自白~リーリア目線~
「シャイル。私が・・・。私がエミリアを襲わせたの。」リーリアがそう言うと、シャイルは静かな声で尋ねた。
「何故だ?」
「アルが好きだったの・・・。」
「好きってだけで襲ったのか?」
「うん。」
「誰が指示を出して計画したんだ?」
「私よ。」とリーリアは言った。兄の名前だけは絶対に出してはいけない。
ぐっと眉間に皺をよせ、シャイルは必死に怒りを耐えているようだった。リーリアはシャイルが強く拳を握りしめ耐えるのを、ただ見つめていた。
「三回ともリーリアか?」
「そうよ・・・。」
とリーリアが言ったとき、部屋にノックが響きアルフォンスが入ってきた。
「エミリアは?」と腰を浮かせ聞くシャイルに、「寝ている。過呼吸と軽度の貧血だそうだ。」とアルフォンスは答えるとシャイルの隣に腰を掛けた。
「傷は深いのか?」とシャイルは言う。
「だいぶ深い。もしかしたら、痕が残るかもしれない。」
「誰か側に置いてきたか?」
「アンを置いてきた。」
「アンだけじゃ・・・。」と何か言いかけ黙るシャイルに、アルフォンスは分かっているというように頷いて言った。
「大丈夫だ。ジムも置いてきた。」
ジムとはアルフォンスが小さいときから付いていて、エミリアもよく知る護衛だ。
「そうか。」
「シャイル。リーリアと二人で話したい。席を外してもらえるか?」とアルフォンスは言った。
シャイルが頷き立ち上がりそうなのを見て、リーリアは口を開いた。
「シャイルもここにいて欲しい。」
リーリアはアルフォンスの視線を感じていたが、顔を見ることは出来なかった。シャイルは困った顔をしてアルフォンスの顔色を伺ったが、アルフォンスが頷くとゆっくり腰を下ろした。
「リーリア。言わなくてもいいが、今日エミリアと何があったんだ?」とアルフォンスが固い声で聞く。
「・・・。」黙って俯くリーリアにシャイルが話しかける。
「リーリア。さっきの話の続きをしていいか?」
シャイルの優しい声を聞いて、リーリアは泣きながら頷いた。
「あの日、エミリアを襲わせるよう指示を出したのはリーリアなんだな?」とシャイルが聞く。
「うん。」
「お前が崖から突き落としたのか?」
「違う!」とリーリアは首を振る。
「じゃあ、何故エミリアは落ちたんだ?」とアルフォンスが聞く。
「本当はどこかに連れ出して、襲わせるつもりだったの・・・。怪我させる予定じゃなった・・・。」
「襲わせる?」シャイルが聞く。
「純潔を奪うのが目的だった・・・。王族と結婚できなくなるから・・・。」
「それで?」冷たい声でアルフォンスが聞く。
「あの日。私が連れ出したの。展望台に行こうって。それで・・・。エミリアを連れ出そうと男が抱きかかえたとき、エミリアが肩に噛みついたの・・・。それで・・・。男がエミリアを殴って・・・。エミリアは吹っ飛ばされて崖に転落したの・・・。」
「じゃあ・・・。学園で襲わせたのも?」シャイルが尋ねる。
「そう。純潔を奪うためよ。」
「宮殿では?」シャイルが聞く。
「あれは、勝手に男が接触しただけよ。」
シャイルが、はっと息を吐いたのが分かった。リーリアは顔をあげることが出来なかった。
「どうして、エミリアを襲わせたんだ?」アルフォンスが言った。
「・・・。」
「フォスタ国王の指示か?」アルフォンスが続ける。
「違う。」
「じゃあ何なんだ!何が目的だったんだ?」とアルフォンスは怒りで声を震わせながら尋ねる。
「好きだったの・・・。」
「は?」
「貴女のことが好きだったの!」リーリアは泣きながら叫び、アルフォンスの顔を見た。
アルフォンスは無表情で、リーリアを見ていた。
「僕が好きだからエミリアを襲わせたの?」
「そうよ!」
「はっ。たったそれだけで?」
「そうよ!あなたと結婚したかったの!」
「は。たったそれだけで・・・。自分が何をしたのか分かっているのか?」
「・・・。」
「例えエミリアがいなくても、僕は君と結婚することは絶対にないよ。」
「どうして?」リーリアは泣きながら聞く。
「君は、自分より身分が低いものには何をしても良いと思っているからだ。今回も特別反省しているわけではない。逃れられない状況になったから、真実を話してるだけだ。」
「・・・。」その通りだった。
「僕も王族だから君の気持ちが分からなくもないよ。王族は国で一番崇められる人間だ。時に自分が神だと勘違いしそうになるだろう?ふっ。自分が何をしても許されると思っているのだろう?」
「そんなこと思っていないわ!」
「いいや。君は思っている。思っていないとしたら、どうして君はエミリアのお見舞いに一度も行かなかったんだい?」
「それは・・・。帰国していたから・・・。」
「いいや違う。忘れていたからだろう?もし君とエミリアの立場が逆だったら、エミリアはどうなっていただろうね?最悪処刑になっていたかもしれないね?」
「・・・。」
「純潔を奪おうとしたって言ったね。無理やり襲われるということが、どれほど女性を傷つけるか考えたこともないのだろう?一度君も経験してみるといい。」
「そんな・・・。」
「そんな?君は王女だ。公爵令嬢と違うと言いたいんだろう?君の純潔の方が、エミリアの純潔よりも価値が重いと言いたいんだろう?」
「・・・。」
「君は頭の良い人間だ。君の僕への思いには一切気づかなかったよ。僕が馬鹿だったんだ。女を見せず勉強熱心な君に、友人として好感を持ってしまったのだから。ましてや孤独なエミリアの良き友人になれば良いとさえ考えたのだから。」
「・・・。」
「僕は君を一生許さない。本当は殺してやりたいが、エミリアがそれを望まないだろう。ただこれだけは覚えておいてほしい。君は王族だから今回の件で処刑されることはないだろうね。でも、これが貴族だったら処刑されてもおかしくない大罪だ。未来の王族を殺そうとしたのだから。」
そう言うと、アルフォンスは立ち上がった。
「どうして私を婚約者に選んだの?」リーリアは泣きながら小さな声で聞いた。
「分かっているのだろう?君が犯人だと言う証拠を掴むためだよ。」
そう言うと、アルフォンスは部屋から出て行った。
「リーリア。人の命の重さをもう一度よく考えろ。」
シャイルもそう言うと、アルフォンスを追って出て言った。
―確かに驕っていた。皆にちやほやされるのが当たり前だと思っていた。自分が良ければそれで良かった。何も・・・何も言い返せなかった。私はどこで間違えたのだろう・・・。―
リーリアはただ一人部屋の中で泣き続けた。




