第6話
「ああそうだ。アステールと地球では植物の名前が違ったり色や形が違ったりはよくあります。植物図鑑と動物図鑑を作ってあちらへ行くときにお渡ししますね」
「え、いいんですか?ありがとうございます、助かります!」
さすがゼクスさん!美形な上に仕事もできて気遣いも完璧とか、最高です!
「はいっ。僕も何かお手伝いしたいです!」
「え、馬鹿天使が何かするとかちょっと心配……」
「ひどっ。僕だって出来ることはあります!それに、僕のせいで巻き込んでしまったので、せめて何かしたいんです!」
いや、確かに馬鹿天使のせいで巻き込まれたけど、こいつが何かすると失敗しそうで怖いわ…。
「雨宮さん、これでもリュークは知識だけならしっかりあるんです。今回は私も付くんで何か任せましょう。植物図鑑と動物図鑑の他に欲しいものはありますか?」
「そうですか…。そうですね、地球とというより日本とアステールの違いについて知りたいですね。文化の違いなどはあると思いますし。あとアステールの常識も。貨幣価値とかは特に知っておきたいですあ、それと魔獣についても知りたいんですが、あちらにそのような本などはありますか?」
「日本との違いとアステールの常識でしたらリュークにぴったりだと思います。魔獣に関しての本でしたらギルドで配布していたはずですし、図書館などにもあるはずです」
「そうなんですか。じゃあ魔獣について以外のものはお願いできるでしょうか?」
ちょっと頼みすぎてないですかね?リュークはいいとして、ゼクスさんにまで頼るのは……。
「頼み過ぎているとかはないですよ。こちらが巻き込んだお詫びということもですが、私は雨宮さんが気に入ったので、できる限りのお手伝いはいたしますよ。もし気に入らない人であったなら、ここまでしませんよ」
…ゼクスさんも心読みました?それより気に入ったって……。ゼクスさんにそんなこと言われるとテンション上がりますね!
「心を読んだわけではないですよ?雨宮さんは顔に出やすいんですね」
くすくす笑いながらゼクスさんが言った。ゼクスさんの笑い顔……ごちそうさまです。
「では、私とリュークは図鑑をまとめに行ってきますね。ほらリューク、行くぞ」
「分かりました!雨宮さん、また後で!あ、先輩待ってください~」
2人は私に頭を下げると羽を広げて飛んで行った。
「お待たせ~。ごめんね、考え込んじゃって。…あれ、あの2人は?」
「いえ、全然待ってないですよ。2人は地球との違いをまとめた図鑑を作ってくださるということでどこかへ行きました」
「なるほどね。確かにそれも必要だね。ま、2人に任せとけば大丈夫でしょ。じゃあその間に力を授けようか」
とうとう来ました!ついに私にも魔法を使えるときが……!
「君に授けたい力を考えていたんだけど、地球を管理している神様に聞いたら、君、とってもハマっているゲームがあるんだって?」
ハマっているゲームですか。1つありますね。王道ファンタジーな世界観でアバター・スキルともに豊富、また製作者のこだわりでアイテムやスキルの中に日本のものが多くあり、食料なんかすごい種類あるんです。そのアイテム・スキルの豊富さに加え、戦闘も面白く、5年ほどハマり続けてます。
「そのゲームの君のキャラクターを見たら僕が君に持っていて欲しかった力が全部あったから、君にそのゲームのキャラクターのスペックを授けたいと思います!」
……は!?いや確かにチート能力を手に入れるのはテンプレだしちょっと期待してたけど、チート過ぎません?私、チート過ぎて化け物扱いとかは嫌だよ?
「あ、化け物扱いとかにはならないと思うよ。確かに強い力だけど同じくらいの人が何人かいるし、チートな力を持ってても君が上手く扱えなきゃ意味ないからね。魔法に関しても、よく全属性持ちはチートとか思われるみたいだけど、多くはないにしても全属性持ちは存在しているよ。1つの国の騎士団に少なくても10人くらいはいるし、凄いけどそんなに騒ぐほどでもないって感じかな。むしろ全属性持ちだと幅広く学ばなきゃいけないから、大変だよねって言う人もいるぐらいだよ。しかも、満遍なく訓練すると1つ1つが弱くなりやすい。雨宮さんは最初から強い魔法が放てるだけの力は持ってるけど、魔法のない世界で暮らしていたから、ある程度練習しないとできないと思うよ。そこは気を付けてね」
なるほど、それならまあ納得できます。つまり、魔法も戦闘も自分しだいで、魔法に関しては全属性なので器用貧乏になりやすいということですね。
「分かりました。気を付けます」
「うん。素直でいいね。あと、ステータスも見れるようにしておいたよ。見る方法はさっきと同じでステータスって唱えてね。心の中で唱えても出てくるよ。あ、ステータスは他の人には見えないから気を付けてね」
ステータスを見れるっていうのはいいね。自分の成長が数字で見れるからやる気が出そうだよ。
「ステータスはアステールの人たちは見れないんですか?」
「そうだよ。でも教会でステータスボードというのが作れるから、それにスキルと称号、あと加護と賞罰は記載されるよ。冒険者ギルドに入ったときに作るギルドカードにはそれに加えレベルとギルドランクが表示されるよ。ただ、HPなんかは君しか見ることは出来ないね」
「分かりました」
「あ、あとアイテムボックスと鑑定も使えるからね。アイテムボックスは中身もそのままだから」
え!それは凄く助かる!!武器や防具もだけどやっぱ一番は食事だよね。最初の頃はいいけど絶対その内和食が食べたくなるし、食事が合わなかったらきついもんね。
やっとここまで来ました。次かその次くらいで異世界に旅立てそうです。