ワンオペ育児、異世界で詰みました
目を開けた瞬間、違和感があった。
空が、青すぎる。
「……え?」
さっきまで、確かに私はキッチンにいた。
息子のサクを抱っこしながら、離乳食のストックを温めて——
「っ、サク!?」
腕の中を慌てて見る。
よかった。ちゃんといる。いつもの寝顔。少しよだれ。
でも。
「ここ、どこ……」
周りは森だった。
見たこともないくらい深い緑。人工物ゼロ。スマホ圏外確定。
これって異世界転移とかいうやつ?
いやそれどころじゃない。
「詰んだ」
思わず声に出た。
財布なし。水なし。ミルクなし。
そして何より——
「ワンオペで異世界とか、無理なんだけど」
ぐずっ
腕の中で、サクが小さく泣いた。
「あああごめんごめん!」
私は反射であやしながら、頭をフル回転させる。
「……やるしかないか」
そのときだった。
ガサッ
背後の茂みが揺れた。
「……っ」
出てきたのは——
小さな、赤いトカゲみたいな生き物。
でも。
口から、煙が出ている。
「……嘘でしょ」
次の瞬間。
ぼっ
火が、出た。
「いやいやいやいや待って!!」
サクを抱えて全力で後ろに下がる。
「ちょっと!!あなた何歳!?火は禁止!!園でもNGだから!!」
思わず出たその言葉に、
なぜかトカゲはピタッと動きを止めた。
そして。
「……ぎゃう?」
首をかしげた。
——あ、これ。
「もしかして……子供?」
私は、確信した。
ここは異世界で。
そして私、七瀬ミオは
人間じゃない“子供たち”の面倒を見ることになる。
そんな予感がした。




