手紙
―アルへ―
アルごめんね。いつも迷惑かけてごめんなさい。そしていつも全力で私と向き合おうとしてくれているのに、逃げてごめんなさい。疲れたって言ってごめんなさい。手紙でしか本心を伝えられない意地っ張りな私でごめんなさい。陛下に殴られた場所は大丈夫でしたか?そういうところも手紙でしか気遣えない私でごめんね。
アル。私の見えてる世界と他の人が見えてる世界は同じなのかな?私は、今私が生きている世界が息苦しくてたまらない・・・。そしてね、年々自分が汚れていく気がするの。ずっと子供のころのまま綺麗な心でいたいのに、そうは生きられなみたい・・・。私が見ている世界はとてもとてもとても生き辛いわ。私だけじゃないのかな?皆、辛いのを隠して生きているのかな?
何故、私にこのような試練を神様は与えたのかな?どうしたら答えが分かるのかな?もし、お父様たちが生きていたらいたら答えを教えてくれるのかな?アル、あの日言えなかったけど私の足これ以上良くならないみたい。みんな気を遣って教えてくれないけど、私の体は私が一番よく知っているから分かるのに。みんな優しいから・・・。
せめて杖なしでヒールで歩けるまで回復したかったのに・・・。ほら私ってヒールが大好きでしょ?ヒールが好きなのもアルのせいなのよ。私を追い越してどんどん背が高くなるから、少しでも目線を追いつかせたくて背伸びしてたんだから。でも、その分よく転んでたしヒールを履かない方が実は良かったりして。この機会に、全部ローヒールの歩きやすい靴にしようかな。なんて・・・。
アル。私って結構死にたがりなの。でも、神様はそんな私だから簡単に死なせてくれない。ずっと、お父様お母さまが亡くなってから、埋まらない穴があるの。私、あの日お父様とお母さまに行ってらっしゃいって言えなかったの。
私ね。中等部に入学して、本格的にアルとシャイル離れしなきゃって思って。お母さまにも言われたし、女子の先輩にもいい顔されなかったから・・・。学校で一番人気ある二人を、私が独占してるのは良くないでしょ?だから、二人から離れて女友達を作ろと思って頑張ってみたんだけど、私のベクトルの違う正義感は他の人にしたら傷つくことだったりしてね・・・。うまくいかなかったの。恥ずかしけど全部空回りしてた。それで悩んで成績を20番以上落としちゃって、お父様はもちろん激怒。あの日もそのことで喧嘩してたの。私が学校休んで、領地にいるデュークお兄様に会いたいって言ったから。貴族としての義務云々説かれて、私は拗ねて部屋に引きこもったわ。お母さまがね、「エミリア行ってくるからね?明日帰ってくるからお母さんに何か悩んでることがあったら、明日必ず相談してね?」って言いながら出かけて行ったわ。私見送りもしなかったの。最低な娘でしょ?それが二人の最期だった。最期に私が見せた顔は、ふてくされて怒った顔だったの。最低でしょ?どうして気を付けて行ってきてねって言えなかったのかな?私のことを誰よりも愛してくれていた両親だったのに。
私、それから早く死んで二人に会いたいって思ってた。でもね、二人が会いたかったのはデュークお兄様だった。お兄様死ぬ前に言ったの。父上と母上が呼んでるって。どうして私を呼んでくれなかったのかな?
クロもそう。私が一番多くの時間を過ごしてきたはずなのに、クロが死ぬときに選んだのはディアンお兄様の腕の中だった・・・。どうして私じゃないんだろう?どんどん心の穴がね広がっていく一方だったの。ずっと死んじゃいたいと思ってた。
でもね。アルといると生きようって思えたの。アルがいたから、いつも前向きに生きてこれたの。アルは私の歩く暗闇の道を照らしてくれる光で、一緒にいるとただ幸せで、だから誰よりも幸せになってほしいと思ってた。婚約したとき、心の底では嬉しかった。だって、ずっと好きだったから。気づかない振りしてたけど、好きだったの。アル。好きよ。誰よりも。愛してる。だからあの日、アルと初めて思いが通じ合った日は、死んでもいいと思った。アルのためならなんだって出来るって。アルのために生きようって思った。
アルはいつから私が好きだった?私は好きとかまだ分かんないころから、アルだけしか見てなかったよ。ずーっと特別だった。小さい頃アルよりずーっと大きくて太ってたし、意地っ張りだし、我儘だし、アルが好きになってくれるわけないって思ってたの。だから、愛してるって言われたとき、心がね本当に震えた。
そしてね、アル両親を恨まないで。とてもあなたのことを思っているのよ。あなたのこと、陛下はいつも私に聞いてくるのよ。埋まらない溝が出来てしまったって後悔してるのよ。それでも、国王だから。あなたが一番、その孤独さを分かってあげられるはずよ。だからお願い絶対に恨まないで。
いい女ぶってごめんね。私って最低なの。ほかのことなら平気でも、私アルにだけは突き放されたくないの。アルに突き放されたら死んじゃう。だからいつもいい女ぶって、私から別れを告げてしまうの。アル。アルを嫌いになることなんて絶対にないから。私は永遠にアルだけしか愛すことないから。
今日ねシンディーが来てくれたの。私・・・。あれから生理が来なくて、子供産めないかもしれないって。だからアルと結婚は無理だって絶望してたんだけど、シンディーが方法を色々探してくれたの。アル。だから・・・。もう一度だけ私にチャンスをください。陛下と王妃様には何度も何度もお願いしてみるわ。アルお願い。こんな私を許してください。
明後日王都に戻ります。また一度会ってもらえませんか?あなたを必ず幸せにするから、どうかもう一度チャンスをください。
本当に本当に愛しています。
―エミリアより―




