真実
エミリアは目を覚ました時、生きていることに失望した。涙はもう出なかった。もぞりと動くと、アンが側にいることに気が付き、慌てて体を起こした。
「ここは?」と見慣れない部屋だったので、エミリアが問いかけるとアンが答えた。
「王城の一室です。」
「そう。私どれくらい眠っていた?」
「1時間弱です。」
エミリアは、リーリアの部屋で暴れたことを思い出し頭を抱え込んだ。その時右手に包帯が巻かれ、ドレスを着替えていることに気が付いた。
「アルは・・・?」
「ただ今、陛下と協議中です。」そう答えたのは、幼いころから良く知るジムだった。
「どうしてジムがここに・・・?」ジムがいることに気づかなかったエミリアは、驚き尋ねる。
「殿下にエミリア様をお守りするようにと命じられました。」
「私は大丈夫よ。殿下をお守りして。」
「いいえ、殿下の命ですので。」
「そう・・・。私はどうしたらいい?どんな罰を受けるのかしら?」とジムの目を見て、エミリアは尋ねる。
「どうやらリーリア様が事件の真相を語ったようです。」
「あ・・・。リーリア様はなんと?」
「詳細は後程殿下から直接ご説明があると思います。それまでこちらでお休みください。」
「分かったわ。ありがとう。」
と言うと、エミリアはベッドから降りようと杖を探した。アンがそれに気づきエミリアに差し出す。
「まだその杖をお使いだったんですね。」とジムが言う。
エミリアはアルフォンスからプレゼントされた杖をずっと大切に使っていた。白い杖はだいぶ汚れ傷だらけだ。それでも、エミリアがそれ以外を使うことはなかった。
「一番使いやすいの・・・。」エミリアはそう言うと、立ち上がろうとした。だが、ふらふらして中々立てない。それをすかさずアンが支える。
「少し右手からの出血が多く、貧血を起こしています。どうかもうしばらくお休みください。」とアンが言う。
「外の景色が見たいの。ジムごめんなさい。抱き上げて連れて行ってもらっていい?」とエミリアがそう頼むと、ジムは「失礼します。」と言い抱き上げてくれる。アンが窓の近くに椅子を置き、その上にジムはエミリアをゆっくりおろした。
「ありがとう。」と言うと、エミリアは腕を伸ばして窓を開け窓枠に両腕を乗せ頭を傾けた。
―どうして、リーリア様に会いに行ったのだろう。あの場でシャイルに相談すれば、こんなに大騒ぎにならなかった。大変なことをしてしまった・・・。―
―リーリア様はどうして・・・。―
―私はどうしていつもいろんな人を巻き込んでしまうのだろう・・・。―
激しい後悔と深い悲しみがエミリアの胸を占めていた。
エミリアの心の中と対照的に、空は青く澄んでいた。太陽に包帯が巻いてある右手をかざしながら、
―どれくらい血を流せば死ねるのだろうか・・・。―
と、一人考えていると「エム。」と呼ばれ、エミリアは慌てて振り向いた。
アルフォンス、リベラルト、シャイルが立っていた。
「騒ぎを起こして申し訳ありません。」エミリアが頭を下げると、皆近くの椅子に腰を下ろした。
「いやエミリアは悪くない。頭をあげてほしい。」とアルフォンスが言う。
「本当に申し訳ありませんでした。私の処遇は?」
「君は何も悪くない。だが、エドガー王国に一緒に戻ってほしい。」
「エドガー王国にですか・・・?あの、あの・・・。リーリア様は何と?」
「エミリアを襲うよう指示したのは自分だと白状したよ。」とシャイルが言う。
「何故ですか・・・?」エミリアは視線を落とし尋ねた。
「エミリア本当にすまない。全部僕のせいだ。リーリアは僕と結婚するためだけに・・・。」
―そうか。リーリア様もあの時からずっと好きだったのか・・・。―
「国王陛下は何と?」エミリアはリベラルトを見て尋ねる。
「とりあえず緘口令を出したが、すぐに君が元婚約者だったことは知られるだろう。しばらく休養するようにとのことだ。」
「リバー様申し訳ありません。ずっと黙ってもらっていたのに。このような形で迷惑をかけてしまって・・・。」
「いや私は大丈夫だ。それより、君はエドガー王国の国王陛下に説明するために、一度あちらに戻りなさい。」
「説明ですか?」
「君の証言も必要となる。出来れば今夜中にアルフォンス殿下は発ちたいそうだ。」
「今夜中ですか?他の予定はどうするのですか?」エミリアはアルフォンスに尋ねる。
「落ち着いたらまた誰か派遣する。エミリア・・・。本当にすまなかった。だが、一緒に戻ってほしい。」
そう言われると、エミリアはただ頷くしかなかった。




