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無限転生の召喚士  作者: 阿澄龍之輔
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一章 11 昔話と愚痴

5月中にこの区切りをアップしたかったのですが、できませんでしたm(_ _)m

狐太郎は部屋から出ると一階の食堂へ向かう

夜中ということもあり、食堂はほとんど人がいない


「おや?あんたはたしかデュラ坊の」

『はい。狐太郎といいます。何か軽い食べ物と飲み物ありますか?』

「あるよ、今用意するから適当に座っておくれ」


言われるまま狐太郎はカウンター席に陣取る

するとすぐ、飲み物と軽くつまめる物が出てきた

女将も仕事がないのか狐太郎の前に座る


『ありがとうございます。いくらですか?』

「いいよ、デュラ坊の友達なんだろ?まけておくよ」

『ありがとうございます。あ、それと俺数日ここに滞在したいんですけどいいですか?』

「うちは構いやしないがあんた、コタローって言ったっけ?デュラ坊達についていかないのかい?」

『はい、ちょっと色々事情がありまして俺はここまでなんです』

「ふーん、詳しくは聞かないけど大変そうだね」

『はい』


言いながら狐太郎は干し肉を齧り果実酒を飲む


「デュラ坊の事だから何か考えがあると思うけど、あんたら無理しちゃいけないよ。死んだら何にもなりゃしないんだから」

『そうですね。生き延びていればいつかは挽回できますからね』

「若いのにわかってるじゃないか」


狐太郎の言葉にニヤリと笑いながら女将は自分用の飲み物を持ってきてグビリと飲む


『仕事中じゃないんですか?』

「もう店じまい状態さ。あんた以外いないんだからね」


言われて狐太郎が周りを見渡すと誰もいない

来た時にいた数人も部屋に戻ったようだ


「無様でも屈辱でも、惨めでも生きてこそ、さ。生きてるからこそ汚名も晴らせるし何かを成し遂げられる。死んだらそれまでさね」

『そうですね』

「あたしゃ詳しい事はわからないけど、デュラ坊達の味方だよ。大した力になれないけど、何かあったら言ってきな」

『ありがとうございます』


そしてしばらく女将と他愛もない話をする(大体がデュラインの幼少期の話だった)


「さて、そろそろ寝ようかね。こんなおばさんの与太話に付き合ってもらって悪かったね」

『いえ、楽しかったです。それと少し果実酒もらっていいですか?』

「ああ、構わないよ。この残りでよければ持っていきなよ。お代はいらないよ」

『ありがとうございます』


挨拶して部屋に戻る

ウェルキン達はすでに自室に戻って寝たようで誰もいなかった

自分はもう少し飲んでから寝ようと窓際のテーブルにもらった果実酒を置き、ポシェットからガラス製のグラスを取り出すと、窓から空を眺めてみる

空は大半が雲に覆われていて時折雲間から月が顔を出している

静かでゆっくり飲むには丁度いい

椅子に座ろうとすると、ドアを控え目にノックされる

またウェルキン辺りだろうかとドアを開けると立っていたのはクリスティアだった


「コタロー様少しよろしいですか?」

『え?あぁ、構いませんよ。どうぞ』


一瞬呆気にとられるも立ち話も悪いので中に入ってもらった

お邪魔しますと入ってくるクリスティア


『こんな時間にどうしたんですか?明日に差し支えますよ?』

「・・少しだけお話しませんか?」

『構いませんよ』


みんなと居る時は不安なそぶりは見せないクリスティアだが、やはりそこは年端もいかない少女なのだろう

不安そうな表情を浮かべている


「お酒の匂いがします」

『あぁごめん、さっき下で少し飲んできたんだ』


服の袖を摘みクンクン匂いを嗅ぐ狐太郎


「私も少し頂いてよろしいですか?」

『いいけど飲んだことあります?』

「はい、成人の儀の時に」


この世界では13歳から成人とされる

そして冒険者登録も13歳の成人から可能なのだ

お酒も13歳から飲んで構わないが、暗黙のルールで18歳までは度数の低い果実酒しか飲ませてもらえない


『それじゃこっちで座って飲みましょうか』


狐太郎は窓際のテーブルの自分の反対側の椅子を勧める

そしてコップが一個しかないことに気づき、ポシェットから精霊の村製造の果実酒とグラスとロックアイスを取り出す


「綺麗なコップですね」


クリスティアがガラスのグラスを見て笑顔を見せる

グラスは所々に色々な彫り物が描かれていて、パッと見高級そうに見える

ちなみにだがまだこの世界では陶器やガラス製品は製造されていない

基本は木から削り出したコップや食器類だ

王侯貴族になれば銀製の食器類が支流になっている

もちろん一般の民間人には高すぎて手が出ない

無論このガラス製のグラスは村でしか作られていない物だ


『よければ差し上げますよ』

「本当ですか?ありがとうございます」


狐太郎は言いながら、グラスに氷数個を入れ村酒造のお酒を入れる

軽くかき混ぜてクリスティアの前へ置く


「氷が入っているのですか?」

『うん、お酒冷やして飲むと美味しいんだ』

「そういえば精霊様の村で飲んだ果実ジュースも冷たくて美味しかったです」


クリスティアはグラスを手に取り一口飲む


「この果実酒は初めて飲みましたがサッパリしてて美味しいですね」

『うちの村で作ったお酒だよ。度数は低いから悪酔いしないし』


狐太郎は狐太郎で貰ってきた果実酒を自分のグラスに注ぐ

村の酒も好きだが、その世界に普通に売っているお酒もそれぞれ特徴的で好ましい

軽く話をしながら、お酒を飲んでいるとクリスティアがポツリと呟く


「本当は逃げ出したいんです・・」


狐太郎はなんと答えて良いかわからず沈黙で返す

クリスティアはそこから少しずつ話し出した


「クーデターの日、あの日私は偶然にも王宮から離れていました。そしたらウェルキンとロイザードが慌てて走ってきてアゼル兄様がドルバ大臣とクーデターを起こしたと。最初は意味がわからなくて・・・ただウェルキン達がここに居ては危ないって街の中に隠れる事になりました」

「日が落ちるまで待って、日が落ちてから街から離れようって事になりました。馬車の手配とかはデュラインがやってくれたみたいです。日が落ちるまでの間、何があったのかウェルキン達に詳しく聞きました。お父様は今病で伏せっていて現状の政はシャルロス兄様が仕切っていました。お母様も経験させるには丁度いいって」

「その日の朝、いきなりお母様とシャルロス兄様は拘束されたそうです。それを見て止めに入ったルティーナ姉様も同じく拘束されたそうです。その時、アゼル兄様とドルバ大臣と一緒に見慣れない若い男性が側にいたとか。とにかくそれを聞いたウェルキン達は私を捕まらないように逃がそうとしてくれました。私が捕まれば逆らう人はいなくなるって・・」

「私はどうしていいかわかりませんでした。日が落ちてデュラインが馬車の手配ができたと言って現れて、私達は馬車に乗り街から逃げ出しました。しかし途中襲われて、一緒に付いて来た従者や他の侍女はどうなったかわかりません。私もウェルキン達とはぐれてしまい、側にはメアリーしかいなくて・・それでも死にたくないと思って必死に逃げました」


そこからは狐太郎も知っている通りなのだろう

アゼル兄様と言うのが第二王子でシャルロス兄様と言うのが第一王子なのだろう

ルティーナ姉様とは第二か、第一王女だろうか

一息ついて乾いた喉を潤すクリスティア

目には涙が溜まっている


「私はアゼル兄様やドルバ大臣が何でこんな事をしたのか、何を考えているのかわかりません。でも・・」


再び顔をあげた時には決意に満ちた表情をしていた

強いな・・と狐太郎は思った

国を背負って立つ人は色々な覚悟を背負い込まなければならない

もちろんそんなものはなく、悪政の限りを尽くす王もいることはいる

しかし今目の前にいるクリスティアは覚悟を決めた顔だった


『クリスティア様には叶いませんね』


言いながら狐太郎はポシェットをまさぐり2つアイテムを取り出す


「それは?」

『精霊の腕輪と身代わりの護符です。身代わりの護符は一度だけ命の危機に対して身代わりになります。身につけておかないと効果を発揮しないので魔法袋にしまっておくのではなく直接身につけてください。精霊の腕輪は装着者の魔力に応じて精霊が召喚できます、が1回しか使えません。これを差し上げますよ』

「こんな凄いものを・・いいのですか?」

『命には変えられませんから』

「・・ありがとうございます。ふふ、コタロー様には助けてもらってばかりですね」

『場合が場合なんで仕方ないですよ』

「そうですね。でも不思議です。コタロー様には何でも話せる気がします」

『あはは、愚痴りたくなったらいつでも言ってください』

「ふふふ、ではそうさせてもらいますね。あ、そう言えば1つ言いたいことがありました」


笑顔だったクリスティアが若干意地悪な笑みに変わる


「コタロー様、敬語はやめて欲しいです」

『それは・・・』


言葉に困っているとクリスティアはニコリと笑う


「ふふ、冗談です。そうするとウェルキン辺りがうるさそうです」

『はい、こないだウェルキンに注意されました』

「ウェルキンは対等な仲間ができて羨ましいです・・」


ポツリとつぶやく

クリスティアは王族という事もあり、みんなクリスティアの顔色ばかり伺うのだろう

そして弱みをみせれば付け込まれる

狐太郎はストレスの原因の一端を垣間見た気がした

なので何でも相談できる相手が欲しかったのだろう

部下や側近には弱音を吐けない

上に立つものは大変である

なので狐太郎は1つ提案をする


『それではですね、こうして2人の時は敬語はなしでどうですか?まぁしょっちゅうこういう事があるわけでもありませんが・・』

「本当ですか?」

『これくらいしかできませんが、よければ』

「十分です。あ、ありがとう・・」


タメ口はなれてないのか少し恥ずかしそうに言うクリスティアに不覚にもドキマギさせられてしまう


『いや、大した事じゃないよ』

「ふふ、初めて対等の友達ができました」

『メアリーさんは?』

「彼女もそうですが、男性はコタロー・・さんが初めてです」


さん付けで呼ぶのは恥ずかしいのか赤くなって俯くがすぐに顔をあげる


「色々話せてスッキリしました。これで眠れそうです」

『それは良かった。明日に差し支えては悪いからね』

「はい、それではおやすみなさい。お酒美味しかったです」

『こんなんでよければいつでも』


飲み終わったグラスを包み、クリスティアに持たせる

後にこのグラスが国の家宝に匹敵する物になるとは2人は知るよしもない

部屋を出るクリスティアをドア付近まで見送り、自室に入ったのを確認するとドアを閉める


『・・ふぅ、まいったなー』


窓際の椅子に座りため息をつく


『(王族と友達か・・いきなりハードルがあがったな)』


特に嫌と言うわけではない寧ろ友達が増えて狐太郎も嬉しい

しかしいきなり王族が友達になるとは予想もしなかった

友達と言うことは今後も付き合いがあると言うことだろう

さすがにあのクリスティアの寂しそうな表情を見ればほっておけない

まぁしょっちゅう2人で会うことなんて今後ないだろうと言うのが救いか

しかし後にお忍びと称し転送陣で頻繁に精霊の村へ遊びに息抜きに来ることになろうとは知るよしもない

狐太郎は再びため息をつき、雲に時折隠れる月を肴に果実酒を飲むのだった



翌朝

狐太郎は寝不足で目が覚めた

あのあと結局ほとんど寝れなかった

ほんとはこのまま布団で二度寝に突入したいくらいだが、クリスティア達を見送らなければならない

眠い目をゴシゴシ擦りながら顔を洗いに行く


「む、今頃起きたのか?遅いぞ!」


するとそこには早朝ランニングから帰ってきたウェルキンが身体を拭いている所だった

と言うか、鍛錬はいいが敵地の近くなのに大丈夫なのだろうか・・


『おはようウェルキン・・ふぁー・・・・』

「おはよう、と言うか寝不足か?」

『あぁうん、ちょっと考え事をしてて・・』

「お前が悩みとは珍しいな。俺でよければ話くらい聞くが・・?」

『あーいいよ。ありがとう、大丈夫だから』


ウェルキンに昨晩の話をしたらどうなる事かわからない

怒り狂って新しい剣の試し斬りに丁度いいとかいって魔剣ファラムで斬りかかって来てもおかしくない

ウェルキンはそうか・・と若干残念そうな表情を見せるもすぐに元に戻る


「そろそろ朝食の時間だろう。締まりのない顔を洗って食堂に来い。みんな待っているぞ」


言いながらウェルキンは建物の中に入っていった

狐太郎も急いで顔を洗い食堂へ行く


「おはようございますコタロー様・・」

「おはようございますー」

「おはようですぞ」

「おはようございます」


それぞれ挨拶を交わしテーブルに着くとすぐに食事が運ばれてくる

黒パンに野菜スープ、真ん中に肉料理が鎮座し、他にはハムに卵焼き等、朝食にしては豪勢だ


「これは昼にでも食べておくれ」


女将から手渡されたのは通常より一回り大きな弁当箱だ

クリスティア達は礼をいうとそれぞれ自分の魔法袋に仕舞い込む


「あんたはいいんだろ?」

『はい、昼食もここでいただくので』

「腕によりをかけるから楽しみにしてな」


女将は狐太郎の背中をバンと叩きながら厨房へ下がる


「「「いただきます」」」



食事も終わりひと息ついているとクリスティアが狐太郎に向き直る


「コタロー様、今日まで助けていただきありがとうございます」

「感謝する」

「助かりましたぞ」


ウェルキン、ロイザードにも礼を言われる

見るとデュラインとメアリーも頭を下げている


『いえ、力になれて良かったです』


茶化す雰囲気ではないので狐太郎も真面目に答える


「フリッグ様の後ろ盾が得られれば王都へはすぐに行けますし」


フリッグ伯爵と言うのはそれなりに権力を持っているのだろう

それの庇護を受けれればこの上ない援軍となりそうだ


『うまく行くといいですね』

「ああ、絶対に王都へ帰って阻止する」


ウェルキンが力強く宣言する


「そしたら・・」

『終わった後の事はよしましょう。鬼が笑うといいますし』

「そうだな」


ウェルキンと狐太郎はニヤリと笑う


「・・では行きましょうか」


クリスティアの号令で席を立つ一同

狐太郎の見送りは宿先までだ


「それではコタロー様いってまいります」

『気をつけてね』

「必ず報告に伺う」


ウェルキン達と握手を交わす

最後にデュラインとも握手をしたのだが、手に手紙が握りこまれていた

それを態度には出さずに送り出す狐太郎

小さくなっていく背中を見つめながらふとデュラインから渡された手紙に目を落とす


『絶対厄介事だよな・・』


そう1人呟き建物の中に入るのだった








また少し書きため期間に入ります。

遅くて申し訳ないですm(_ _)m

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