただきありがとうございますm(__)m




