↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/20

十八話

蓮(れん)のマイクラ爆破事件から数か月。

佐藤家には、 Vtuber界隈の「初期からの戦友たち」が押し寄せるという、前代未聞の大波乱が巻き起こっていた。

事の発端は、かつてカナタ(陸)とルナ(結衣)がデビュー当時にお世話になった、Vtuber事務所の大先輩「豪勝寺(ごうしょうじ)ジャック」(豪快なドワーフ系Vtuber)と、同期のライバルであり親友の「氷室(ひむろ)リン」(クールなVTuber)が、突然の「突撃コラボ」を仕掛けてきたことだった。

「——というわけでぇ! 本日は佐藤家に、この豪勝寺ジャック様と氷室リンが直々にお祝いに殴り込んできたぞおおお!」

『うわあああジャック兄貴だ!!』

『リンちゃんもいる!!』

『初期の神コラボメンバー集結キター!』

『佐藤家の防音室に大人がぎゅうぎゅう詰めwww』

画面上には、カナタとルナの隣に、久々の共演となる豪華な3Dモデルが並ぶ。

狭い防音室に大人4人がひしめき合い、リビングからは葵と蓮の賑やかな声が聞こえてくる。

「いや急に家まで押しかけてくんなよジャックさん! マジでビビったわ!」と陸(カナタ)。

「ふふ、陸も結衣もすっかり『パパママ顔』になっちゃってさ〜。蓮くんの抱っこ、代わってあげよっか?」と冷やかし気味のリン。

「リンちゃんダメ! 蓮くん今お昼寝から起きたばかりだから、ジャックさんの顔見たら泣いちゃう!」と焦る結衣(ルナ)。

「ガハハハ! ワシのこの威厳ある顔(アバター)で泣くわけなかろう!」

案の定、モニターに映ったジャックの大柄なアバターを見た1歳の蓮が、防音室のドア越しに「ふえぇぇぇん!」と爆発的な大号泣を始めた。

『言わんこっちゃないwwww』

『ジャック兄貴の顔面威圧感www』

『一瞬で泣かせて草』

「ほら言わんこっっちゃない!!」

陸は焦って防音室のドアを開け、泣きじゃくる蓮を抱き上げた。

「ほーら蓮、怖くないぞ〜。ただのおひげの大きいおじさんだからな〜」

その時、6歳の葵がジャックとリンの前にすっと立ちはだかった。

「ジャックおじさん! 蓮くんをいじめちゃダメ! 葵が守るんだから!」

両手を広げて弟を庇うお姉ちゃん・葵の姿に、クールなはずの氷室リンが悶絶した。

「……ッ!! 可愛すぎる……! 葵ちゃん、お姉ちゃんから『うちの妹』にならない!? 美味しいお菓子いっぱい買ってあげるから!」

「ライバル事務所のスカウトみたいなことすんなリン!」陸が叫ぶ。

「ガハハ! 葵ちゃん、ワシはこの通り恐ろしい者ではないぞ? ほーら、おじさんから入学祝いの『特大クマのぬいぐるみ』じゃ!」

ジャックが持ち込んだ自分と同じくらい巨大なクマのぬいぐるみに、葵は目を丸くした。

「わぁぁぁ! すごーい! ジャックおじさん、ありがとう!」

一瞬で懐く葵。

「ガハハ! どうだ陸! 葵ちゃんはワシの臣下となったぞ!」

「勝手に臣下にするな!!」

『賑やかすぎてお腹痛いwww』

『ジャック兄貴とリンちゃんの親戚のおじさんお姉さん感ww』

『葵ちゃん速攻で買収されて草』

『カオス空間すぎるwww』

大騒ぎする大人たちと、ぬいぐるみで遊び始める葵。

すると、陸の腕の中で泣き止んだ蓮が、ジャックとリンの顔をじーっと見つめた。

ジャックが優しく微笑み、大きな手で蓮の頭を撫でようとしたその瞬間——

蓮は機嫌を直した様子で、小さな口を大きく開けた。

そして、かつて陸が謝罪配信で見せた「伝説の叫び」を完璧にコピーした、超高音のデスボイスを放った。

「……ぶぉい!!(威嚇&歓迎の爆音)」

防音室に響き渡る、完璧な「佐藤家の血統」の咆哮。

静寂。

ジャックとリンの顔が固まった。

「……いま、何て言った……?」呆然とするジャック。

「……『ぶぉい』って言った……? 1歳で……?」目を点にするリン。

コメント欄:

『!?!?!?!?』

『初対面の大先輩にデスボ挨拶wwww』

『ジャック兄貴フリーズwwwww』

『18話連続デスボ(客陣ドン引き)達成www』

「あ」と陸。

「あ」と結衣。

「ち、違うんですジャックさん! これは威嚇じゃなくて、蓮なりの最大級の親愛の情なんです!!」平謝りする陸。

「嘘つけぇぇぇ! 完全にワシを威嚇しとるわ!! 陸、お前どんな教育しとんのじゃぁぁぁ!!」

「ふふ……あははは! 凄すぎるよ佐藤家! 遺伝子レベルで『事故』が受け継がれてる!」

リンが腹を抱えて大爆笑する。

葵も蓮の真似をして「ぶぉーいっ♪」と追唱し、部屋の中は爆爆爆笑の渦に包まれたのだった。

◇

配信終了後。

ジャックとリンが買ってきてくれたご馳走を囲み、リビングで「大人の打ち上げ」が始まった。

子供たちはすっかり打ち解け、ジャックの膝の上で葵と蓮がすやすやと眠っている。

「……ハァ。まさか先輩方まで巻き込んでこんなカオスになるとは思いませんでしたよ」

陸が苦笑いしながらグラスを傾ける。

「何を言うか」

ジャックは愛おしそうに子供たちの頭を撫でながら、温かい目を向けた。

「あの『登録者3人(うち1人bot)』だったカナタとルナが、こんな立派な家を建てて、こんな可愛い子供たちを育てて……ワシはな、今日ちょっと泣きそうだったんだぞ」

「ジャックさん……」結衣が胸を打たれる。

「ほんとよね」とリンも笑う。

「最初はただの配信事故だったのに……気づけばこんなに賑やかで、温かい場所になっちゃってさ。最高の人生じゃない、陸、結衣」

陸と結衣は顔を見合わせ、照れくさそうに微笑み合った。

「……押し掛けられた時は焦りましたけど、感謝してます。先輩たちがいたから、俺たちはここまで来られました」

「ガハハ! 次は蓮くんがVtuberデビューする時にまた殴り込んでやるからな!」

「それは勘弁してください!!」

賑やかな笑い声が、夜の佐藤家にどこまでも響いていく。

仲間が増えて、家族が増えて、思い出はどんどん重なっていく。

配信事故から始まった愛おしい物語は、たくさんの大好きな人たちに囲まれて、これからも笑顔と共に続いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。