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挿絵(By みてみん)


アザール王国の王女ヴィヴィアンヌ・ド・ブロイ・アザール。

今現在の私の名前だ。


前世の記憶を振り返っても、そんな名前の人物が登場する物語など全く覚えが無い…。


なので

「この世界はゲームや小説の世界とは違う、本物の異世界なのだろう」

と結論を出すことにした。


と言ってもーー

私が地球のとある国で暮らしていた前世を思い出したのは、つい先日。


王立魔法学院の入学式の日。

無事に式を終えて、自分の教室でクラスメイト全員の自己紹介が済んだあと

「早速、明日からは授業です。このあと入寮する人も居るでしょうし、今日はここまでとします」

と担任教師に言われ、廊下に出たところーー


見知らぬ女生徒がいて、何故か話しかけてきた。


「…ヴィヴィアンヌ王女殿下ですね?私はシュザンヌ・ブルデューと申します」

と言われ

「そうなのですね?」

と返事をしただけだったのだが…。


教室から他の生徒達も出てきたタイミングで何故かシュザンヌは急に

「何をなさるんですか!酷い!」

と言って、自発的に後ろに尻餅をついてから、涙ぐんだ。


「…み、身分が下の者には、何をしても良いと思ってらっしゃるんですね。…私は仲良くしたかっただけなのに…うっ…くっ…ひっく…」

一方的に絡まれての嘘泣き。


こちらは想定外の事態に困惑して固まった。

その時点で本当に意味不明だった。


そしてシュザンヌの声を聞きつけた様子で男子学生が駆け付け

「俺の友人に何をしたっ!!!」

と怒鳴りつけてきたのにも驚愕した。


途端にシュザンヌがその男子学生の胸に飛び込み

「『男爵令嬢の分際で!公爵家のパスカル様には二度と関わるな!』と王女殿下がお怒りになって、突き飛ばされたの。…だけど、殿下は悪くないわ。責めないであげて…」

だのと言い出した。


(ん?「パスカル」って…)

「………えっと、一体ーー」


「貴様ぁぁぁっっ!!!男狂いの淫乱から生まれた『不貞の子』の分際で!よくも!この俺の友人を侮辱したなぁっ!!!」

パスカルが激昂し、私のシャツの首元を掴んで怒鳴りつけた。


その瞬間にーー


(ショックの余り一瞬意識が飛び)

激しい頭痛と共に前世を思い出したのだ…。


前世の私ーー。

浮気者の夫に保険金をかけられ、事故に見せかけられて殺された結婚10年目の主婦。

霊感がある以外には、これと言って何の取り柄もない凡人だった。


不思議な事に、死後数ヶ月は肉体が火葬で失くなっても霊体のまま意識を保っていられた。

その間に

「ちゃんと保険金がおりたな。…これで人生をやり直せる」

と嬉々として夫が浮気相手と暮らし始めたのを目の当たりにしてしまった。


夫が

「あんな女に引っかかって10年も人生を無駄にした。慰謝料代わりに保険金でももらわなきゃ割に合わないよな」

と呟きを漏らした時ーー


私は

(そんなに嫌ってたのなら離婚してくれれば良かったのに…)

と心底から思った。


血縁者達との絆も薄く、誰も真相を調べて報復するとかもなかったので…

ただ無念に

「殺されたんだな…」

と事実を受け入れるしかなかった。


「男運が悪い」

というだけでは済まない対人運の悪さだと思う。


誰かヤツの犯罪を暴いて刑務所にぶち込んで欲しいところだけど…

警察、ちゃんと仕事してくれていないという事なのか。

のほほんと犯人は幸せを満喫していた…。


そして被害者である私自身も

恨んでやる

呪ってやる

と思うほどの執着心すら湧かなかった。


ただただ

「関わった事自体が間違いだった」

と思ってしまった。


「嫌い合っている2人が無理して一緒に居ても良い事など一つもない」

のだ。


なんとも情けない…。


惨めな人生で得られたのは

「世の中には関わってはならない人間もいる」

という教訓だけだった。

全てがバカらしく感じられた。


虚しさに魂ごと呑まれながら

私の意識は暗転した…。


「成仏できた?」

筈だったのだがーー

どうやら成仏できずに異世界の王女に転生していたらしい…。



全100話。

2026年09月14日完結予定です。

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