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残光の箱庭  作者: 米田
2.5章
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閑話:記章

「シーちゃんって、すごく綺麗だよね」


 ドライヤーをかける彼女の絹のような艶を放つ髪を眺める。黒くて艶やかな髪は、まさしく一枚の布のようだ。

 私がそう言うと、シーちゃんは得意げな表情を浮かべて私を横目で見る。乾かし終わったのか、スイッチを切って私へそれを渡した。


「当然でしょう?私は美貌を保つための努力は厭わないわ」

「さすがだなあ。あ、もしかして食後に飲んでるあれも?」


 シーちゃんはいつもご飯の後にカプセル状の何かを飲んでいる。大きなサイズのそれをすんなりと飲み込んでいるので、すごいなと思っていた。私はいつも薬を飲む時引っかかってしまう。


「そうよ。あれは肌のためのサプリね」

「へえ……」


 こんなに若いうちから気にしてるなんて、すごい。というか、こんな世界なのに美容のことまで気にしてサプリまで。シーちゃんのいるところって結構普通に暮らせてるのかな? うちでも結構贅沢だと思っていたけれど、しーちゃんの方がいい生活を送っているのかもしれない。

 私がそう思っていると、シーちゃんは笑って首を傾げる。


「気になる?」

「うん、私外で作業してるから、肌は気になるよ。シミとかさ〜」

「でもホノカ肌綺麗じゃない?」

「えー嬉しい!」


 シーちゃんに褒められて、私は嬉しくて跳ねたくなる気持ちになる。そして彼女は私の髪をチラリと見た。


「ただ、髪ちょっと傷んでるね」

「あー、やっぱり?」

「髪も日光にあたるとダメージ受けるよ。頭皮に日焼け止め塗ってる?日焼け後のダメージケアは?」

「え、してない。何なら帽子邪魔で外してたかも」


 私はシーちゃんに見られていた頭頂部を隠す。そんなところまで気をつかうんだ。

 やれやれ、と言うように溜息を吐かれた。あれ、おかしいな私年上なのに。

 シーちゃんはポーチを開けて、中からカプセルが入ったアルミのシートを取り出した。それをパキッと一錠分切り取って、私へ差し出す。


「ん」

「これは?」

「飲む日焼け止め。一個あげる」

「えー!嬉しい!ありがとう、シーちゃん!」


 この前まで私を見下して邪険に扱っていたシーちゃんが、私を思ってサプリをくれるなんて。仲良くなれた証拠みたいで嬉しい。


「へへ、私これ飲まないで取っておくかも」


 私がそう言うと、彼女は眉を吊り上げ唇を歪ませる。


「せっかくあげたのに。なんで?」

「だって、私とシーちゃんが仲良くなれた記念みたいだもん」


 キョトン、と目を丸くした後、シーちゃんはプイッとそっぽを向いてしまう。散らばった化粧水や乳液の類をまとめてポーチに入れた後、立ち上がって扉を開けた。


「ホノカって、ちょろい!」

「え〜」


 私の顔は見ずにそう言って、扉が勢いよく閉められた。

 その後ろ姿を見送って、私は顔を緩ませる。輝く銀色が友情の証のようで、嬉しくてしばらく濡れた髪のまま眺めていた。

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